偐万葉・どち篇(その3)
万葉的には友人は「どち」でありますが、そのような友人への歌を集めたものが「どち篇」であります。気が付くと友人の岬麻呂氏関連の歌が随分の数になていましたので、この辺でどち篇をアップしないと収拾がつかなくなる、という訳で、久々のどち篇であります。
<参考>過去の偐万葉・どち篇及び雑詠篇は
コチラ
1.岬麻呂関連
偐家持が岬麻呂に贈りて詠める歌31首
さ 丹 の橋 渡る人なく 柳川の 浅き 春辺 を 小舟 の下る
八重岳 は 霞ぞ立てる 野辺見れば 咲きて 匂 へる 寒の緋桜
富良野行き 蝦夷富士見つつ 十勝岳 われ函館に きみをまつまへ
( 小野不待
)
いつ来むと 春まつ林 白雪の つもりていまだ い寝てぞあらし
いづかたゆ 神は来ますや あをき海の さやけき波の 音にしきかな
ニシバマの 浜辺を一人 行く人の 影遠のきぬ 寄する波の 音
白砂
は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずつづける (老山墨汁)
(本歌) 白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ (若山牧水)
秋きぬと 目にもさやかに もみぢたる 渡島は秋の 今盛りなり
(本歌)秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
(藤原敏行)
みぢのぐの あらぎ島かも 中野なる もみぢの山は 秋こそまさめ
にしめやの みねとふみねの もみたひて つるべおとしに あきはゆくなる
(注)第 5
句は偐万葉掲載に当たり、初案「あきゆくならし」を「あきはゆくなる」に改訂し
た。
お岩木の 山はすでにし 冬ならし 霧氷の花の 咲き散る見れば
見が欲しと わが恋ひ来れば 青空に 蔵王の樹氷 果てなくあれり
空の色 やうやう色濃く なりゆけば 寄り添ひ樹氷 語らくと見ゆ
更けぬれば 蔵王は樹氷の 舞踏会 貴婦人がたの 出でますも見む
流氷を たづねをのこの ひとり旅 紋別網走 知床宇登呂
紋別の 海にあかあか 昇る日に 毛嵐分けつ わが船は行く
流氷は 西風強み 影なけど 鷲はさはなり 能取の湖畔
沖辺かけ 埋め尽したる 流氷の 見らくしよしも 宇登呂の海は
城はあれど 花は盛りの 時ならで 今しばらくは まつの山なり
西行に あらぬ北行 岬麻呂 桜追ひ行く みちのくの旅 (輪行法師)
角館 桜の盛り 見し日より 心は身にも 添はずや君も (輪行法師)
(本歌)吉野山 梢の花を 見し日より 心は身にも 添はず成にき (西行 山歌集 66
)
桜花 今ぞ盛りと 行く君の みちのく春は 見らくしよしも
かくまでに 咲けるか桜 角館 桧木内川 花の長堤
エンゴサク 咲くを見むとや わが背子は 五月の風と 富良野行くらむ
麓郷の 短き夏や とりどりに 花咲きををり 千里の沃野
宮古島 道はた遠み 背子行けど わが銀輪は 都島かも
(注)た遠み=遠いので。 「た」は接頭語。 「み」は形容詞に付いて「~なので」の意に
なる。
都島=大阪市都島区
いり崎の いり日見むとて 来しわれは 果たせずどなん どちと呑みける
(渡難家持)
(注)どなん=与那国島の泡盛の名前。どぅなんちま(渡難島)に由来する命名。ここでは
「どうなん?」と掛けてみた。
雪や雪 雪雪雪や また雪の 北の旅行く をのこや一人 (大雪旅人)
いりおもて 島の 浦廻
を 恋ひ行けば 梯梧
の花の ここだ咲きたる
( 西表
家持)
我妹子と 二人し見れば うれしかも 寒緋桜に 春の雨降る (偐岬麻呂)
竹富の 島は音なく 小雨降る ブーゲンビリアの 花の咲く道 (偐岬麻呂)
(注)上は岬麻呂旅便りの記事に関連しての歌の再掲載です。
岬麻呂旅便りの記事は コチラ
。
岬麻呂関連歌掲載の過去のどち篇は コチラ
。
2.楽老関連
偐家持が楽老に贈りて詠める歌1首
初恋を 想へ松明 燃やさなむ 古来稀なる 道にありとも
情熱をして静かに燃えしめよ、湿れる松明の如く(犬養孝)
初恋を想ふべし(犬養孝)
(注)楽老関連歌掲載の過去のどち篇は コチラ 。
3.久麻呂関連
偐家持が久麻呂に贈りて詠める歌2首
梅の花 咲きつ 含
みつ きみ待てば さやけき朝ぞ いざいざ行かな
草枕 旅行く人と 我が来れば 磐余
の道に もみぢ葉降れる
久麻呂が偐家持に贈りて詠める歌3首
もみぢ葉の 散りゆくなへに たらちねの
母上様の 黄泉路安かれ (偽家持擬)
たらちねの 母上様は もみぢ葉の
生駒ヶ峯に 雲と棚引く (偽家持擬)
もみぢ葉の 散りて往きける たらちねの
御母上を 地蔵よ護れ (偽家持擬)
偐家持が返せる歌1首
三日月は めぐりてのちも 来るなれど 母とふ花は 咲き出来ずけむ
4.道麻呂関連
偐家持が道麻呂に答へて詠める歌1首
逝く母の 迎へ船かも 三日月の かかりて空に にじんでありぬ
5.八重麻呂関連
偐家持が八重麻呂に贈りて詠める歌1首
人は伊佐 心もぬくし ふるさとの 花は昔に 変らず咲きぬ (偐貫之)
(注)伊佐=鹿児島県伊佐市
(本歌)人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
(紀貫之 小倉百人一首35 古今集42)
6.北麻呂関連
偐家持が北麻呂に贈りて詠める歌1首
恩智川 水は絶えせね ま 幸 きくも 背子やあれかし 後 にも逢はめ
7.利麻呂関連
偐家持が利麻呂に贈りて詠める歌2首
永原ゆ 大浦過ぎて 菅浦を きみ行くらむか 光れる風と
長浜ゆ 朝のみなとを 漕ぎ出でて 今か着くらむ 竹生島見ゆ
(本歌)高島の 阿渡
の 湖
を こぎ過ぎて 塩津菅浦
今かこぐらむ
( 小辧
万葉集巻9-1734)
(小辨万葉歌碑)
8.川麻呂関連
偐家持が川麻呂に贈りて詠める歌1首
福寿草の 継ぎて花咲く ごとにもや 八千代に君の 真幸 きくもあれ
9.その他
青雲会創設60周年に寄せて偐家持が詠める歌2首
青雲の 庭に 六十年
重ねつつ またあらたしき 道をあゆまな
継ぎ継ぎて 行かめともにし 青雲の 万花千葉
いやときじくに
(注)ときじくに=永遠に
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