日記

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その6


すでにあかねは引っ越して、医師が住む町から遠く離れたところに住んでいた。
医師にもう会えないと思うとさびしくて、なんとかこれからもメールを出すことを医師に了承してもらっていた。
はっきりとは言わないまでも、あかねの気持ちは医師に気づかれていた。
他愛もない世間話から始まって、病気のことを相談したりした。
あかねにとって医師は誰よりも信頼できる憧れの人だった。

あかねがなぜ、引越ししなくてはならなかったのか?
なぜなら、結婚したからである。親に勧められるがままにお見合いして、俊一という男性と結婚したのだ。
俊一はサラリーマン。地味な市立の大学を卒業してごく普通の会社に勤めていた。
あかねは、俊一に気づかれないように、こっそり医師にメールしていた。
俊一を裏切っているとは全く思わなかった。医師とは俊一に出会うより前に出会っているから。ただばれてはいけないことはわかっていた。


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