“やおっち”的電脳広場

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第二部第10話



「あれから、どのくらいになるだろう?」

最近、彼は心に隙間が空くたびにこんなことを考えるようになりました。
気がつけば、もう年を越して1月。それももう終わりになろうとしています。

「3ヶ月、か。」

そう思い、彼はため息をつきます。

彼女から一方的に連絡が取れなくなって以来、彼は割り切れないような、吹っ切れないような歯切れの悪い日々を送ってました。

最初の1週間ほどは毎晩メールか電話をしていましたがまったく反応はありません。
これが逆に彼の心に焦りと「何が何でも・・・」という気持ちにさせてしまったのです。

「好き、って気持ちはここまで人を深入りさせるのか・・・。」

彼はそう思わずにはいられませんでした。

「振った方は気持ちの整理がつくからいいんだけど、振られた方はいきなり気持ちが断ち切られてどうしていいか分からなくなる」

彼自身が体験して得たこの言葉が、今の彼に重くのしかかります。

友人からは
「そんな女のどこがいいんだ?逆にこっちから振ってやれよ!深入りしないほうがいいって。痛い思いするだけだよ。そんなにいい女か?」

と言われてはいるのですが、彼自身、そんな事は頭の中では分かり切っているのです。

まぁ「いい女か?」と言われると、かなり美形でモテるタイプではあるけど・・・。

「そう言えば、20歳ごろはかなりモテて、引く手がたくさんだったらしい、って後輩が言ってたなぁ。ま、それが原因で行き遅れてるんじゃない?いい年してさぁ。30代だよ。とも言ってたな。
でも、そんなこと言うなよ。おれも30代だけど、こんな情けない状態なんだぜ・・・」

まさに、彼女に深入りし過ぎた彼の心は乱れてました。

じゃぁ、新しい恋でも、と思って友人や上司の紹介、お見合いパーティーになんか行って、何度かデートもしたけど全然展開が進まない。
というより彼自身がまったくその気持ちが起こらなかったのです。

結局は、彼自身が彼女への結論をつけられずにいたためなのです。

彼の本心は
「結果がどうあれ、話がしたい。そこできっちりケリをつけたい。でも、連絡がとれないので話し合いにもならない。
ダメならダメでいい。次の恋に進むから。でも、このまま次に進むのも後味が悪いし、気持ち悪い。このままじゃ納得いかない。」

であり、要するに、心の中が中途半端なままで整理されていて、それが彼を新しい恋に進ませるのを止めていたのです。



そんな1月も終わろうとするある休日のこと、

友人達と飲みに行って夜遅く家に帰ってくると、家の電話に着信履歴がありました。

「誰だ?家の電話にかけてくる奴なんて・・・?」

と思いつつ履歴を確認した瞬間、彼の心臓は止まりそうになるくらいの衝撃を受けます。

その電話は・・・彼女からだったのです。

彼はしばらく呆然としました。

「電話が来たのは正直うれしいけど、どうしよう?」

彼は焦りだしました。そこへその日一緒に飲んだ女友達から電話が。
ちなみに、その女友達には彼女のことでいろいろグチを聞いてもらったので彼の事情は承知済み。なので、そのことを話すと

「まずは話してみな。それで彼女がどう出るか、だよ。」

と言われついに意を決します。

その瞬間、再び彼女から電話が・・・。

彼はついに受話器を取りました。(続く)

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