偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2019.05.13
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カテゴリ: 絵画
​​ 少し前の話。 先月27日のことになりますが、友人の家近健二氏から絵を頂戴しました。
 お礼のお電話を差し上げた際に「この絵のタイトルは何か?」とお尋ねしたつもりでしたが、「何の絵か?」と誤解されたのか「棚田に咲く彼岸花」との返答。或は、それが絵のタイトルであったのかもしれないが、ヤカモチには絵の内容を説明されているように聞こえました。
 展覧会などに絵を出品するときは、絵にタイトルを付けることが必要なんだろうが、画家本人からすれば、タイトルそのものには、余り関心がなく、これでなくてはならない、というほどのこだわりがない、ということなのかもしれない。
 ならばと、ヤカモチが勝手にタイトルを付けることとしました。​
(家近健二氏画「壱師の花のいちしろく」)

 秋の田の畦に咲く彼岸花と黄金色にみのった稲穂。
 豊穣の景色であるが、彼岸花の燃えるように真っ赤な色は恋の歌に相応しいか。ということで、万葉歌に因んだタイトルとしました。
 万葉の「壱師」は彼岸花のことだとするのが、有力説であるが、万葉人はその激しい恋心をこの花の色に喩えたということなんだろう。
路の辺の壱師の花のいちしろく人皆知りぬ我が恋妻を(万葉集巻11-2480)
<道のべに咲く彼岸花のように目立ってしまって、私の恋妻のことがみんなに知れてしまったよ。>
 「いちしろく」は「いちじるしい」で、よく目立つという意味。
 「いち」は「いち早く」のように意味を強める接頭語。
 単に「しろく」とか「しるく」でも同じ意味である。
 彼女といちゃいちゃし過ぎて僕らの関係が皆に知れ渡ってしまったよ。まいった、まいった、と何やら嬉しそうにのろけている若い男の顔が浮かんでも来る、微笑ましい歌である。
 結婚・出産は、共同体にとって、その未来への存続と繁栄のために祝うべきものであるが、その前段階の「恋・恋心」は当人たちの個人的なもので、共同体的価値からすれば基本的にどうでもいいこと。
 個人的価値にかかわる「恋」は時には共同体的価値と衝突することもある扱いにくいものであったかもしれない。
 共同体の一員、構成員の一人という存在に過ぎず、共同体を離れては自己の存在自体が成り立ちえないという古代人にとっては、共同体的価値が全てであって、これに対峙する個人的価値を意識することも多分なかったことでしょう。個人主義なんて言葉も考え方もなかった時代である。
 従って、共同体が「祝い事」として受け入れてくれることが保証されている、或はその見込みが極めて高いというような「恋」でなければ、その機が熟するまでは、「秘め事」として他に知られないようにするということが必要であっただろう。
 この歌の男の場合は、そういう「秘め事」の時期を経て、共同体に受け入れられる見込みが立った、それがほぼ確実になったということで、こんな風に「人皆知りぬ」と幸せそうに笑っていられるということなのではないか(笑)。
 まだそういう状況でない段階では、恋は極力目立たないようにことを運ぶ必要がある。それを思わせるのが次の歌。
青山を横ぎる雲のいちしろく我と笑まして人に知らゆな
                (坂上郎女 万葉集巻4-688)

​<青い山を横切る雲のように、はっきりと私に笑いかけたりして、人に気付かれないで下さい。>
​ まあ、そんな中であるから、大津皇子の下の歌が何やら男らしくも見えて来る(笑)。
大船の津守が占に告らむとはまさしく知りて我が二人寝し
                  (大津皇子 万葉集巻2-109)

<あの憎き(大船の)津守めの占いに現れるだろうことは、先刻承知の上で、私達は二人で寝たのだ。>
 これは、大津皇子が石川女郎と情を通じたことが、陰陽道の名手であった津守連の占いによって露見した時に、大津皇子が詠んだ歌。
 皇太子の草壁皇子も石川女郎にぞっこんであったことが万葉集の歌からうかがえるが、二人が彼女をめぐって張り合っていたかどうかまでは、ヤカモチも存じ上げぬことであります(笑)。
 話が脱線して居りますので、ここまで。
 友人から頂戴した絵の話でした。
 殆ど絵の話になっていない?
 それは失礼。
 素敵な絵のプレゼント。
 家近氏にあらためて感謝、お礼申し上げます。
<参考>​ 家近健二絵画写真(フォト蔵アルバム) ​​​​​
​​​​





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最終更新日  2019.05.13 18:25:58
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Re:壱師の花の・・(05/13)  
ひろろ さん
抽象絵画が鑑賞できたり
古文の学習もさせていただいて
楽しく拝見しました☆
素敵なタイトルに作品も喜んで
いるのではと思います。
こちらもあとづけが多く
出品の度に変えたりしちゃいます(笑
(2019.05.14 09:02:16)

ひろろさんへ  
けん家持  さん
  >抽象絵画が鑑賞できたり
   古文の学習もさせていただいて
   楽しく拝見しました☆
   素敵なタイトルに作品も喜んでいるのではと
   思います。
 絵のことは門外漢。その作品を評するのは僭越。話は自ずから「あらぬ方向に」脱線するのほかなし、であります(笑)。
 その作品に込められた作者の思いが何であれ、それとは関係なく、作品から見る側が別途感じ取るものというものもあり、それは見る側の問題、その意味では、作者が付けるタイトルとは別に、見る側が自分限りのものとして、作品への敬意を失わぬ範囲で自分なりのタイトルを絵につけてもいいだろうと考えましたが、人によっては、そういうことを好まないということもあるでしょうから、ほどほどに、ということですかね。
  >こちらもあとづけが多く
   出品の度に変えたりしちゃいます(笑
 まあ、そうでしょうね。テーマ的なものはあるのでしょうが、始めにタイトルありき、で絵を描くということでもないでしょうから、絵が仕上がって、展覧会に出品する段になってから、タイトルを考えるというのが普通ですかね。
(2019.05.14 11:37:36)

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