偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2019.10.08
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カテゴリ: 銀輪万葉
​​​( 承前 ​)
 10月5日。高岡駅前を出発。先ず、高岡大仏へと向かう。
 自転車(トレンクル)を組立て、走り出すもペダルがいつになく重い。さては、と後輪を見ると空気が抜けてしまっている。
 高岡大仏へと続くアーケード商店街の通りのデパート「大和」
(高岡ご在住のブロ友・英坊3氏の前頁記事へのコメントによると、大和は廃店となったとのことですから、元「大和」と言うべきでしょうか。しかし、1階部分の店舗は営業しているように見えました。) ​の北東裏にある自転車屋さんに立ち寄り、空気入れをお借りすることに。2012年6月28日の記事 (コチラ) に記載しているが、この時の高岡銀輪散歩でパンクした時に修理していただいたのがこのお店であったので、ヤカモチとしてはもう馴染みのつもりなのである(笑)。
 空気が十分に入って後輪が固くなり、これでよしと出発するも、100mほど走ったら、元の木阿弥。パンクしているよう。再び、自転車屋さんへ。
 ところが、店主の男性が外出してしまっていて、店主のお母様と思われるご婦人だけ。修理は店主が帰って来ないとできない、とのこと。30分位で帰って来る筈だと仰るので、トレンクルを店に預けて、ブラブラと徒歩で高岡大仏へ。​

​​
(高岡大仏)
 大仏の台座下内部が回廊になっていて、ぐるり周回できる。
 円形回廊の裏正面の位置に仏頭が祀られている空間があり、そこに、堀田善衛自筆の詩「高岡の大佛に寄す」の額が掲示されている。
 今回は、大仏が目的ではなく、この額を撮影するのが目的での立ち寄りでありました。

(堀田善衛「高岡の大佛に寄す」の額)
 ​暗い堂内での撮影なのでどうしても画像が不鮮明になる。​
 以前に撮っている写真の方が少しマシです。
 その写真は、2012年11月11日の記事
コチラ ​) ​に掲載されています。​
<追記参考>堀田善衛全集(筑摩書房)第1巻所収の詩「高岡大仏寺の写真に寄す」は以下の通り。
 町なかの狭きかたえに
 身を寄せて薄き衣に
 胸あらわ
 カンカンと日の照るときに
 汗流しはだら雪
 降りつもるとき身はふるえ
 はるかなる天竺よりこの北国の
 片隅に来たり座せる
 仏の像
 坐り飽きたるさまもなく
 撫肩に伏目にて
 通る人をば見て守る
 さるにてもその日々の流れの
 長さかな
 茫然タリ一場ノ夢
 われもまた見守られたるその一人
(巻末の解題には以下のように記されている。)
 高岡大仏寺の写真に寄す
 『週刊文春』1960年6月13日号に発表され、この全集にはじめて収められた。

​​
(同上)
​ この額に入っているものは原本ではなく、写しらしい。原本は隣の大仏寺に保管されているとのこと。

(大仏寺本堂)
​ 再び、自転車屋さんに戻ると自転車の修理が完了していました。二カ所にパンクがあったとのこと。
 ともかくも再スタート。万葉線が走る通りに出て、伏木駅を目指す。
 城光寺橋で小矢部川を渡る。
 小矢部川は万葉集では射水川である。

(小矢部川、城光寺橋から撮影)
 ​氷見線・伏木駅前到着。
 駅前の郵便ポストの上の小さな大伴家持像に挨拶して、暫し休憩。

(伏木駅前のポストの大伴家持像)
​ 駅前から、伏木北前船資料館へ。
 この資料館の存在は夙に承知していたが、訪ねるのは今回が初めて。
 堀田善衛の生家は伏木の北前船の廻船問屋である。
 堀田百合子著「ただの文士―父堀田善衛のこと」(岩波書店)には「生家は鶴屋という屋号の廻船問屋でした。明治21年発行の『中越商工便覧』によれば、『伏木港本町/堀田善右ェ門/米穀兼北海道産物/諸般船荷問屋商/和洋船舶廻漕業』と記されています。」とある。
 その生家は存在しないし、その跡地の所在も存じ上げないので、北前船資料館を訪ねることによって、その雰囲気だけでも感じることができるのではないか、と思った次第。
<参考> 堀田善衛 ​・Wikipedia
若草読書会・ことり ​ 2019.9.24.


(伏木北前船資料館)

(同上・説明板)

(同上)
 ​館内に入り、受付を済ませると男性が出て来られて、ご案内、ご説明下さいました。​


(同上)

(同上)

(同上・北前船の錨)

(同上・望楼)
​ 望楼にも上ってみることができますよ、ということであったので、狭い急な梯子段のような階段を上ってみた。

(同上・望楼への登り口)

(同上・望楼上り口)
 ​3畳程度の狭い空間。
 ここから、自家の船が沖合に見えると、下にそれを知らせて船を迎える準備をしたとのこと。​
 船が沖に見えて港に着岸するまでに1時間程度は要したので、このやり方で十分に間に合ったらしい。


(同上・望楼内部)

(同上・望楼からの眺め1)

(同上・望楼からの眺め2)

(同上・望楼からの眺め3)
 伏木には、30だか40だか忘れましたが、多数の廻船問屋があったらしいが、それらの廻船問屋の引き札が展示されていました。その中に、堀田善右衛門の名が見える、鶴屋の引き札があったので撮影。
 北前船航路や廻船問屋、当資料館の秋元家のこと、建物の造り、展示品などについて、色々とご説明下さったのに、小生が興味を示したのは、この引き札だけであったのは、申し訳ないことでありました(笑)。​


(諸廻船問屋 堀田善右衛門とある鶴屋の引き札)
 ​鶴屋の堀田家も高台にあったようだが、この資料館の秋元家も高みにあって、港へは坂道を下ることになる。
 坂道を下ると、伏木港である。
 万葉埠頭の緑地に立ち寄り、海からの風に吹かれてみる。​


(伏木港・万葉埠頭緑地)
​ 万葉埠頭から海沿いに北西方向に進むと国分浜海水浴場である。​


(国分浜)
​ 堀田百合子著の前掲本にはこんな一文があったので、国分浜にも立ち寄った次第。
 『若き日の詩人たちの肖像』は、次の一文で終わっています。
 「鉛色の北の海には、立派な波が、男がこれまでに耳にしたありとあらゆる音楽の交響を高鳴らせてどうどうと寄せて来ていた。それだけで充分であった。」
 鉛色の北の海は、おそらく伏木国分浜でしょう。伏木の父の生家から、歩いて10分か15分ぐらいだったと思います。半世紀以上前の私の記憶では、青々とした田んぼを一本のまっすぐな道が貫き、そこを通り過ぎると目の前に国分の海岸が広がっていました。砂浜に立ち、海を見つめると彼方にまっすぐな水平線が見渡せました。(略)水着姿で砂遊びに興じ、浜を転がり回り、砂だらけになっている私の横で、父はじっと海の向こうを見つめていました。
 現在は、テトラポットの波よけが設置されていて、「彼方にまっすぐな水平線」は、砂浜からは望めない。
 ​ ​高岡市伏木には何度も来て居り、堀田善衛の生家が当地の廻船問屋であったということも承知していたが、今回まで、堀田善衛ゆかりのものを訪ねようという考えが浮かぶことはなかった。そんなことで、昨年・2018年が生誕100年ということで、堀田善衛展などがこちらで行われていたことも、今回、ネット検索で偶々知ったのでしたが、去年の事を知っても間に合う筈もなく、やはり鬼が笑うというものでありました。​
 ただ、その検索で知ったのは、伏木中学校の校歌が堀田善衛の作詞であること、その歌碑が同校の校庭にあるということ。
 ということで、国分浜に寄った後、伏木中学校へと向かいました。
 正確には、その前に気多神社に向かうのであるが、これはここでは省略。
​​


(伏木中学校の歌の碑)
 伏木中学校の校門の脇には、万葉歌碑があり、2015年8月27日の高岡銀輪散歩の折にこれを撮影しているが、その時にはこの中学校の校歌の作詞が堀田善衛の手になるものとは知らぬことでした。
<追記参考>上記の堀田善衛全集第1巻には、この伏木中学校の歌が収められて居り、同巻末の解題には下記のように記されている。
 風はどこから吹いて来る――伏木中学校の歌
 1966年に作者の故郷である富山県高岡市伏木の伏木中学校校歌として作詩された。
<参考> 高岡・氷見銀輪散歩(その2) ​ 2015.8.27.
​ 昔に読んだ、堀田善衛著「ゴヤ」(全4巻)が見当たらないので「はて、何処へやってしまったか」と、前に積まれた本を除けてみると、ちゃんとありました。堀田善衛が亡くなったのは1998年9月5日。もう21年も前のことになる。以来、堀田善衛の本はわが書棚の片隅にひっそりと眠ったままになっている。


(堀田善衛の本)

(同上)
 彼の著作「定家明月記私抄」の帯を見て、気がついたこと。
 藤原定家が80歳で死没していること。
 堀田善衛も80歳で死没している。
 ついでに、わが父も80歳の誕生日を迎えた翌日に死没している。

(堀田善衛「定家明月記私抄」)
​ 以上、関係のない話に脱線したところで、本日の記事はこれまでとします。(​ つづく ​)

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最終更新日  2019.10.10 23:30:44
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