文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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泉ユキヲの観た・読んだメモ 43

令和6年4月28日から の実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 令和5年11月22日~令和6年4月27日 の実況はこちら。


観 た:

令060531  藝大21 創造の杜2024 「作曲家ペーテル・エトヴェシュ」 Péter Eötvös | Sirens' Song for orchestra (2020) | Speaking Drums - four poems for percussion solo and orchestra (2012/2013) | Focus - concerto for saxophone and orchestra (2021) | The Gliding of the Eagle in the Skies for orchestra (2011, rev. 2012/2016) @ 東京藝術大学奏楽堂(大学構内)

令060529  板倉鼎・須美子展 | 両洋のまなざし 石井光楓 | 千葉市美術館コレクション選 特集・白井美穂 @ 千葉市美術館

令060529  開館50周年記念 コレクション展1 50年の歩み @ 千葉県立美術館

令060528  しりあがり寿展 @ Gallery Q

令060528  三島喜美代 未来への記憶 Mishima Kimiyo: Memories for the Future @ 練馬区立美術館

令060527  村松辰之介 個展 aluminium scape @ Gallery b. Tokyo

令060527  出店久夫 展 「歴史」 @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060527  Kitahara Collection 超合金&ソフビ @ 京橋エドグランB1 タウンミュージアム

令060527  日経日本画大賞展 | 清水 航 展 @ 上野の森美術館

令060525  土屋仁応 「動物と人」 Yoshimasa Tsuchiya: Animals and Humans | 田中福男 「その種として」 Fukuo Tanaka: As a Species @ Megumi Ogita Gallery

令060525  坂本友由 展 「手前のものさし」 @ Gallery Mumon

令060524  武本大志展「妖怪彫刻」
| 多田幸史 作陶展 | 金物師 十六代金谷五良三郎展
@ 日本橋高島屋 美術画廊

令060524  野田朗子 Akiko Noda Glass Exhibition: "Connect - Past, Now, Future" @ 壷中居
(硝子作品「縄文のビーナス」を \27,500で購入)

令060524  中西 伶 「表層の季節」
| 西村昴祐 「すわらせる」 | Yang Bo(楊博) Zamio versus Souvenir-man and the Defending Champion | 堀江 栞 個展 「仮定法のない現在」
@ 銀座シックス蔦屋書店

令060522  MET Live | Charles Gounod: "Roméo et Juliette" @ 東劇

令060521  永島佳代子 コドウナオコ 二人展 "NAGO" @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060521  デカローグ5 ある殺人に関する物語 | デカローグ6 ある愛に関する物語 @ 新国立劇場 小劇場

令060520  野沢二郎 個展 「時雨、のち静か」 @ Galerie Paris

令060520  第8回 横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで生きてる Wild Grass: Our Lives @ 横浜美術館|旧第一銀行横浜支店|BankArt Kaiko

令060517  山下武美展 Box and Cabinet @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060516  藝大動物園 Welcome to the art zoo! @ 藝術アートプラザ

令060516  大吉原展 Yoshiwara: Utamaro, Hiroshige, Hokusai @ 東京藝術大学大学美術館

令060516  岩渕華林 "Fragile" | 吉野涼子 "ephemeral" @ Gallery Tsubaki

令060515  アンセル・アダムス作品展 ポートフォリオⅣ:偉大なる啓示 @ 写真歴史博物館

令060515  富士フイルムグループ創立90周年記念コレクション展 フジフイルム・フォトコレクションⅡ 世界の20世紀写真「人を撮る」 Exhibition to Commemorate 90 Years of Fujifilm Group FUJIFILM PHOTO COLLECTION II Capturing the Human Experience: World Photography in the 20th Century @ フジフイルム スクエア

令060515  Michael Kenna: 50 Years & Japan @ Gallery Art Unlimited

令060515  大原 舞 "Encounters" @ s + arts

令060515  遠距離現在 Universal/Remote (井田大介, 徐冰, Trevor Paglen, 地主麻衣子, Giorgi Gago Gagoshidze+Hito Steyerl+Milos Trakilovic, Tina Enghoff, Jeamin Cha, Evan Roth, 木浦奈津子) @ 国立新美術館 企画展示室1E

令060515  マティス 自由なフォルム Henri Matisse ― Formes libres 巨匠がニースに遺した切り紙絵のあざやかな世界 @ 国立新美術館 企画展示室2E

令060513  MET Live | Charles Gounod: "Roméo et Juliette" @ 東劇

令060512  井上 健 (たけし) 展 塗りと出会う @ 日本橋高島屋美術画廊X

令060512  成田朱希 個展 アドレナカフカ @ 不忍画廊

令060512  景色の手ざわり 山内康嗣|河野志保 展 @ Gallery Face to Face

令060512  没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる | TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から @ 東京都写真美術館

令060510  アーティストによる理想の家(野々上聡人・石原 海・上田 良・根本祐杜) @ アート/空家 二人(大田区蒲田三丁目)

令060508  久保寛子 鉄骨のゴッデス Steel-framed Goddess @ Pola Museum Annex

令060507  あるコレクターによる宮崎進 展Ⅱ 1972-2007 MIYAZAKI Shin | 大久保智子 OKUBO Satoko 「糸と色」 @ Galerie Tokyo Humanite

令060506  色本 藍 展 サバイブ・サバイブ・サバイブ @ Gallery b. Tokyo

令060503  ボタニカ(奥村彰一、椎猫白魚、新藤杏子、鈴木喬子、服部知佳) @ Bunkamura Gallery 8/

令060503  大岩オスカール展 乱流時代の油ダコ Oscar Oiwa Exhibition: Oil Octopus in the era of turbulent currents @ 渋谷ヒカリエ8階 8/Court + 8/Cube 1~3、4階 ヒカリエデッキ
(ヒカリエの建物壁面へのライブペインティングあり。ぼくが4階に行ったときペインティングはもう終わっていたが、サングラス姿の作家がおられた)

令060503  横山 宏 Kow Yokoyama from 1982 @ Billiken Gallery
(コンセプチュアルアート作品 Eddy 1 を ¥120,000 で購入)

令060502  Ho Tzu Nyen: A for Agent ホー・ツーニェン:エージェントのA | 翻訳できないわたしの言葉 Where My Words Belong | サエボーグ: I Was Made For Loving You/津田道子: Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる | MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020 Eye to Eye―見ること @ 東京都現代美術館

令060501  Makoto Honda Solo Exhibition 緑の狸 Green Raccoon Dog | Hiro Sugiyama: "Sculpture" @ Lurf Museum

令060501  マイケル・ケンナ写真展 JAPAN / A Love Story 100 Photographs by Michael Kenna @ 代官山ヒルサイドフォーラム

令060501  青山 夢 Yume Aoyama 見えない怪獣 Invisible Kaiju @ Art Front Gallery

令060427  平林孝央 個展 静穏の大祝 (ほうり) ~眠る森の聖域にて~ @ Gallery Mumon

令060427  クリス・ベレンス 素晴らしき地下世界 Chris Berens: The Great Below @ Megumi Ogita Gallery

令060426  北見隆作品展(絵画・立体・版画)【天使篇Ⅱ】 @ ギャラリー枝香庵

令060426  エコロジー:循環をめぐるダイアローグ Ecology: Dialogue on Circulations つかの間の停泊者 Ephemeral Anchoring(Nicolas Floc'h, Kate Newby, Takeshi Yasura 保良雄, Raphael Zarka) @ 銀座メゾンエルメス フォーラム

令060425  デカローグ2 ある選択に関する物語(益岡徹ほか)|デカローグ4 ある父と娘に関する物語(近藤芳正、夏子ほか) @ 新国立劇場 小劇場

令060425  宇野亜喜良 展 | 没後50年 難波田史男 | project N 94: Oshiro Natsuki 大城夏紀 @ 東京オペラシティ アートギャラリー

令060424  デカローグ1 ある運命に関する物語(ノゾエ征爾、高橋惠子ほか)|デカローグ3 あるクリスマス・イブに関する物語(千葉哲也、小島聖ほか)【アフタートークあり】 @ 新国立劇場 小劇場

令060423  Momotaro Project | 世界の桃太郎展 ~どんぶらこ、海を渡る~(I Made Griyawan, Indonesia; Abdalla Saidi Chilanboni, Tanzania; Amir Hosein Aghamiri, Iran @ ギャラリー青羅

令060423  生熊奈央/石川真衣/riya Dog Stories 2 @ AL(恵比寿南)| Gallery Speak For 企画

令060423  復刻開館記念展 Reviving the Inaugural Exhibition 仙厓・古唐津・中国陶磁・オリエント 出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅠ @ 出光美術館

令060422  Danielle Winger: The Shape of Water @ 靖山画廊

令060422  MET Live | Giuseppe Verdi: "La Forza del destino" (イタリア語上演 Lise Davidsen ほか) @ 東劇

令060421  大倉なな個展 器官と窓 @ space 櫛形(葛飾区亀有)

令060419  デカローグ2 ある選択に関する物語(益岡徹ほか)|デカローグ4 ある父と娘に関する物語(近藤芳正、夏子ほか)【アフタートークあり】 @ 新国立劇場 小劇場

令060418  デカローグ1 ある運命に関する物語(ノゾエ征爾、高橋惠子ほか)|デカローグ3 あるクリスマス・イブに関する物語(千葉哲也、小島聖ほか) @ 新国立劇場 小劇場

令060416  カラカラ天気と五人の紳士(別役 実;堤 真一・溝端淳平ほか) @ シアタートラム

令060410  こまつ座 夢の泪 【アフタートークあり】 @ 紀伊國屋サザンシアター

令060406  外田千賀個展 ―幻想ロマンティカ― @ ギャラリー枝香庵

令060405  戸田沙也加 "Monster" @ Gallery 10 (Toh)

令060405  シュルレアリスムと日本 『シュルレアリスム宣言』100年 @ 板橋区立美術館

令060404  第27回 岡本太郎現代藝術賞(TARO賞) | 人のかたち:岡本太郎の人体表現 @ 川崎市 岡本太郎美術館

令060403  中村正義展 生誕100年 1924-1977 | 小さな从展 2024 @ 不忍画廊

令060403  中平卓馬 火|氾濫 Nakahara Takuma: Burn|Overflow | 所蔵作品展 MOMAT コレクション(芹沢銈介<金子量重コレクション>、高梨豊『町』など)| 新収蔵&特別公開:ジェルメーヌ・リシエ≪蟻≫ @ 東京国立近代美術館

令060402  島村信之 展 @ Gallery Suchi

令060401  藤田瑞穂 個展 @ アートスペース羅針盤

令060401  富田菜摘展「古き良きものたち」「密やかな棘」 @ Galerie Tokyo Humanite

令060330  ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ Does the Future Sleep Here?: Revisiting the museum's response to contemporary art after 65 years @ 国立西洋美術館

令060330  第47回 从展 @ 東京都美術館 1階 第4展示室

令060322  斎藤りえ 2020~2024 (ムンクのような銅版画) @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060321  流山児★事務所 寺山修司没40年記念 「田園に死す」 @ ザ・スズナリ

令060320  生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真 Yasui Nakaji 1903-1942: Photographs @ 東京ステーションギャラリー

令060320  VOCA展 現代美術の展望 ― 新しい平面の作家たち(ウチダリナ作品あり) @ 上野の森美術館

令060319  ―写真による― @ ギャラリー檜B・C

令060319  時を紡ぐ:潜在、乱れ、そして生の深遠 佐藤地央・阿部零・笠原豪 @ art space kimura ASK?

令060319  メディア/イアソン(演出・森新太郎、井上芳雄、南沢奈央ほか) @ 世田谷パブリックシアター

令060317  パーフェクト・カモフラージュ展 私はアートになりたい | さわひらきドローイング展 きっかけとかたち @ ワタリウム美術館

令060317  contact 川端健太/山田優アントニ @ Taku Sometani Gallery

令060314  Drawing (谷川千佳ほか) @ Sansiao Gallery/Masataka Contemporary

令060314  Noriko Saito 2024 サイトウノリコ銅版画・金工展 @ 不忍画廊

令060314  菅原さちよ 日本画展 ―詩歌の庭へ― @ 日本橋高島屋美術画廊

令060314  山本直彰 展 ドアの向こうで小鳥が狂う @ 日本橋高島屋美術画廊X

令060313  深津真也展 「森 蝶」 @ アートスペース羅針盤

令060313  MET Live | Georges Bizet: "Carmen" (Aigul Akhmetshina, Daniele Rustioni) @ 東劇

令060313  吉田愛美 Yoshida Ami PORT RAIT @ アートスペース羅針盤

令060313  吉川薫 展 いらくさが灰色の剥片を持ち上げる @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060310  第16回 日本広告写真家協会公募展 APA アワード 2024 | 恵比寿映像祭2024 コミッション・プロジェクト | 記憶 リメンブランス 現在写真・映像の表現から @ 東京都写真美術館

令060309  Art Fair Tokyo 2024(2時間半にわたり観覧) @ 東京国際フォーラム

令060307  小林あずさ展 @ Gallery Q

令060307  石原七生 個展 ききづたえ くちづたえ あひかたらふ @ ギャラリー枝香庵

令060307  パンダ絵師 あごぱん展「吉祥パンダ招福図」 @ 銀座蔦屋書店インフォメーションカウンター前

令060306  木村鮎子 展 @ Oギャラリー

令060306  Kera Cross第5弾 骨と軽蔑 @ シアタークリエ

令060305  動物百貨展 @ 森田画廊

令060305  中村まり子 個展 満ちみちた日に @ Gallery b. Tokyo

令060305  井上雅之展 ―形に囲まれる― Inoue Masayuki: Surrounded by Forms | 都丸志帆美 展 内側に溜まった水溜り @ Galerie Tokyo Humanite

令060304  見逃しセレクション展 Part 2(若井真由夏ほか) @ Gallery Face to Face

令060303  近松素子個展「粒の先」 | 佐藤阿朱香展 ―今度行きたい場所― @ Oギャラリー

令060302  米田有甫 (よねだ・ゆうすけ  「微風状態」 @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060301  悦 頃 (えつころ) @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060301  MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ MOT Annual 2023: Synergies, or between creation and generation | 豊嶋康子 発生法 ― 天地左右の裏表 Yasuko Toyoshima: Origination Method | MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020 特集展示 横尾忠則 ― 水のように 生誕100年 サム・フランシス @ 東京都現代美術館

令060228  佐藤 均 写真展「蒼穹」 @ CO-CO Photo Salon

令060228  ミュージカル「ボディガード」 Musical "The Bodyguard" (新妻聖子・大谷亮平) @ 東急シアターオーブ

令060226  もじ イメージ Graphic 展 | ダニエル・ブラッシュ展 ― モネをめぐる金工藝 Daniel Brush: Thinking About Monet @ 21_21 Design Sight

令060226  第47回 五美大展 @ 国立新美術館 企画展示室 1A~1D, 2A~2D

令060224  Kila Cheung/中村萌 ”Home” @ Gallery Tsubaki

令060223  坂口 健 作陶展 @ 日本橋高島屋美術工芸サロン

令060221  白井美穂 森の空き地 Mio SHIRAI: Clearing in Woods @ 府中市美術館

令060221  中村恭子・郡司ペギオ幸夫「BOG BODY ― 召喚される身体」 @ art space kimura ASK?

令060220  ミュージカル「愛の不時着」사랑의 불시착 @ 有楽町よみうりホール

令060219  森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために 環境危機に現代アートはどう向き合うのか Our Ecology: Toward a Planetary Living|MAMコレクション017 さわひらき @ 森美術館

令060219  キース・ヘリング展 アートをストリートへ Keith Haring: Art to the Street @ 森アーツセンターギャラリー

令060215  ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家|収蔵品展078 静物画の世界|project N 93 宮林妃奈子 @ 東京オペラシティアートギャラリー

令060215  欲望という名の電車(演出・鄭義信、出演・沢尻エリカ/伊藤英明 @ 新国立劇場 中劇場

令060214  サムライ、浮世絵師になる! 鳥文斎栄之 展|武士と絵画 ー宮本武蔵から渡辺崋山、浦上玉堂までー|生誕140年 石井林響とその周辺 @ 千葉市美術館

令060213  山田勇魚・獅子野あんころ 二人展「山くじら 海くじら」 @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060213  Katherine Franken 個展 "inside blue." @ Gallery b. Tokyo

令060206  KAAT カナガワ・ツアー・プロジェクト第2弾「三浦半島の人魚姫」「箱根山の美女と野獣」(長塚圭史作・演出・出演) @ KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ

令060206  レイ ホラチェック「乱気流の痕跡」 Ray Horacek: Traces of Turbulence @ Galerie Paris
(銅版画2017年作 "Breakdown of the Body III" を \22,000 で購入。祖父母世代がチェコから渡米、1980年マサチューセッツ生まれ、在日韓国人と結婚)

令060205  哀れなるものたち Poor Things @ TOHOシネマズ日比谷

令060203  東京造形大学学部有志展 @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060202  海宝直人コンサート Attention Please! 2(ゲスト・笹本玲奈) @ シアタークリエ


読 ん だ:

令060601  仕事にしばられない生き方       (小学館新書、平成30年刊)   ヤマザキマリ 著
(「仕事にしばられない」といっても『テルマエ・ロマエ』が当たって仕事が殺到したときをはじめ、幼称「馬子」はがむしゃらに仕事にのめり込んでいる。転々飄々と余裕をブチかますわけでもない。日々、たたかい。壮絶な実況中継的回顧だ。|「蟻と蟬」の結びは、こんなすてきな蟬から蟻へのセリフ「歌うべき歌は歌い尽くした。私の亡骸を食べて生き延びればいい」|手塚治虫さんがトキワ荘時代の赤塚不二夫さんに言ったこと「いい漫画を描きたいなら、漫画から学ぶな。一流の映画や小説、音楽と接しなさい」|≪真面目な人ほど与えられた環境を受け入れようとして自分を追い込んでしまう≫ ≪日本はどこかに、自分だけ浮いてはいけない、無難な社会環境に帰属しなければ生きていけないというプレッシャーがあり、それが大きすぎる≫ ≪なんか違うな」と思ったらパッと離れたっていいんだと思います≫ ≪好きなことに打ち込んでいると、どうしても視野が狭くなって、自分のことしか考えられなくなるけど、今の自分がしがみついていることだけがすべてじゃないってことが、いろんなキッカケで見えてくる。それが潮目が変わるとき≫|ヤマザキマリさんのお話し仲間:谷口ジローさん、とり・みきさん、寺田克也さん、羽海野チカさん。|フランスの bandes dessinées 読みにそろそろ進出しようかな。)

令060525~28
やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える ChatGPT       (ニュートンプレス、令和6年刊)   松原 仁・監修
ChatGPT の衝撃 AI が教える AI の使い方       (実業之日本社、令和5年刊)   矢内東紀 著
ゼロからはじめる なるほど! ChatGPT活用術  仕事の効率が劇的に変わる AI 使いこなしのヒント     (技術評論社、令和5年刊)   マイカ 著
ChatGPT の全貌  何がすごくて、何が危険なのか?     (光文社新書、令和5年刊)   岡嶋裕史 著
(「文系のための 東大の先生が教える」シリーズ、めちゃいい。シリーズの他の本も次々読むつもり。
岡嶋さん clever なひとだ。「ここだけの話」「まだ出せない話」「ちょっと人前では語れない話」の価値を知ってる。SNS 時代の大学の授業は SNS 流出のリスクがあるから、そういう話ができなくなったと。「自発的な学び」を追求しようとしても、それでめりめりと力をつけるのは優れた生徒のみ。学習の習慣がないから予習はして来ず、だから「授業は演習だけ」といってもムリ。ある程度は授業内で知識を詰め込んでやらないと予習のための教科書が読めない。学生の二極化だ。AI 活用、また然り。)


令060525  新版 動的平衡3  チャンスは準備された心にのみ降り立つ     (小学館新書、令和5年刊)   福岡伸一 著
(本書副題はルイ・パスツールのことばとされる Chance favors the prepared mind.「教養とは、知識が時間軸に沿って、その人の体験の中にきちんと組織化されていること。物知りはネットのアーカイブのような、知識の羅列でしかない」|生命は「常に動的な状態を維持することによって、いつでも更新でき、可変であり、不足があれば補い、損傷があれば修復できる体制をとっている。だからこそ生命は、柔軟で環境に適応的であり、進化が可能になる」|「もし21世紀に癌治療に何らかの革新があるとすれば、それは敵と直接対決するのではなく、むしろあらかじめ身体に備わっている味方の力を応援し増強することにこそ活路があるのではないか」|「DNAのメチル化は付箋にあたり、その有無によってDNA情報の読み出し方が変化する」|「生命体はひたすら過剰さを準備する。シナプス結合の過剰なネットワークを作って、環境からの入力を待ち構える」。免疫システムも、抗体産生細胞(=B細胞)ごとに千差万別の抗体が100万とおり以上もランダムに、過剰に準備される。)

令060523  未必の故意       (書下ろし新潮劇場、昭和46年刊)   安部公房 著
(それぞれに演じどころが強烈な登場人物9名。うち3名の青年は「ちんば」「めっかち」「つんぼ」で、今となっては出版も上演も苦しい。貴重な本を下北沢で100円で入手した。|「同情される側の人間が、柄にもなく、同情する側にまわったりして…」「生きとる人間の声が、聞えんようになったかわりに、死人の声が聞えはじめたんじゃ」と、つんぼ。公房さんの香りがするねぇ。)

令060520  英文法再入門  10のハードルの飛び越え方     (中公新書、令和3年刊)   澤井康佑 著
(上手に書いてはあるが、英文の理解ではなく「和訳」を終着点としてとらえ、英会話力アップは多くの英文を「暗記する」ことにあり、というあたりに、英語の使い手ではないことを嗅ぎ取れる。「日本の5文型理論が英語を日本語に移し替えるためのツールである以上、日本以外の国で5文型理論が定着していないのはむしろ自然なことです」という恥しくも視野の狭い論述はわたしには絶対に書けない。|現在完了のところで「出来事動詞」「状態動詞」に言及していく手法は良い。同じ動詞にこの両面が内包されていることに言い及んでいるのも適切。『ジーニアス英和』は D と S で「出来事動詞」「状態動詞」を表記していたが、一刀両断の分類ができないことを悟り、2001年の第3版で廃した由。正しい判断だ。|「1項動詞」「2項動詞」「3項動詞」。)

令060519  新版 動的平衡2  生命は自由になれるのか     (小学館新書、平成30年刊)   福岡伸一 著
(動的平衡:合成と分解を繰り返しつつ一定の恒常性を維持する、自転車操業的なあり方。「ゴルトベルク変奏曲」グレン・グールド、ボリス・ベレゾフスキー、ユリ・ケインのアンサンブル、シュ・シャオメイ、イム・ドンヒョク、今井信子、小林道夫……楽譜という遺伝子は同じでも、多様な遺伝子のスイッチやボリュームは、生命体が置かれた環境によって調整される。巧みな比喩だ。|窒素循環は、土壌内の窒素細菌(根粒菌)が空気中の窒素を酸化させアンモニアや酸化窒素に変えたものを植物が吸収することで起こる。根粒菌のプロセスを人工化したのが化学肥料。|「おもしろい写真」とは著者によれば「そこに流れ込んだ時間を内包しつつ、次の一瞬への動きの再開を予感させる写真」。|プラスミッドは軽快に大腸菌のあいだで水平にパスされ、たとえばプラスミッドに耐性遺伝子情報が書き込まれるとそれを素早く大腸菌間で受け渡しできる。|無細胞的な化学進化が宇宙のどこか他の場所で何十億年もかけて生成され、そこに最初の動的平衡が生み出されたと考えることは合理性がある。|卵細胞には maternal RNAがあり、母由来の遺伝子。これが最初のスイッチとなって新しいゲノムの働き方を決める。)

令060517  The Happiest Man on Earth: The Beautiful Life of an Auschwitz Survivor       (Pan Macmillan Australia 2020)   Eddie Jaku 著
(1920年 ライプツィヒに生まれた Abraham Salomon Jakubowicz の凄絶な一代記。図らずも happiness から最も遠い路を文字通り心身傷だらけで歩んだ Jaku を支えた、稀有なできごとと人のつながり。Hitler をあえて hate せぬが決して forgive しない Jaku にとって、しあわせであることこそが最大の revenge だ。)

令060512  水死       (講談社、平成21年刊)   大江健三郎 著
(大江健三郎のことを長らく忌避してきた (彼へのノーベル賞授賞こそ賞の一大汚点と思ってきた) が、もと光文社勤務の友人の薦めでこの小説を読み、大江観が変わった。彼は単に戦後文化人の言説に連なる媚び媚び男ではなく、すばやい切り返しと激しい突っ込みで通念・風説そして何より自分自身をとことん弄んでみせる。失われゆく大江の名を文学史に残すべく、ノーベル賞はいい仕事をしたのである。『万延元年のフットボール』単行本を先日入手 (刊行時ぼくは8歳だった) 。|本作は、人間の業の深さと歴史の反復を主題としつつもスピード感に満ち、散漫にも思える展開が納得のカタルシスで大団円を迎える。小劇団の若き人々を織り込むことで、現実との接点・接線が確保され、虚構のちからで晦渋を免れ、リアリティが高揚する。漱石『こころ』の「先生」の明治の精神への殉死に対して諸観点の掛け合いがおもしろい。|メイスケ母の「もしあなたが死んでも、私がもう一度、産んであげるから、大丈夫」― これより凄絶な愛はない。)

令060511  失われた時を求めて6 ゲルマントのほう Ⅱ       (岩波文庫、平成25年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(プルーストの描写は注意書きもなく時をワープし、おりおりもったいぶった人間性分析をしてみせたりする。ようやく少し読み方が分かってきたか、延々とつづくヴィルパリジ夫人のサロンの諸人士の会話の読み解きもそれなりに楽しい。本巻は「私」の愛する祖母がうら若い乙女となって横たわり逝く美しい描写でおわる。サン=ルーが突然に「私」を裏切り者あつかいした経緯が次巻以降へのミステリーだ。)

令060428  Nine Stories       (Little, Brown and Company, New York 1991 - copyright renewed)   J. D. Salinger 著
(1948~1953年に The New Yorker 誌と Harper's Manazine に掲載の短篇9篇。いちように初めのうちは何がおもしろいのかさっぱりわからない文の流れで、これがもと光文社勤務の友人のすすめがなければ早々に読み進めるのを断念していたろう。読みやすいのは、在米日系 Yoshoto 夫妻との不思議な数ヶ月 De Daumier-Smith's Blue Period. そして圧巻は、サリンジャーの分身かと思われる10歳の天才少年 Theodore McArdle が Bob Nicholson 相手に輪廻転生を論じる佳篇 Teddy だ。その Teddy が引用してみせる俳句が2篇あり "Nothing in the voice of the cicada intimates how soon it will die," 蟬鳴くやいのちのゆくえ知らせざる;"Along this road goes no one, this autumn eve," この径を行くひとなくて秋の宵。以上2句は拙訳。)

令060427  音と脳  あなたの身体・思考・感情を動かす聴覚     (紀伊國屋書店、令和6年刊)   Nina Kraus 著
(原著 Of Sound Mind: How Our Brain Constructs a Meaningful Sonic World.  植物が地下配管の水音に反応してそちらに根を曲げるというのが衝撃的。人間の耳に聞こえる最小音から最大音までの空気圧の差は、気圧差にして10兆倍。だからデシベルは、動かされた空気量を対数変換してあらわす。|聞き取れない音声も、意味の知識を得ると聞き取れる。知識は聴覚に大きく影響。|脳に「文字を読む」中枢はない。だから聴覚領域を視覚脳が補助しつつ、読む。|音楽すれば、脳に顕著なしるし。音楽するとは、楽器演奏ないし歌唱。)

令060420  未来の地図帳  人口減少日本で各地に起きること     (講談社現代新書、令和元年刊)   河合雅司 著
(著者が全国各地への設置展開を提唱する「王国」とは、サイズを問わず生活圏として完結した、華やぎのある場。日本の政策が後手に回る理由として、(1) いったん仮定してしまった楽観的な人口予測に縛られて、変化を先取りする策が打てない (2) 既存の市町村の枠組みに縛られて考える愚 ← いまやむしろ都道府県を基礎自治体として策を打つべき。)

令060416  新版 動的平衡  生命はなぜそこに宿るのか     (小学館新書、平成29年刊)   福岡伸一 著
(第9章「動的平衡を可視化する ― <ベルクソンの弧>モデルの提起」が圧巻の納得感。エントロピー増大の法則の呪縛を逃れるために、生命は自己分解を自己合成の度合いに先んじさせ、それによってエントロピーの坂をゆっくり登り返す。これを切れた円弧で図式化・可視化する。自己分解が先んじることで、やがてDNAも痩せて、死に至るのである。|ミトコンドリアと葉緑体はもともと別の生物だったものが大型細菌に取り込まれたというのが現代の通説。|傲岸暗愚の鷗外は、鈴木梅太郎博士が1910年にビタミンB1を発見してもなお、「農学者が何を言うか」とて脚気は病原体によると信じて疑わず、死ぬまで「脚気菌」を探していたと。|北里柴三郎博士が母校東大の緒方正規教授の脚気菌説を批判すると帰国後に冷や飯を食わされるが、福沢諭吉が手を差し伸べて伝染病研究所を設立し北里を初代所長に迎える。北里は、のちに慶應大医学部の創立に尽力し初代学部長となる。)

令060411  失われた時を求めて5 ゲルマントのほう Ⅰ       (岩波文庫、平成25年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(「わたし」のゲルマント侯爵夫人へのストーカーまがいの思慕、そしてサン=ルー侯爵との友愛、サン=ルー侯爵のラシェルへの悲喜劇的執着。おそらく本作に独特のこうした人間関係を演劇のように楽しめだしたら、プルースト読みと言えるのだろう。)

令060404  Never Let Me Go      (Vintage International, New York 2006)   Kazuo Ishiguro 著
(2005年作品。1990年代おわりの英国、世間のご都合に翻弄されるはげしくも繊細な若い人々の心情のひだ。人間のぎりぎりの尊厳とは何か、何が人権を構成し何が人権を奪いうるのか、劇的に問いかけてくる小説だ。)

令060328  大日本  技術立国日本の恩人が描いた明治日本の実像     (実業之日本社、平成11年刊)   Henry Dyer 著、平野勇夫 訳
(原著は1904年刊 Dai Nippon: The Britain of the East . 日本と日本人に向けられた温かい眼差しと幅広い視点。日本の技術導入史の本かと思っていたが、国民性や歴史、経済そして政治の動きに広く目配りし、第三者からの視点も多くの引用で盛り込み、十全の書となっている。≪日本が欧米から一目置かれるようになったのは藝術や学問の進歩のせいだと、20年ほど前には日本人も本気で考えていたが、現実の体験がそんな思い込みを雲散霧消させた。今日では、戦争に勝つだけの国力を備えたゆえだと悟っている。≫≪日本人が西洋文明を取り入れようと懸命なのは、自分たちの国が劣等国として蔑まれるのは我慢ならないという国の面目を意識してのことである。≫≪もしも将来、日本の外交政策がヨーロッパ諸国との衝突を招くことがあるとすれば、そのときの戦争の真の原因は(たとえ見かけはどのようなことであれ)、清国の支配をめぐる対立であるに違いあるまい。≫ この和訳本はとうに絶版だが、英文原著はペーパーバックで容易に手に入る。)

令060322  歌集 乱反射      (角川書店、平成19年刊)   小島なお 著
(噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし || 歌人17歳から20歳までの第1歌集。みずみずしい感性。前半は二物衝撃が絶妙で完成度が高いが、大学入学後なぜか凡作ばかりになり、終章あたりで俄然香り立つ。|| たくさんの蟻群がれるその中に美青年なるダリの悲しみ|靴の白 自転車の銀 傘の赤 生なきものはあざやかである|黄金虫あきのひかりをつややかな背中にあつめ草にしずみぬ|書きかけてやめた手紙を想うとき切手の中の砂丘をあるく|なんでもない悩みに悩むわれつつみ映画のエンドロール流れる|お祭りのざわめきのなか照らされる汗ばんだわれの暗きからだが|マンホールのぞく闇夜の獣ありほうほうと声響かせている|大学受験おえし妹ほのじろく小さくなりて卵のごとし)

令060321  THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法  コロンビア大学ビジネススクール特別講義    (News Picks Publishing 令和5年刊)   Sheena Iyengar 著、櫻井祐子 訳
(10年にわたる多人数とのインタラクティブな探求の成果をすっきりとまとめた。実例の主旋律が散りばめられていて読みやすく納得感あり。|≪解決したい課題をはっきり意識し、なぜそれを解決したいのかを明確にする。その課題を解決することがなぜ自分にとって大切なのか、自分の考えた解決策がどういう仕組みで働くのかをしっかり理解する。≫ これが Think Bigger のエッセンスだ。「自分」というものの存在感が大きい。たしかに「自分」のない解決策の議論は不毛だ。だから、チームで作業はできてもチームで思考はムリ(だから brain storming は creative ならず、集団力学は個人の創造性を妨げる。グループシンク=集団浅慮)。「勘」とは、分析と直感と感情の融合。|≪さまよう心がひらめきを生み出すためには、新しいアイデアをつくる情報の断片が、記憶の本棚にたっぷり詰め込まれている必要がある≫。あらゆるイノヴェーションは戦略的模倣。新しい方法で既存要素を組み合わせてゆく。≪書くことは創造的な行為だ。書くことによって、思考を集中させ、整理し、組み立てることを強いられる。書き出すことで、実際に思考を生み出す≫。|失敗は最良の教師ではない。失敗そのものから学べるのは、うまくいかない方法だ。試行錯誤に頼ってはいけない。課題を解決するには、成功事例全体ではなく成功した戦術を組み合わせて模倣しよう。過度に新規性を求めない。|≪異なる価値観にさらされた人は創造性が高い≫。多様な視点と知識を持つメンバーをチームに集めると、一見相容れない戦術を組み合わせる知的作業が苦にならなくなる。真に新規かつ有用な組合せを生み出せる。|記憶は、私たちの経験をそのまま映し出す鏡ではなく、脳が再構成したイメージだ。学習とは、脳内にすでにあるパターンを認識し、拡張していくプロセスに近い。ひとは問題に直面すると、脳内に蓄積された知識の本棚から断片を引っ張り出して、記憶の小さな欠落を埋める。)

令060321  歌集 滑走路      (角川書店、平成29年刊)   萩原 (はぎはら) 慎一郎 著
(文学というより社会史資料として拝読。いかにも朝日新聞が飛びつきそうな次元。短歌の出来としてはナマ素材すぎて練れてない。ぼくの嫌う「~のだ」の文末がやたら多いのが耳障り。|きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい|クロールのように未来へ手を伸ばせ闇が僕らを追い越す前に|弾丸のように想いをぶっ飛ばすとにかく前へとにかく空へ|箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる|折畳傘取り出して「ほら翼広げてごらん」って花になる)

令060317  人類の深奥に秘められた記憶      (集英社、令和5年刊)   Mohamed Mbougar Sarr 著、野崎 歓 訳
(息苦しいほど華麗な重層構造。再読すれば、はたと納得する記述がそこここに隠れているにちがいなく、それこそが長篇小説の醍醐味だ。エピローグで、主人公・エリマンの南米流浪の謎が明かされたときのカタルシス;小説にはそういう謎解き要素が不可欠だな。≪決して平坦な人生じゃなかっただろうと思うけれど。でも最期はあっさりしていた。すっかり幸福になっていたわけでも、平安だったわけでもないだろうが、でもあっさりした最期だった。あの人のような人間にとって、それだけでも大したことだと思うんだよ。≫ 野崎歓さんの訳文のできばえもみごと。)

令060317  おやすみ短歌  三人がえらんで書いた安眠へさそってくれる百人一首     (実生 (みしょう) 社(京都)、令和5年刊)   枡野浩一・pha・佐藤文香 編著
(最年長は小島ゆかりさんだろうか。ぼくにとっては未知の歌人たちとの今後の出会いのための道しるべ。)

令060307  舟を編む      (光文社、平成23年刊)   三浦しをん 著
(もっと辞書オタク本かと想像していたが、さわやか青春本だった。「松本先生」が馬締主任におくった最後のことばに、ぐっときた。こういうさわやかな言葉を残してひとつの事業を去れたら、どんなにしあわせだろう。)

令060302  失われた時を求めて 花咲く乙女たちのかげにⅡ       (岩波文庫、平成24年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(画家エルスチールが魅力的。≪我慢してつき合える仲間がいないため、人と交わらない孤独な暮らしをしていたまでである。それを社交人士は気取りや礼儀知らずと言い、当局は危険分子と呼び、隣近所の人は常識はずれと言い、家族はわがままや傲慢と言っているにすぎない。≫≪エルスチールの努力は、ものごとを頭で理解するように示すのではなく、われわれの最初のヴィジョンがつくられる錯覚のままに提示するところにあった。≫≪もっとたくさん夢を見ること、夢の総体を自分のものにすることです。夢に苦しまないようにするには、自分のあらゆる夢をそっくり知ることが重要です。≫≪叡知というのは、ものごとの見方ですから。あなたが賞讃なさる人生は、まわりを支配する悪しきものや凡庸なものに影響されつつ、その人がまずはきわめて多種多様な出発点から試行錯誤を重ねてきた結果なんです。その闘争と勝利をあらわしているのが、あなたの憧れる人生であり態度なのです。≫|思い切りわたしの気をひきながら呼び鈴を鳴らしてキスを拒否するアルベルチーヌのシーンが劇的。ブロック親子に関連し、人間の欠点のヴァリエーションを滔滔と語りたてるあたりも、プルーストが為せば楽曲に早変わりする。)

令060301  人生のレシピ 疲れた心の癒し方       (NHK出版、令和5年刊)   五木寛之 談
(五木さんが提唱する3つの「想」:妄想・回想・思想 ― 想像力を膨らませ、楽しかった旅の記憶をたどり、生きるとは死ぬとはなどをじっくり掘り下げてみること。|好奇心の赴くまま旅をして、そこからぽろりと果実のように作品が生まれるかた。『さらばモスクワ愚連隊』。『蒼ざめた馬を見よ』所収の「夏の怖れ」はムンクの「叫び」が触発した作。『戒厳令の夜』は南米チリでの自身の価値観転換を語る。エッセー『地図のない旅』。|≪私の考える孤独とは、必ずしも一人でいることではなくて、みんなの中にいて自分一人の世界を失わないようにすること。「人の輪の中に身を置きつつ、独り」であること。≫)

令060223  歌集 雪麻呂      (短歌研究社、令和3年刊)   小島ゆかり 著
(認知症の義母の介護におわれる著者65歳の歌集。「旅鞄」と題した長歌・反歌は、二十年 (はたとせ) は短く長し、また、二十年 (はたとせ) は長く短し、と歌い、はぎすすきききやうのあきの風の朝われはめざめん鞄のなかに、と反歌がしめる。|椎の花にほへば夏の雨が来るだれかわからぬ人肌のあめ|白よりも欲深さうなそれゆゑに悔い深さうな紅 (くれなゐ) のばら|網棚の鞄そのままわれのみが降りて去りたり新幹線は 「どうして」とみづからに問ふみづからを夜の車窓に見つめつつ立つ|白眉 (しろまゆ) の垂眉 (たれまゆ) のよき翁顔たまゆら浮かび夜の雪くる 雪麻呂を待ちつつこよひあかあかとわれは椿の媼となりぬ|息子にもあなたのやうな嫁欲しと姑 (はは) 言ひ出づるさくらの日なり|これはこれはと箱をのぞけばてりてりとわれを見かへす富有柿たち おほき柿食べつつおもふ生涯につゆかかはらぬ哲学と株|腎不全の診断受けし古猫とこよひしつとり寄り添ひて寝る みづからの病知らねば古猫は怒りに怒るフード変はるを)

令060223  ヘブライ暦 小島ゆかり歌集      (短歌新聞社 現代女流短歌全集、平成8年刊)   小島ゆかり 著
(著者40歳の歌集。|おもひきり泣きたるのちはまさをなる空中を無人自転車が行く|気づかざる時間あるべしいつとなく数減りてゆく色鉛筆は|雪、淡くこころを濡らし純白の生まれざる死は永遠にあたらし|雪は神のやうにあまねく獣園の檻を一つ一つ濡らせり|運動会、雨でながれし子がひそかてるてる坊主をいぢめてをりぬ)

令060223  大規模言語モデルは新たな知性か  ChatGPT が変えた世界     (岩波科学ライブラリー、令和5年刊)   岡野原大輔 著
(編集者の罪か、著者の鈍か、看板倒れのやたら読みにくい本だった。紙幅の関係で仕方ないのかもしれないが、もっと例示を多くしないと腑に落ちる記述にはならない。|大規模言語モデルはプロンプトによって急速に内部挙動を変える。どういう人になりきるのか指示することが有効と。)

令060226  資本主義の中心で、資本主義を変える       (ニューズピックス、令和5年刊)   清水大吾 著
(良識の王道。著者は伊方町1975年生まれ。GSを6月に退社して9月に本書が出ているから、それはもう一気呵成の執筆だ。新時代の愛国者の書でもある。締めの章で Return on Earth(地球利益率):「どれだけの地球資源を使って利益を上げているのか」という概念を提示しているのに、しびれた。ここまでパラダイムが変われば、将来のあるべき姿から逆算して、いまやるべきことを是々非々で判断していくという非連続的な変化が求められると。わたしが嫌いな西郷隆盛だが、こんな言葉を残しているそうで、これにも心を動かされた:≪命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。此の仕末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業を成し得られぬ也。≫ GS ではシニアになるほど the first penguin であれというプレッシャーにさらされるという。みごとな文化。著者の言うように、企業が何を評価するかが、企業文化を形成するうえで決定的に重要なのだから。そして企業文化こそは、経営戦略の上位概念だ。)

令060224  源氏物語を反体制文学として読んでみる       (集英社新書、平成30年刊)   三田誠広 著
(じつに腑に落ちる本。「五倫の徳」の原理で成立した外戚という権威を支える不文律のシステム。いっぽう「院政」は菅原道真の発想だった。『源氏物語』は延喜~天暦の天皇親政の次第が舞台。反体制文学の伝統は『竹取物語』にはじまる。土御門殿の女房たちに「若紫」の巻の内容を語ったのが源流と著者は推測。空蝉は紫式部の分身と考えられている。そして一条天皇の心を惹きつけるために続篇が書かれ続ける。道長は若い頃は謙遜と合議をわきまえた人物だったらしい。有名な望月の歌は宴席での戯れ歌を不本意にも書き留められたという類のもの。)

令060217  人生のレシピ 新しい自分の見つけ方       (NHK出版、令和5年刊)   五木寛之 著
(鳥取砂丘は日本の風景にありがちな箱庭的ところと異なり、非日本的で開かれた世界体験ができると。大阪人の「儲かりまっか」への返しは「ぼちぼちでんなぁ」の前にむかしは「おかげさんで」をつけて他力の意味を込めていた。≪笑いには、湿った心を乾燥させる力があります。涙や感傷は、かさかさに乾ききった心を潤してくれます。「命の洗濯」といいますが、水がなければ洗濯できないですから≫)


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