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“やおっち”的電脳広場
第一部第9話
彼女を送り終えた後の車の中、彼は一人になって考えてました。
一人で考え事をして煮詰まってしまったとき、彼はよく車を運転しながら気分転換や考えの整理をするのを日課としていましたが、今回もそれに習って考えてました。
その内容はもちろん
「彼女とどうしよう」です。
「あの言い分からすると、俺は彼女にとって「友達以上、恋人未満」なのか?いや他の男友達もいるっていうから、そのうちの一人かもしれないな」
「しかし、俺は自分の知らない、彼女にとっては過去の男に負けた、ってことになるのかな?」
「と、すると俺は何をしてるんだろう?元々俺は彼女と付き合いたいからこうやって遊んだりしてるわけで、付き合えない、ってのが分かった以上、続ける必要、あるのか?」
「しかし、本当に次はちゃんと会って、今まで見たいなことが出来るか、だな・・・」
そんな思考を頭の中で巡らせ続けた彼でしたが、そのうち考えるのも疲れてきて、最後にはため息をつきながら、こうつぶやくしかなかったのです。
「まいったなぁ~」
と。
そうこう考えてるうちに、彼は家に帰り着きました。
家に着くと、彼女との約束事がここでもありました。
「家に着いた」ってメールをすることです。
これも以前、家についてそのまま寝てしまった時、夜中に電話がかかってきて
「まだ着いてないかと思って心配したよ~!事故でも起こしたかと思ったのに~!」
と泣かれてからメールするようになったのです。
そして、メールをしてから数分後、彼の電話が鳴り出しました。
彼女からです。
こういうとき、よくかかってくることが多かったので驚きはしなかったのですが、今回ばかりは手を伸ばすのをためらい気味になりました。
とは思いながらも彼は電話に出ることに・・・。
彼「もしもし」
彼女「もしもし、お帰りなさい。」
彼「ありがとう」
電話はいつもと同じ会話で始まりましたが、今回ばかりはやはり、やりとりの内容が変化します。
彼女「今日はごめんね。泣いてしまって。せっかく楽しかったのが台無しだね。反省してる。」
彼「もういいよ。終わった事だから。」
彼女「ううん、やっぱり気になる。だって、あんなこと言ってしまったし、あんなに泣いて気を悪くしてるんじゃないかって心配で・・・」
彼「だから、もういいって。そんなに引きずるなよ。泣いたのはしょうがないじゃん。」
彼女「うん、ありがとう。でもごめんね。あんなこと言って。でも、私の本当の気持ちなの。」
彼は話を蒸し返されそうな雰囲気になってきたため
彼「もういいよ。その話も止めよう」
しかし、彼女は止まりませんでした。
彼女「ううん、こんなのイヤなの。あなたに嫌われたくないし、ちゃんと友達でいたいし。」
さすがに何度も自分にとって聞きたくない話を蒸し返そうとする彼女の話に、彼は次第にイライラし始めます。
そして、思わずそれが声に出てしまいました。
彼「だから、もういいって言ってるじゃないか!そんなに何度も友達、って言わないでくれよ!別に嫌いになんかなってないし、そんな同じ話を何度も繰り返さなくていいじゃないか!やめやめ!こんな話!気分悪くなるよ!」
そう言い終わった瞬間、彼女の態度が一変しました。
彼女「何よ!その言い方!そんなに怒らなくてもいいじゃない!怖いよ。私、怒る人嫌いって言わなかった?どうして怒るの?」
彼は彼女の豹変ぶりに驚きます。
彼「別に怒ってないって。何度も同じ話すするから、もう止めよう、って言っただけじゃん」
しかし、彼女は止まらなくなりました。
彼女「それが怒ってるって言うの!そういうのが怖いの!私怒る人怖いからイヤなの、嫌いなの!そんな言い方止めて!」
彼「だから・・・」
その後、そんな会話が何度か続くうちに、彼の頭が整理されました。
彼の結論は
「このままじゃ自分がやばくなる。ここで一度、深みに入らないうちに彼女と一度距離を置いて、冷静に考え直した方がいいかもしれないな」
でした。そして、
「それを彼女に伝えるのは今しかない、傷口が広がるかも知れないし、俺自身が悪者扱いされるかも知れないけど、今はこうせざるを得ないんだ。話そう!」
そう決心して、彼は
彼「あのさ・・・」
と口を開こうとした瞬間、彼女が先に声を上げました。
彼女「ひどい、ひどいよ~。そんなにあなたが怒る人なんて・・・嫌われたくないし、また一緒に遊びたいと思ってるだけなのにそんなこと言うなんて・・・もう私、どうしていいか分からない!(ガチャン)」
と一方的にまくし立てたあげく、これまた一方的に電話を切ってしまったのです。
受話器から流れる通話音を聞きながら
「なんだ、それは?」
となりましたが、
「まぁ、今日かけ直すのは同じ事の繰り返しになるから、明日、お互い冷静になってところで話し合った方がいいかもしれないな。」
ということで今日はこれ以上、何もしませんでした。
しかし、この判断が結果として彼の命取りになったのです。
翌日、彼は彼女にメールします。
「今日、ちょっと話そうか」と。
しかし、いつまでたっても返事は帰ってきませんでした。
仕方がないので夜、電話をすると・・・これまた出ようとしません。
いつもなら確実に出る時間なのに、全く出る気配がないのです。
「これはおかしい、なんか変だ」
直感的にそう感じた彼は何度か電話し直します。
しかし、電話に出ようとしません。
メールもするけど、返事が来ません。
そして、「これで今日は日を改めよう」
と電話をかけた瞬間
呼び出し音が鳴ったとたんに電話が切られてしまいました・・・。
明らかに彼女は電話の「保留」ボタンを2回押したのです。
「まさか・・・」
彼のイヤな予感は的中しました。
それからというもの、彼女はメールにも、電話にも反応しなくなりました。
そして彼は
「俺は距離を置かれてるか、嫌われた」
そう感じるようになりました。
「距離を置きたいのは俺の方なのに、こんなやり方があるかよ・・・なんか気持ちの整理がつかないっつ~の・・・」
彼はしばらくの間、この中途半端な気持ちの整理に頭を悩ませることになりました。
こうして、二人は中途半端な形で一時的に関係を中断することになりました。
秋も深まった10月の終わりのことでした。
果たして、二人この先、一体どうなるのでしょうか?
(第一部 完)
第一部~第二部へはこちら
第二部予告編~第10話序章へはこちら
第10話へはこちら
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