YOU

猪木ボンバイエ



猪木ボンバイエ

「みなさーん!謙虚ですかー!
  謙虚になれば何でもできる!アントニオ猪木です!」

流石アントニオ良いことを言う。 何でもできるかどうかはともかく、
謙虚さは日本人の美徳のなかでも最重要と言えるものであろう。
猪木の金言に聞き入りつつ考えを巡らせる
俺の静かな静かな脳内にくさびを打ち込むような「ダー」。
びっくりした。ヒッて言った。慌てて猪木を見ればリング上で満面の笑み。
これだよ。わかるか?
謙虚なだけじゃ駄目なんだ。質素、謙虚、それでいて柔軟。
黙っていても言うべき時は言う。ダーッて言う。
拳を固めた両腕を、まるで天を支えるかのように高々と掲げる猪木。絵になる。
もし俺が、漫画アントニオ猪木物語を描くとしたら、
間違いなくこのシーンは見開きだ。
2ページの価値がある一瞬。いや、3枚使う。
それは見開きじゃないか。 じゃ四枚使う。
綴じ込みポスターのようにパラパラって広げるページにする。
いや待て。蛇腹のように折りたたんで…
いや、そのコマだけはトイレットペーパー状に巻かれてるというのはどうだろう。
本を閉じるとそのページだけポッコリ膨らんで
本屋さんが迷惑したりするだろうが構うものか。
おい、本屋。貴様誰に口をきいている?猪木だぞ?A・猪木様だぞ?
巻きに巻いたページは全長数百メートル。
クルクルクルクルと広がるページは、さながらロールスロイスから伸びる赤絨毯。
その赤絨毯をゆっくりと踏みしめて歩いてくる猪木。
あたりの風景を揺らさんばかりに響くボンバイエ。
ボンバイエとは「かの者を死に至らしめよ!(ボマ・イエ)」という意味だという。
流石は猪木、謙虚だからって舐めてかかれない。ボンバイエは決意。
呪詛に似たボンバイエの中猪木が近づいてくる。
砂利道を踏みしめ、ハードルを跳び越え、幼児を蹴り飛ばし、のれんをヒョイとくぐり、
ロープにぶら下がり、テレポートを繰り返し、猪木が俺に近づいてくる。
眼前に立ちはだかる猪木は流石にデカい。
そこで猪木、俺にビンタ一閃!そして俺の耳をグッと掴んで引き寄せて名台詞。
「人を殴るのは最高に気持ちいいよな。」
え!?この人、猪木じゃない!



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: