偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2015.06.05
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カテゴリ: 銀輪万葉

承前

 今回のシリーズ記事に掲載の写真は、デジカメのオート撮影設定に間違いがあったらしく、殆どの写真がその周辺部分がぼやけるという写り方になっていました。パソコンに取り込んでから、このミスに気付きましたが、時既に遅し。トリミングなどの編集によって何とか誤魔化すものの、それも限界、些かお見苦しい点のあることお赦し下さいませ。
    「荒城の愚痴」
    夏朦朧の 写真撮り
    めぐる回りの 影ぼやけ
    うつしてのちは 手遅れと
    ああ、銀輪の 夜半の愚痴

 さて、前回は倉橋山の歌碑の処で終わりました。
 今日は愈々倉橋溜池です。

倉橋池 (1) (倉橋池)

 倉橋池は溜池とは言うものの、ちょっとしたダム湖。周囲にめぐらされた遊歩道を行くと湖畔の散歩さながらの風情である。道の辺には薊も咲いている。みなもを渡る風も心地よい。

薊 (2) (アザミ)

倉橋池 (2) (倉橋池 南側からの眺め)

 上下の写真は池の南岸から撮ったもの。遠景の山は三輪山から続く初瀬の山々である。左端の丸みを帯びた峰が三輪山である。

倉橋池 (3) (同上)

 記憶が曖昧で定かではないが「桜広場」という名であったか、芝生広場の一角に万葉歌碑がありました。

倉橋池畔の万葉歌碑 (倉橋池畔の万葉歌碑)

大君は 神にしませば 真木の立つ 荒山中に 海をなすかも
                         (柿本人麻呂 万葉集巻3-241)

 この歌は長皇子(天武天皇の皇子、文屋氏の祖)が猟路 (かりぢ) の池に出遊した時、これにつき従った人麻呂が作った長歌(万葉集巻3-239)の反歌(或る本の反歌)である。
 猟路の池については、桜井市鹿路説や榛原の芳野川と宇陀川との合流点付近説などあって何処とも定まらないが、こうして倉橋池の畔にこの歌碑を置いてみると、いかにもという感じである。正本の方のもう一つの反歌はこれである。

ひさかたの 天行く月を 網に刺し わが大君は 蓋 (きぬがさ) にせり
                                    (同3-240)

 山中に海を造るのもすごいが、月を網で捕まえて傘にしてしまうというのはもっとすごいですな(笑)。人麻呂流誇大表現です。月を日傘にすれば、それは日食ではないの、とヤカモチ独り言です。

倉橋池 (4) (倉橋池 ダム側<北東側>からの眺め)

 ダムを越えて北岸側に渡ると池が大きく湾入した先に芝生広場が設けられていて、トンボ池広場とか野鳥の森広場などと名付けられている。その一つのトンボ池広場でお弁当タイムとしたのですが、これは先に紹介済みです。  <参考>「 トンボ池の蝶 2015.5.26.

倉橋池 (5) (同上 南西側からの眺め)

倉橋溜池地図 (倉橋池地図)

 倉橋池の遊歩道はぐるり一周で約4kmらしいが殆ど人に出会わない。この日池で出会ったと言うか見かけたのは男性4名、女性1名の計5名。何れも一人歩きの方でした。
 池の畔のあづま屋で水分補給の後、下って来た坂道を上り、県道37号に戻る。県道を来た方向に少し戻って最初の辻を左(南)に入る。細い下り坂。崇峻天皇陵の前に出る。

崇峻天皇陵 (1) (崇峻天皇陵)

 崇峻は第32代天皇。欽明天皇の第12皇子。母は蘇我稲目の娘の小姉君。蘇我馬子も稲目の息子であるから、崇峻は馬子の甥になる。馬子の推挙によって天皇となるが、馬子との関係が悪化し、馬子の命を受けた東漢駒によって暗殺されてしまうという天皇。
 最近は、崇峻天皇陵はここではなく、倉橋池の北東にある天王山古墳だとする説が有力らしいが、今回は天王山古墳は(更に上なので)パス、宮内庁説に従い、坂を下ればいいだけのコチラの御陵だけに致しました。

崇峻天皇陵 (2) (同上)

 崇峻天皇陵を出て、寺川を渡り(この日はこれで3回寺川を渡ったことになる。)、広い舗装道路の坂道の上りに取りかかる。今井谷への道。これが何とも急勾配、途中でギブアップ、押して上る。少し勾配が緩やかになった辺りから再びライド・オン。ようやくにして峠越えとなる高みに到着である。遠く金剛山が見えている。

今井谷から高家への道 (今井谷から高家への道)

 少し下った処で三叉路に出る。高家 (たいえ) 春日神社の境内に万葉歌碑がある筈と思い込んでいたので、左折して、急坂をまたしても上る。これも早々にギブアップして手押しである。前屈みで丁度良い位の急勾配であるからとても乗っては無理である。銀輪家持も銀輪を杖代わりにして・・という次第。
 ところが、歌碑が見当らない。周辺を少し歩いてみたが分からない。
 目指した歌碑は此の歌の歌碑であったのだが、見つからないものは仕方がない。諦めて坂を下る。急降下です。

ぬば玉の 夜霧ぞ立てる 衣手の 高屋の上に たなびくまでに
                         (舎人皇子 万葉集巻9-1706)

高家春日神社 (1) 高家春日神社 (2)
(高家春日神社)

 もとの三叉路に戻る。ここからは次の目的地・山田寺跡へは坂を下るだけ。しかし、キリがいいので、本日はここまで。続きは明日とします。(つづく)






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最終更新日  2015.06.05 09:50:17
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Re:桜井・倉橋池・山田寺跡銀輪散歩(その2)(06/05)  
こんにちは(^^♪

その出来そこないのお写真や、いかに???っと見せて頂こうとすると又もや、フォト蔵の不具合で 笑えませんでした。
直った頃に再訪します。 (2015.06.05 10:37:54)

Re:桜井・倉橋池・山田寺跡銀輪散歩(その2)(06/05)  
ふろう閑人  さん
あれなぜこんな所に崇徳天皇陵が・・・と思い良く見ますと・・・崇峻天皇のお粗末でした。
所蔵朱印帳では所在地が多武峰村と記されていて、倉梯岡上陵(くらはしのおかのへのりょうとルビが打たれています。 (2015.06.05 15:26:56)

ひろみちゃん8021さんへ  
けん家持  さん
 小生のPCで見る限りは、ブログ記事に貼り付けの写真は見ることができ、その写真をクリックしてフォト蔵画面に入ろうとすると「メンテナンス中」の画面になってしまう、というに過ぎないので、ブログ記事は写真も含めご覧戴けるものと思っていましたが、写真が全く表示されませんか。
 どうも、その辺の仕組みがよく分かりませんですな。
(2015.06.05 15:52:54)

ふろう閑人さんへ  
けん家持  さん
 崇峻に崇徳。似ていますね。「崇」という字が使われているのは、悲運の天皇。恨みの内に死んだ天皇ということで、その祟りを恐れて「崇」を奉ったということなんでしょう。早良親王も「崇道天皇」という名を貰っていますからね。
 このような山あい深くに、恰も閉じ込めようとでもするように葬られていると感じるのは、この天皇の死に方を知っていることによる後付け感想なんでしょうが。
(2015.06.05 16:09:07)

Re:桜井・倉橋池・山田寺跡銀輪散歩(その2)(06/05)  
こんばんは(^^♪

全然おかしなところが見受けられない お写真です。
どこを修正されたんでしょうか?大丈夫ですよ。

『それは日食ではないの』には笑ってしまいました。
本当ですよね、網に入ったら 今頃は月がなくなっていましたね。
広場からの倉橋池の眺め、雄大ですね。
一日中 遊べそうです。

それからは、相当 頑張られたのですね(笑)
こんな所なら 人影も見えず 尋ねるのもままなりませんね(>_<)
(2015.06.05 18:11:35)

再度、ひろみちゃん8021さんへ  
けん家持  さん
再度のお運び痛み入りまする。
 写真はよく見て戴くと周辺部分がぼやけています。もっと大きいサイズでご覧戴くとよく分かります。
 修正と言っても、ぼやけた周辺部分を景色の全体と中心部分とのバランスを崩さない範囲でトリミングしただけです。例えば崇峻天皇陵の写真が随分と横長になっているのは、上下のぼやけた部分をカットしたからです。
 まあ、ブログサイズ程度の写真なら何とかそれなりにということになりました。それでも酷いものは縮小サイズの更に小さい写真として掲載し、一見では気付かれないようにと配慮しました。
 天皇と雖も月を大風呂敷ならぬ大網で捕まえたりしたら国際法違反。南沙諸島どころではないことになりますな(笑)。
 倉橋池の眺めは、これが池?という雄大な眺めです。桜の木が多く植えられていましたから、花の時期には人出で賑わうのかも知れませんが、今は閑散としています。談山神社へのバスの走る道である県道37号から少し入った処で、駐車場もありますから、車なら簡単に行けます。
(2015.06.05 19:28:34)

Re:桜井・倉橋池・山田寺跡銀輪散歩(その2)(06/05)  
こんばんは(^^♪

本当ですね(笑)
写真のサイズが大小様々で、端っこが薄いのもありますね。
私は、気に入らない物が写っていたりすると、Snipping Toolを使っています。
あれは、便利ですね(#^.^#)

倉橋池へ37号から車で行ってみたく ご案内ありがとうございます。 (2015.06.05 20:00:43)

こんばんは  
月を捕まえる網を作るのはちょっと大変そうですね・・・
(2015.06.05 22:25:15)

またまた、ひろみちゃん8021さんへ  
けん家持  さん
はい、気候の良い時に、近くへ行かれることがありましたら、是非お立ち寄り下さい。三叉路で左折の坂は少し上って後は下り坂です。車では一周できませんが、ダム(と言っても小さなもので水門と呼んだ方が適切ですが)側の前までは行けます。
(2015.06.05 23:00:12)

Re:こんばんは(06/05)  
けん家持  さん
ふぁみり〜キャンパーさんへ
  >月を捕まえる網を作るのはちょっと大変そうですね・・・
 そうですね。一休さんなら、洗面器か桶に月を映し、それに網をかぶせることで解決しそうですが、人麻呂ではそうも行きませぬ。
 万葉人は月を日傘にしたり、船や月人壮士に見立てたりと、想像逞しいですが、実の処はどんなものと考えていたのでしょうね。


(2015.06.05 23:07:06)

Re:桜井・倉橋池・山田寺跡銀輪散歩(その2)(06/05)  
小万知 さん
道路はきれいに舗装され、走りやすそうに見えますが、アップダウンの辛き道があちこちにありそうで、トレンクル君の疲労度も想像できます。
大君は神様だから何でもお出来になるという人麻呂様のお歌、先日、恒郎女様が琵琶湖の湖面上にかかったまん丸の虹(とても珍しい形状)をご覧になられた話を思い出し、人麻呂様ならどんな言葉で表わされるかなっと思ってしまいました。
虹のUHOに乗って宇宙へ?それとも琵琶湖を七色に染め分けて?なんて、そこまで悪乗りはされないでしょうね(笑) (2015.06.05 23:50:43)

小万知さんへ  
けん家持  さん
 アップダウンのダウンは歓迎ですがアップはトレンクルもヤカモチもアップアップです。
 恒郎女さんがご覧になった琵琶湖上の虹は「真ん丸」ではなく完全な「半円形」の美しいものであったかと。虹は太陽を背にして反対側に出るもので、太陽光線の入射角度と見る人の位置の高低によってその円形のうちの見える部分が変化します。円形の虹を見るには地面が邪魔をしない高さまで上がり、上から下方を眺めて出る虹でないと見ることは不可能。恒郎女さんも虹を見上げられたのでしょうから、見えたのは上半分の半円形が限度でなくてはなりません。
 さて、人麻呂ならどんな言葉で表現するか。人麻呂ならぬ人真似ヤカモチ、いや猿丸ならぬ猿真似ヤカモチの思いも及ばぬことにて御座候(笑)。
(2015.06.06 11:48:05)

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