偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2019.10.23
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カテゴリ: 銀輪万葉
承前
 前頁は坂越湾にやって来た処で終わりましたので、そこから始めます。
 先ず、今後のルート地図です。​
(ルート概略地図<その2>)
​ 坂越湾に沿った突堤の道を走る。

(坂越湾 左は生島、奥は家島、右は黒崎、赤穂御崎)
​ 湾沿いの道にこんな碑がありました。

(小倉御前之碑)
 ​小倉御前というお方のことは存じ上げなかったが、後亀山天皇の皇子とのこと。詳しくは下掲副碑の説明をお読み下さい。

(同上・副碑)
※クリックすると大きいサイズの写真が開きます。
<参考> 小倉宮恒敦 ​・Wikipedia
​ 更に進むと、あったのがこの碑。

(天然記念物生島樹林の碑)
 ​向かいの島、生島
(「いきしま」とよむ。) ​の叢林が天然記念物に指定されているようです。

(生島)
​ 万葉歌(万葉集巻12-3164)に登場する「鳴島」がこの生島のことだという説もあるということは前頁で触れました。
 これに関してもう少し付言すると、金ヶ崎の南海上にある小島、君島の古名が鳴島で、その由来は東方に仲良く並んでいる唐荷島三島に対して、孤独を嘆いて泣いているから、と地元の人たちは云い伝えているとのこと。
 生島は釜崎の半島に東側を遮られているから、生島からは唐荷島は見えない。すると唐荷島を羨んで嘆くこともないから、鳴島(泣き島)という名前であったという説明がつかない。
 という事で、君島説に軍配が上がってしまうのであるが、生島から家島諸島はよく見えるから、こちらは家島諸島から(つまり「家」から)遠く離れて孤独を嘆いているのだ、という理屈も言えるではないか。或は、秦河勝の墓があるということに関係付ければ、その死を悼んで泣いているのだと言ってもよい。地元で古名が鳴島であったという伝承がないのは、単にそれが途絶えてしまっただけという訳である。
 まあ、生島は、後ほど触れるように、秦河勝の墓があり、樹林が天然記念物に指定されるなど、十分に注目される島になっているから、万葉の「鳴島」は、そういったものが何もない君島に譲ってあげた方がいいとも言えますかね。

(生島と君島の位置関係)
 左手に坂越港が見えている。

(坂越港)
 ​はい、坂越港です。
 向かいの生島が波よけになっている天然の良港。

(同上)
​ 生島には大避神社のお旅所がある。

(大避神社お旅所)
​ この後向かった大避神社の参道に居られた男性からお聞きしたことだが、13日には神社のお祭りがあったそうで、神社から神様をお乗せした神輿が舟でこのお旅所に運ばれ、しばしご滞在の後、還御されるとのこと。夜には篝火を焚いて、という盛大なお祭りのようです。
 で、大避神社へと向かいます。

(大避神社)
​ 神門前の道を左に上がったところに展望広場があり、そこに駐輪できるとお聞きしたので、先ずそこに向かう。

(船岡園展望広場の碑)
​​ 駐輪して、ロックし、煙草を一服。
 生島や坂越港を見下ろすが高度が低いので、上の碑の写真のようには見えない。もう少し高い場所に行かなければならないかと、そのまま、ハイキング道を上り始める。神社の方に戻るつもりであったのに、そのことはすっかり忘れ去っていました。
 そして、帰り道も展望広場から自転車に乗って一気に走り下ってしまったので、大避神社は門前の写真を撮っただけで、ご挨拶せずにやり過ごしてしまうことになったのでした。
大避の 名にこそあるか 門前を よそのみ見つつ 過ぎけり我は (避家持)
 上記歌の解釈は如何様にもあれ、「大避」は「大酒」でもあるからと、下戸のヤカモチが怖気づいてこれを避けた訳ではないので、念のため付言して置きます(笑)。
 大避神社は秦河勝を主祭神とする神社。
 秦河勝さんにご挨拶できぬままやり過ごしたことは、ヤカモチとしても残念無念のことであったのです。
 ということで、大避神社については、下記参考をご覧下さい。
 向かいの生島には秦河勝の墓があるそうだが、島全体が大避神社の神域となっていて人の立ち入りを禁止しているから、どのような墓なのか確かめようもないが、遠目からは島そのものが前方後円墳のようにも見える。
 秦河勝は渡来人で聖徳太子の側近として活躍するが、太子の死後、太子の息子・山背大兄王とその一族を攻め滅ぼした蘇我入鹿の迫害を受け、難波浦から船で脱出、ここ坂越浦に漂着、大避大明神となったということが世阿弥の「風姿花伝」に書かれているそうだ。
<参考> 大避神社 ​・Wikipedia
世阿弥著「風姿花伝」第四神儀伝(岩波文庫)より抜粋
​「かの河勝、欽明・敏達・用明・崇峻・推古・上宮太子に仕へ奉り、この藝をば子孫に傳へ、化人跡を留めぬによりて、攝津國難波浦より、うつぼ舟に乗りて、風に任せて西海に出づ。播磨國、越坂浦に着く。浦人舟を上げて見れば、形、人に變れり。諸人に憑き祟りて奇瑞をなす。即ち、神と崇めて、國豊なり。大きに荒るると書きて、大荒 (おほさけ) 大明神と名附く。」(2019.11.2.追記)

(世阿弥「風姿花伝」岩波文庫)

(さこし歴史と自然の森 ウオーキングマップ)
​​
(船岡十三景案内板)
 大避神社のある丘の背後は茶臼山と宝珠山になっていて、船岡園という公園があり、ハイキングコースも整備されている。
 少し上ると児島高徳の墓。
 児島高徳と言えば、「天勾践を空しうすること莫れ、時に范蠡無きにしも非ず」であるが、彼の詩のこの下りを知ったのは小学生低学年の頃だったと思う。父から聞いたのが最初で、語呂がいいのですぐに頭に入って来たが、正確な意味を知るのは、もう少し後のことであったかと思う。
<参考> 児島高徳 ​・Wikipedia

(児島高徳墓)
 墓の後ろにあった碑は「備後三郎の碑」。
 備後三郎とは何者?

(備後三郎の碑)
 碑文を見ると、児島高徳の通称が備後三郎ということのよう。
 児島高徳は南朝の忠臣であるが、戦いに敗れて妙見寺に退隠、剃髪して僧となり義清房志純と号した。彼の最後がどうであったかは記録に残されていないが、此処に墓があることに鑑みればこの寺で最期を迎えたのであろう。というようなことが記されている。
 そして、こんな解説文的なものが、墓を挟んで碑と反対側に建てられていました。


(同上・副碑)
 備後三郎碑の副碑、説明碑というのでもなさそう。上段は碑の本文部分を書きとめてあるから、碑を見上げて内容を読み取るのは首が疲れるであろうから、こちらでどうぞという趣旨であるか。下段はこれを読み下し文にしたもの。
 掲示の趣旨はよくは分らぬが、上段末尾にある「明治四十三年五月十三日 兒島贈従三位舊趾保存會名誉會員 奥藤研造謹撰」とある中の「奥藤研造」という名前は記憶して置いていただきたい。
 それにしても、秦河勝、小倉御前そして児島高徳、何やら似たような話になっているのは、大避大明神のまします坂越に相応しいことである。
 高徳墓所の右奥に上って行くと妙見寺観音堂である。

(妙見寺観音堂) ​​
(同上・説明碑)
 観音堂から先への登山道はなく行き止まり。
 山門の方に回ってみるが、下り道で、展望広場へと戻る道のよう。
 児島高徳墓所のある場所に戻り、反対側(左側)に行ってみると、屋根のある休憩所のようなものがある場所に出た。上の船岡園十三景案内板に「縮遠居」とある場所である。ベンチがあって、生島や坂越港が眼下に見えるという場所。眺めもよいので、ここでお弁当タイムということにする。
 眼下に見える生島。

(眼下に見える生島 島の左端に見えるのがお旅所である。)
 坂越港も一望である。
​​
(坂越港遠望)
​  ​も​ う少し上まで上るつもりでいたが、坂越港と生島の全景写真が撮れたので、目的は達成したというもの。気が変って山を下ることにする。そもそもこれは道草であるから、深入りして余り時間を取ってはいけないのである。 ​​​​
 ということで、展望広場に戻り、自転車(トレンクル)で一気に下る。海岸べりの道に出る。
 千種川へとつながる、谷筋の旧街道を西北西へ。

(旧街道・坂越の町並み)
 なかなか雰囲気のあるいい町並みである。
 手前から奥にかけて右側の蔵のある白壁の大きな屋敷は酒蔵である。
 この酒蔵の先に「坂越まち並み館」というのがあったので覗いてみた。
<参考> 坂越まち並み館 ・Wikipedia
​ 入館するとご婦人が出て来られて、町の歴史のことや町並みのあれこれをご説明下さいました。この建物は奥藤銀行坂越支店として大正時代に建てられたものだそうだが、児島高徳墓所で見た解説碑的なものの中に、奥藤研造という名があったことを思い出す。隣の酒蔵は今もその奥藤家が経営されているとのこと。坂越は北前船の寄港地でもあったそうだから、先般の高岡市伏木ではないが、古くは大いに栄えたのであったろう。
 街道を突き進むと千種川に出る。​こちらに来る時に渡った千種川の上流側に出ることになる。
 今日はここまで。この後は千種川銀輪散歩となりますが、続きは明日以降のこととさせていただきます。(​ つづく ​)
​​​​






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最終更新日  2019.11.02 22:20:53
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