“やおっち”的電脳広場

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第一部第3話



彼女の告白、それは

「実は、すごく好きな人がいるの」

というものでした。
その言葉に動揺しつつも反射的に思わず彼は「だったらなんで俺と・・・」と問い詰めそうになる自分を押さえて

「その人、彼氏なの?」と聞きました。

彼女は答えます。

「ううん、違うの。彼氏は今いない。その人は昔付き合った人で、すごく好きでっていうか忘れられない人なの」

そして、彼の「その人のこと、話してくれないかな?」という問いかけに答えるように話し始めました。

「その彼とは3年ぐらい前に別れたんだけど、結婚するつもりでいたの。
職場の先輩で五つ年上で、最初知り合ったときは嫌いだったけど、知らず知らずのうちにその人と二人でデートするようになり、自然な流れで付き合い始めたの。
付き合って1年半ぐらいで結婚することを決めて、お互いの両親にもあいさつして、式場や日取りも決めて、結納を済ませた後、私から「結婚止めたい」って言ったの。なんか、その人は好きで一緒にいたいけど、このまま結婚するのが怖くて。
でも、その人のことを好きって気持ちに変わりはなかった。あんなことがあった後に、彼の心が離れていって他に彼女ができたって話を友達から聞いたけど、別れるって言われてないし、別れたくないしあきらめることができないから、彼とはつきあい続けた。二股で、私には気持ちがない、って分かってても。
彼がその彼女とケンカして一人でいたくなくて「今晩、一緒にいてほしい」って電話があった時も言われるままに一緒に過ごしたわ。その人の代わりに彼に抱かれてるって分かっててもよかったの。彼のこと、どうしようもなく好きだったし、彼のそばにいたかったから。
でも、終わりは来たの。さらにそれから1年ほどして、彼がその彼女と結婚することになって私に「別れたい」って言ったとき、私はどうもしなかった。彼のために黙って身を引いたの。でも、それを今でもものすごく後悔してるの。どうしてあの時、何もかも投げ捨てて「イヤ、その人と結婚しないで、私と一緒にいて」って。それくらい好きで忘れられないの。」

そう告白する彼女の声は、話すにつれて感情的になり、最後は泣きじゃくり、ほとんど話が聞き取れないところまで来ていましたが、彼は黙って聞いていました。

しばらくお互いに沈黙が続き、彼が声をかけようとしたとき、彼女が口を開きました。

「あなたは本当にいい人。私にはもったいないの。でも、あなたといると、いつも「あの人なら・・・」と比較してしまうの。あなたのこと考えてもいつの間にか彼のこと考えてしまうの。だから付き合えない。ごめんね。」

この言葉には、彼は何も答えることができませんでして、というより頭の中が真っ白になり、何も答えることができなかったのです。

そして、彼女は言いました。

「こんな女、嫌いになった?なって当然だよね。でも、また遊んで欲しい。でも、こういうの虫が良すぎるよね。ごめんなさい。時間がものすごく遅くなったから、もう切るね。お仕事頑張ろう。おやすみ(ガチャン)」

受話器から鳴り響く通話音を聞きながら、彼はしばらく放心してました。
ふと我に返った時、時計を見ると午前4:10でした。

「やべぇ。今日5時半起き!」

彼はすぐ布団に入りました。
しかし、こんな話を聞いた後だけに眠れる様子もなく、ただただ

「これから、どうしよう?」

という考えが頭の中をグルグル回っていました。(続く)


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