さて、「十二支考」が出て来たついでに、この本で紹介されている話で、よく出来ている話だなあと思えるものの一つをご紹介して置きます。
「十二支考3」の「犬に関する民俗と伝説」の項に出ている話です。
1915年版ガスター「ルーマニア鳥獣譚」にある話からのようですが、要約すると次のような内容です。
神様が世界を造った際に、一切の生物を招集してその寿命と暮し方を定めた。
先ず、人間を呼んで「お前は世界の王である。両足で直立し上天を仰ぎ見よ。お前には貴き容貌、考慮と判断の力、言語などを与える。地上の一切の生物はお前に支配され、樹に生るもの土に生じるもの皆お前が利用してよろしい。寿命は30年とする。」と云い渡す。
人間は、いくら王の如く威勢よく面白く暮らしても、たかが30年ではつまらないと呟いた。
次にロバを呼び「お前は労苦しなければならない。常に重荷を負い運び、鞭打たれ叱られ、休息は束の間、粗食に甘んじて生きることとし、寿命は50年とする。」と宣告する。ロバは「そんな辛い目をして50年も長らえるのは情けない。どうか特別のお情けで20年だけ差し引いて戴きたい。」と懇願する。
それを聞いた強欲な人間はその20年をこちらに回してくれと申し出る。それで、人間の寿命は50年に修正された。
次に、犬が呼ばれ「お前は主人たる人間の家と財産を守り、ひたすらこれを失わぬよう努めなくてはならない。月の影を見ても必ず吠えよ。骨折賃として固い骨と粗末な肉を与えるから、それを齧って40年生きよ。」と言い渡す。これを聞いた犬は震え上がり、そんなに骨折って骨ばかり喰えとは難儀極まると「20年でご勘弁を」と言う。
また、人間が割り込んで差し引いた20年を貰い受け、寿命は70年に修正された。
最後に猿を呼び出し「お前は人に似るも人に非ず。馬鹿で小児めいたものたるべく、背中は曲がり、子供にも馬鹿にされ、 笑い物になって、60年生きなさい。」と命じる。猿はこれは根っから有難くないお話であるとて「とんでもないことでございます。半分の30年でご勘弁を」と言う。
ここでまたも人間がしゃしゃり出て「その30年、手前が貰い受けます。」と申し出た。それで、人間の寿命は100年に修正された。
かくして人間は神から当初賜った30年の間は何と言って苦労もなく面白く遊び暮らすのであるが、30歳から50歳の20年はロバから譲り受けたものだから、未来の蓄えに備え、ひたすら働き苦労する。
50歳から70歳の間は、犬からのものだから、僅かに蓄えたものも他人に盗られはせぬかと夜もろくろく眠れず戦々恐々と生きることとなる。
70歳から100歳までの30年は、猿からのものなので、背は曲がり、顔つきも変り、心鈍くなり、子供じみて、他者に嘲笑されることとなる。
まあ、パンドーラの箱と言い、この話と言い、我々の先祖の失敗というか、目論見違いの所為で、我々の苦労があると言うことですかな。
まあ、我々も子孫に、後世の世代にツケを回す愚を犯してはならないのだ、ということを、此処から学び取ることと致しますかね(笑)。
孔子さんの三十にして立つ、四十にして惑はず云々の格調の高さに比べるとルーマニア人のこの話は笑うほかありませぬが、偐万葉世界はこういう類の話こそをよしとするのでありますな(笑)。
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