(承前)
前回の日記では、信濃川畔の林の中にて目にしたカタクリと雪割草の花をご紹介しましたが、今回はその写真をまとめて掲載です。
先ずカタクリです。
カタクリは万葉にただ1首のみあるが、それだけでもう万葉の花として十分過ぎるほどの存在感を示しているのは、その万葉歌が名歌であるというだけでなく、この花の可憐な美しさによるものであろう。
物部
の
八十少女
らが 汲
みまがふ
寺井の上の
堅香子
の花 (大伴家持 巻19-4143)
この歌は大伴家持が天平勝宝2年(750年)3月2日に越中の国で詠んだもの。うら若い少女たちがたくさんやって来て水を汲んでゆく寺の泉の畔に咲いているかたかごの美しい花。さんざめく少女たちの姿とこの可憐な花とがダブルイメージとなって、春の到来の喜びが伝わって来る、いい歌である。
では本家の家持殿にならって偐家持も「かたかごの歌」を作ってみましょう。上の二つ寄り添い咲いている花を愛でて、
ひとり咲く 花もよけれど かたかごの
花はふたりし 咲くこそよけれ(偐家持)


もののふの
八十
の 少女
も 好き好きに
咲きてこそよき かたかごの花 (偐家持)


我妹子
の 花にしあれり かたかごの
春とまたもや 越後に逢へる (偐家持)
カタクリの咲いている一角から少し離れた処には雪割草が咲きこぼれてありました。早春を彩る可憐な花の代表とも言うべきカタクリと雪割草をふたつながら同時に目にするという幸運。何ともラッキーな、そして贅沢な銀輪散歩となりました。

雪割草というのは、言わば「愛称」であって、ミスミソウ、スハマソウ、オオミスミソウ、ケスハマソウなどの総称とのこと。
地方によっては、イチリンソウ、ニリンソウ、ショウジョウバカマ、アズマイチゲ、ハシリドコロを雪割草とか雪割花と呼ぶらしい。
園芸上は、愛好家によって交配が重ねられ様々な交配種が生まれているようで、花姿は多種多様。花音痴のヤカモチにはもう何が何だか分らぬ状況にある。

雪割草は万葉には登場しない。スミレを愛した赤人ならこの花のためには一夜と言わず、二夜、三夜、野に連泊するも厭わなかったことでしょう。大伴家持も越中国守ではなく越後国守となっていたら雪割草の歌も作ったに違いないと思うのですが、赤人も家持も越後とは縁がなかったようにて残念なことでありました。
この花は葉が特長的である。可憐な花姿に似合わず、葉はぼってりとして何か野暮ったいものがある。きっと厳しい雪国の冬を耐えるための力とタフさがその葉の形姿に秘められているのであろう。


八重に咲く花もあるようだ。

雪割草には「かたかごの花」のような鮮烈な個性はないが、楚々と咲くその姿には見る人を飽きさせないものがある。両者のデザインについて、かたかごが岡本太郎であるなら雪割草は・・なんぞと思ってみたりのヤカモチでありました。

「手に取るなやはり野に置け蓮華草」という句があるが、雪割草も然りでありますな。

雪割草の花言葉は「はにかみや」だそうな。目立つことに臆病なように見えるこの花の在り様を言い得たものと言うべきだが、それが却って人気を呼びこの花を目立つ存在にしたのだと思うと面白い。

はにかみと辛抱強さが 裏と表についている
そんな花にと 生まれたからは 厳しい冬の 雪にも耐えて
春さり来れば 微笑み咲ける
花は越後の 花は越後の 雪割草
(雑木林雪子)

春告げの 越後の花は 雪割草
人みな笑みて 生きよと咲ける (偐家持)


いかにとや 越後の春に 恋ひ来れば
われに笑みぬる 雪割りの花 (偐家持)
<参考>前編 越後・会津銀輪散歩
越後・会津銀輪散歩(その2)
銀輪花散歩・リュウゼツラン、キンエノコ… 2025.10.19 コメント(4)
銀輪花散歩・平城宮趾公園&佐保川畔 2025.03.27 コメント(4)
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