文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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美術館・画廊メモ 28

平成26年5月8日~6月30日の美術日誌。日付の新しい順に記録してあります。 (画廊展はほぼ3件に1件の割合で、これは! というもののみ記録しました。)
各項冒頭の6桁の数字は日付です
(例: 220108 = 平成22年1月8日) 。 展覧会名にリンクが張ってあるものは、ぼくのブログ本篇の関連記事へ飛びます。
このひとつ前の 平成26年3月14日~5月7日の美術日誌 は、 美術館・画廊メモ 27 にあります。
このひとつ後の 平成26年7月1日~の美術日誌 は、 美術館・画廊メモ 29 にあります

260630  横尾美美 (みみ) 展 (~7/19) @ 南天子画廊  (京橋三丁目)
(サテン刺繍のような質感の絵。じっさい、絵にモノを貼り付けてもいるけどね。藝術新聞社から作品集を出版した記念の個展。横尾忠則さんの長女さまでした。どおりでファン層が華やかなわけだ。)

260630  背守り 子供の魔よけ展 (~8/23) @ LIXIL Gallery  (京橋三丁目)
(子供の単衣の背、襟のすぐ下の急所というべきところに、さまざまな意匠の背縫いを配して背守りとする衣文化。親の慈しみがくっきりと美しく結晶したかのよう。じぃんと伝わる。子育ちのよい家や長寿の年寄りから端切れをもらい集めてキルトのように縫い合わせた 「百徳」 というジャンルの着物もある。同時開催の、石内 都 (みやこ) 展 ―幼き衣へ― は、そういう着物を撮影した写真展だが、傍らの実物展示に負けてしまった。)

260630  心象風景 岸映子 (えいこ) 展 (~7/11) @ LIXIL Gallery  (京橋三丁目)
(DM 写真からモノクロ世界を予期していたが、パステルカラーの花崗岩のような文様を描いた陶の薄板を貼り合せた造形だった。いささか単調で、すぐ飽きてしまいそうだ。渋さを狙うならもっと渋く、そうでないなら色彩にもっと遊びがほしい。)

260628  日影 眩 (ひかげ・げん) 新作展 「ニューヨークの肖像」 (~6/28) @ Steps Gallery  (銀座四丁目)
(産経文化面の写真を見て CG っぽい作品を想像していたら、全然違った。ぼく好みのニューヨークを筆跡もなまなましく街角写実。もともと昭和40年代後半にイラストレーターとしてデビューした頃から、真下から見上げるアングルで人物を描きつづけたひとだった。昭和11年生まれで、平成16年に米国永住権を取得。)

260628  山下耕平展 (~6/28) @ ギャラリー58  (銀座四丁目)
(去年も見て、パワーのある顔絵だなぁと注目していたが、今年は怪異な顔立ちの絵にも配色や塗りの美しさが宿った。今年2月に絹谷幸二賞を受賞している。在廊のシャイな作家はことば少なだった。)

260628  漆 中島敦子展 (~7/4) @ 靖山画廊  (銀座五丁目)
(螺鈿の梟や蛙の飾り皿は、驚異的に細かい仕事の結晶で、じつに複雑な色の配合が楽しめる。椰子の実のような乾漆の匣 (こばこ) は、紐で作った呪術的な文様に飾られ、置く角度も幾通りにも変えられて表情豊か。ギャラリストの佐甲朋子さんにお会いできた。)

260627  世界報道写真展 おなじ時代、おなじ空の下に (~8/3) @ 東京都写真美術館 地下1階展示室
(事故・事件からスポーツまで、インパクトのある組み写真の数々。地味だが、ロシア・ウクライナの森の隠者らや、極寒のシベリアの永久凍土が溶けて地盤沈下しつつある町の写真も、印象に残った。)

260627  佐藤時啓 (ときひろ)  光 ― 呼吸 そこにいる、そこにいない Sato Tokihiro: Presence or Absence (~7/13) @ 東京都写真美術館 2階展示室
(藝術写真というジャンルを、からだを張って復活させたと申せましょう。)

260627 平成26年度東京都写真美術館コレクション展  スピリチュアル・ワールド  伊勢 熊野 富士 恐山 沖縄 インド 天界 秘湯 ― 収蔵品による聖地巡礼の旅  (~7/13) @ 東京都写真美術館 3階展示室
(鈴木理策 (りさく) さんの 「海と山のあいだ」 で、フツウの日本人の日常の聖域感を想起させることから出発する構成は、味なことをした。奈良原一高 (いっこう) さんの鶴見の禅寺での 「ジャパネスク・禅」 シリーズ。藤原新也さんの 「全東洋写真・インド」 シリーズ。横尾忠則さんの平成5年 「テクナメーション」 シリーズは、偏光板で画面に波動をつくる古典的な動く CG パネル作品。)

260626  ジャン・フォートリエ展 絵画なのか (~7/13) @ 東京ステーションギャラリー  (丸の内一丁目)
(天才画家の常として作風の激変を経て厚塗り抽象画に至る。Jean Fautrier のマチエールは、宝石のようにうつくしい。具象をつきつめたところから要素を抽き出すという本来的意味の抽象画の真ん真ん中を行くひとだ。)

260625  エクスリブリス・パラディーゾ ―蔵書票のセンシュアリズム― (~6/28) @ ヴァニラ画廊  (銀座八丁目)
(ぼくにとって既に神話的存在の Franz von Bayros が不遇の人生だったことを知る。杉本一文さんの Amaterasu に魅せられた。宙空に浮かびつつ身には勾玉だけを着けて色鮮やかな女神。林由紀子さんもいい。)

260625  ナタリー・ショウ展 Forgotten Heroines (~6/28) @ ヴァニラ画廊  (銀座八丁目)
(平成24年のヴァニラ画廊での個展を見て以来、気になる存在。アリスものの合成写真作品、いつか買いたい。ぼくの好みとしては、ゴテゴテ感がない作品が好きです。)

260625 シュルレアリスムの視点 No.6  「みずうみ~少女と毒薬」展 (~7/5) @ スパンアートギャラリー  (銀座二丁目)
(10人展。松島智里さんのコラージュ作品が丹念で、2作品ほど欲しくなった。根橋洋一さんの、くっきり眼の少女キャラは、心をちくちくつついてくる。色づかいも好きだ。)

260624  大谷郁代展 ―色と記憶― (~6/24) @ 西武池袋本店6階 アート・ギャラリー  (南池袋一丁目)
(去年ギャラリー和田での個展を見て、パステルだけで描かれたとは信じがたいほどの細密な写実に驚嘆した。今回も、まつ毛の1本まで白いパステルで光を与えている。「パステルは削れば尖らせられますから」 と言う作家は、一見フツウのひとである。)

260624  中村あや子展 (~6/28) @ アートスペース羅針盤  (京橋三丁目)
(江戸の賑わいは兎たちの天下。紺色と赤の2色でくっきり描き、駄菓子の味の初期浮世絵版画っぽさ。兎がオモ長すぎて、驢馬になっちゃったのが惜しいね。)

260624  金井訓志 (さとし) 展 (~7/9) @ Gallery Tsubaki  (京橋三丁目)
(このひとならではのポップのスタイルは完成度が高いが、過去画像を見ると、今のスタイルに落ち着いたのは ここ5年ほどだ。昭和26年生まれの作家は、実年齢より30年若い心意気で勝負している。)

260624  井澤由花子 BIRTH 2 (~7/9) @ Gallery Tsubaki/GT2  (京橋三丁目)
(1歳半になる2人目の幼な子を抱いて在廊する作家は、健康美にあふれたひとだ。2人の子供を得て、絵にも子供たちが登場した。子宮から流れ出す羊水をイメージしたという水彩画の大作が売れていた。)

260624  中ザワヒデキ Anti-Anti-Aliasing (~7/5) @ Gallery Cellar  (京橋三丁目)
(「擬幼」 ともいうべき、幼児画スタイルで制作する作家たちがある。「たんたん」 さんや光内亘利さんがそれだが、油画の筆づかいにプロの技があるから受け入れられる。昭和38年生まれの中ザワヒデキさんも擬幼作家なのだが、ひと昔前の初歩的 CG 手法なのでプロの技が出せない。方法論的に失敗というべきか。おもしろそうな小冊子 「近代美術史テキスト」 を500円で買った。)

260623  瓜南 (かなん) 直子展 ―面影ふたたび― (~7/1) @ 森田画廊  (銀座一丁目)
(森田画廊に初めて来た。主宰氏の温かく円いお人柄がじんわり伝わる、いい画廊。)

260623  瓜南直子追悼 ―ちいさな 「兎神忌」 展― (~6/28) @ 柴田悦子画廊  (銀座一丁目)
(麻のカンヴァスにジェッソで下地をつくり岩絵具で描かれたストーリー性のある絵は、枯淡の味わい。56歳で急逝した作家のブログは平成24年4月11日で止まっている。)

260622  SIMONDOLL 四谷シモン (~7/6) @ そごう美術館  (横浜市西区高島二丁目)
(むかし四谷シモンさんの人形を初めて見たのは、東京国立近代美術館の工藝館だった。宇野亞喜良さん、金子國義さんと一線に並ぶかた。ジャンル的にはエロティックアートに属するひとと思っていたが、本展で全体像を見て、四谷シモンを支えるのがスピリチュアルな幻想、宗教的な昇華だと知る。)

260620  菊地武彦展 天円地方 (~6/27) @ Reijinsha Gallery  (銀座六丁目)
(「天円地方」 は、天はまどか、地は方形の意。砂鉄をはじめ様々な素材を多用した絵づくりは想像喚起力を持つだけに、署名の入れ場所が目立ちすぎて興を削ぐのが惜しい。)

260620  蒼山日菜 (あおやま・ひな) レース切り絵展 (~7/1) @ 和光ホール本館6階  (銀座四丁目)
(レースのように繊細な線がはぐくむ蝶、妖精、花などのモチーフ。昭和45年生まれ、長年のフランス生活を経て、日本に戻ってきた。)

260620  Story Times Girls 2014 (~6/21) @ Gallery Q  (銀座一丁目)
(内藤亜澄、西山奈緒、内田亜樹、佐藤智美、和田裕美子。高レベルの5人展。髪の毛の編み物で石塑粘土の少女像を連ねた和田裕美子作品は、前回見損ねていたので今回見られてよかった。佐藤智美作品は、ぎゃらりぃ朋で前に見たものだ。内藤亜澄さんは蛍光を放たんばかりの幻想世界が、いい仕上がり。)

260620  中長 (なかちょう) 小西 2014 (~7/5) @ 中長小西  (銀座一丁目)
(鋭い剣のような深見陶治 (ふかみ・すえはる) さんの、鋭くも流麗な青磁のシリーズ。岡部嶺男の「古瀬戸窯変大鉢」の野生美。白髪一雄 「青漠」。奥の部屋に村上華岳の幽冥なる「天人散花圖」の掛け軸。うつくしい図版の図録をいただいた、感謝。)

260620  馬場敬一展 (~6/21) @ Galerie SOL  (銀座一丁目)
(段ボール素材に切りつけ、削ぎ、穿ち、焼く。これはこれで面白いジャンルだが、売り物としては保存性にやや不安あり。)

260620  星野留美展 (~6/22) @ Oギャラリー UP・S  (銀座一丁目)
(涼やかな暑中見舞い葉書の絵柄にしたくなる素朴な多色木版画。)

260620  古山浩一展 「積木の街」 (~6/22) @ Oギャラリー  (銀座一丁目)
(大作の「積木の街」シリーズは、小さく切り取ってディテールを楽しみたくなる。女性の顔が魅力的に描けるひとだ。筆記体の ほにゃらら文字は、ぼくにはやはりちょっと目障りなんだけど。)

260620  蟹江杏15周年作品展 Welcome to Anz's Home (~6/29) @ 東京国際フォーラムB棟1階 アートショップ内ギャラリー
(Anz's Home と題した通り、会場の一角がドライポイント版画の摺りと何十本ものサインペンによる着色作業ができるミニ工房になっていた。)

260619  ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通してみる世界 Go-Betweens: The World Seen through Children (~8/31) @ 森美術館
(近藤聡乃 (あきの) さんのアニメ「きやきや」は、前に国立新美術館とミヅマアートギャラリーでも見たことがあるけれど、今回の映写がいちばんきれいなのだそうで、気をいれて観入った。山本高之 (たかゆき) さん企画の「どんなじごくへいくのかな、東京」がおもしろい。子供たちがそれぞれに構想した、死には至らぬ苦しみかたのインスタレーションと語りのビデオ。Won Seoung Won さんの「7歳の私」シリーズは、回想のなかの風景をコラージュ写真で表現して、ありそうでありえない不思議空間をつくった。)

260619  こども展  名画にみるこどもと画家の絆  (~6/29) @ 森アーツセンターギャラリー
(Georges Arditi を知った。鮮烈な色づかいが魅力的。画集を見てみたい。Edouard Vuillard の色づかいも好きだ。こちらは木の粉をまぶしたような くすみ具合。いっぽう Maurice Denis は、作風からいって子供の絵もいいのを描きそうだが、まさしく明るくほのぼの。Pablo Picasso は3人の女性と4人の子供をもうけ、そのうちの Claude や Paloma を描いた絵や彼らのための切り抜きおもちゃは、意外や意外の品々だ。展覧の掉尾は藤田嗣治の “48 richesses de la France” と “Age mecanique” だ。48枚のうち、牡蠣の図が Huitres とあるべきところ、Hiutres と綴られている。嗣治の筆の誤り。)

260618  不可思議な遊戯 2014 (~6/21) @ スパンアートギャラリー  (銀座二丁目)
(8人展。須川まきこさんの鉛筆画の人形少女が銀座進出ですね。夢島スイさんの妖美油画、いつか手に入れたい。)

260614  蟹江杏のアリス ―アリスボックス原画展― (~6/29) @ ポスターハリスギャラリー  (道玄坂二丁目)
(描画も色づかいも大好きなのだけど、作品の下地となるドライポイント版画でわざと黒いインキ汚れをつけるのが度が過ぎて、単に「きたない絵」になってしまった作品が多く、まことにもったいない。以前ご本人にそれを言ったら心外そうだった。インキ汚れを彼女は自らのアイデンティティの一部と見なしているようだ。しかし、ものには程度というものがあってね、こりゃワサビをまぶして緑くなった寿司だね。)

260614  佐藤美術館コレクション展  2014 日本画・油画・版画  (~6/15) @ 佐藤美術館  (大京町)
(全27点、見ごたえがあった。うち12点は山本冬彦さんが寄託した作品で、なかでも龍口経太さんの 「操り人間」 は黒いコルセットとストッキングでうつぶせになった女性を横からとらえて、長い乱れ髪がマリオネットの操り糸のように見える、欲しくなる作品。河内成幸さん 「翔べ北斎II」 は、神奈川沖浪裏の大波を赤い鶏冠の鶏が次々に跳び越えてゆくコミカルな二曲屏風。美術館所蔵品の中では藤原由葵さん “Cloaca” に注目した。Cloaca はラテン語の 「食いしん坊の胃」 ないし 「排出腔」 の意味だろう。)

260614  Kahal art competition & exhibition 2014 (~6/15) @ The Artcomplex Center of Tokyo, B1F  (大京町)
(日本とバングラデシュの若手アーティストの交流展。Kahal art group の Kahal は Keep art, history and life の略という。バングラデシュの作家たちのレベルが高い。客観的にみて日本勢が負けている。昭和63年生まれ、東洋美術学校卒の小林宏至 (ひろし) さんと、平成3年生まれ、朝鮮大学校 院在籍の李晶玉さんの丹念な幻想写実に注目した。受付で坐っていた根石佳奈さんの 方位磁石を握った2歳児の絵も、点描法を上手に使っている。泰明画廊で個展を見た柿沼宏樹さんからのご案内、深謝。)

260614  村中亜紀奈 展 (~6/15) @ The Artcomplex Center of Tokyo, Act 3  (大京町)
(動物のおなかのなかに別の宇宙がある。こどもたちの頭脳から広がる別世界。心優しさがにじみ出るが、けっして甘ったるくない、楽しみな作家。昭和61年生まれ、大阪成蹊大 藝術卒。)

260612 Bunkamura 25周年記念  蜷川有紀 絵画展 薔薇の旅人 (~6/15) @ Bunkamura Gallery  (道玄坂二丁目)
(蜷川幸雄さんを母方の叔父にもつ 女優。和紙に岩絵具とインクで、描く女性はときにシャガールふう。青紫から赤紫にかけて、彼女の色彩だ。新作 「薔薇のガレー船」 380万円が売れていた。作家本人もおられて、三潴末雄さんと話し込んでいた。)

260611  渺渺展 (~6/15) @ 東京銀座画廊・美術館8階会場  (銀座二丁目)
(34名+招待作家・松谷千夏子さん、レベルの高い日本画グループ展。松谷さんの 「水 ― Surface」 は、後ろ手にもたれる女性を俯瞰し、口もとが かわいい。
清水 航さんが 「羅針盤でお会いしました」 と声をかけてくれた。色彩豊かな水辺は、水面のたゆたいの陰影が 箔を焼いて奥行き感ある仕上がり。
早川 剛 (ごう) さんの 「大地創造」、惑星誕生を見るような迫力あり。ファイルを見ると、女性の顔も魅力的に描けるひとだ。昭和51年生まれ。
岩田壮平さんの 「雪月花時最憶君」 は花の接写写真を大画面に展開したような、華やぎのある迫力だ。
桑原理早 (りさ) さんのモノクロ人物の線もいい。多摩美日本画 院修了。)


260611  森田晴樹展 (~6/18) @ 柴田悦子画廊  (銀座一丁目)
(墨と金泥で描きだされる花卉と螢。闇に光り浮かぶ花びらのオーラを薄墨が包み込み、鬼気迫る植物画である。平240417 にも本画廊で拝見している。昭和27年島根県生まれ、京都市立藝大日本画卒。)

260606 東京宝塚劇場開場80周年記念特別展  日比谷に咲いたタカラヅカの華 (~6/22) @ 日比谷図書文化館 第1展示室  (日比谷公園)
(やや看板倒れの感もあるが、戦前のパンフレットやチケットなど、お宝もいろいろ。調べものもあり、日比谷図書館改装後、初めて来た。ときどき利用しよう。)

260606 特別展  超絶技巧! 明治工藝の粋 (~7/13) @ 三井記念美術館  (日本橋室町二丁目)
(音声ガイドに英語版も用意されていたので利用してみた。日頃は美術館に来ぬ層が、見世物として本展を見に来ているためか、お喋りがうるさい。
安藤緑山の牙彫細工は日曜美術館でも紹介されていたが、それに劣らず感嘆したのが細かい七宝細工の色彩美。有線七宝と無線七宝を交えて遠近感を出した濤川惣助 「藤図花瓶」。漆工の白山松哉 「渦文蒔絵香合」 は、無地と思いきや見る角度を変えると渦が湧く。)


260605  描かれたチャイナドレス ― 藤島武二から梅原龍三郎まで (~7/21) @ ブリヂストン美術館  (京橋一丁目)
(貝塚 健さんの名キュレーションによる、29点の中国服の女性たち。児島虎次郎 「花卓の少女」 が、モダンなかわいさに一抹の憂い、大好きだ。いっぽう 「姑娘 (クーニャン) とチューリップ」 は、梅原龍三郎の最高作ではないか、ふにゃふにゃしたデフォルメがなくキリリとした顔がいい。藤田嗣治 「力士と病児」 は、昭和9年秋の北京、魁偉な大道藝人と母子。しかし、ぼく一番の気に入りは久米民十郎 (たみじゅうろう) の 「支那の踊り」、ヴォーティシズム (渦巻派) のデザイン性が開花している。
常設展は、趙無極 Zao Wou-Ki の 07.06.85 (ぼくの好きな「惑星ソラリス」の風景) に加え、緑で描かれた山水抽象 「風景2004」 が。)


260604  見晴らす展  日本のけしきを彫る人 田中圭介  (~6/22) @ Pola Museum Annex  (銀座一丁目)
(もろに角材の形を残した素の木材からあふれ出るごとくに、山林が彫り紡がれリアルな彩色の鳥瞰浮彫りとなる。昭和51年生まれ、東京藝大彫刻 院修了。)

260604  イメージの力  ― 国立民族学博物館コレクションにさぐる  (~6/9) @ 国立新美術館 企画展示室2E
(仮面や祭祀道具は想定内として、度胆を抜かれたのはガーナの工房で現在進行形の工藝として作られた飛行機やビール瓶や魚介の形の棺桶。これで一気に展示物への見方が変わった。ここにあるものの多くは、刻々と再制作される生きたモノとしての民族オブジェなのである。ブータンの 「携帯用佛龕 (ぶっかん) 」 は、ミニ佛陀を機能的に次々と繰り出せる仕掛けで、美大生にこれをヒントに工作してもらいたくなった。)

260604  Emilie Jouvet/Goodyn GreenLeland Bobbe 写真展 (~6/14) @ ヴァニラ画廊 展示室B  (銀座八丁目)
(レスビアンの写真家が、女性モデルと恋人気分で1日を過ごしながら撮ったカジュアルだけど濃密なスナップなど。)

260604  Leland Bobbe 写真展 (~6/14) @ ヴァニラ画廊 展示室A  (銀座八丁目)
(「ドラァグ」 とは drag 異性装。ドラッグ drug とカタカナ書きを区別してるんだね。で、有名ドラァグクィーンに顔半分のみドラァグメークを施した Half-Drag シリーズは、顔の向かって左半分は女性、右半分は髭を残した男ヅラというわけ。)

260603  小山田二郎 生誕100年回顧II  油彩大作 1950s - 1960s  鶴岡政男 没後35年回顧  1940s - 1970s  (~6/21) @ Fuma Contemporary Tokyo  (中央区入船一丁目)
(「アヴァンギャルドのクラシック」 と言うと形容矛盾だが、頭に浮かんだのはそんなことばだ。絵から、見る者の血管をつかむ手が伸びてくる。鶴岡政男、明治40年~昭和54年。小山田二郎、大正3年~平成3年。)

260603  枝史織|ゆきつもどりつ、夢現 (ユメウツツ)  (~6/21) @ Gallery Suchi  (日本橋茅場町二丁目)
(紺~グレーの広大世界に何かが起きている。そこにいる、着衣を剥ぎ取った長身のひとは、性別も読み取れないほどだ。たぶん女性だろう。大作の並ぶ第1室から第2室に移って、あっと驚く。枝史織さんが絵の制作の前に作るジオラマが進化増殖して、部屋中を埋めてしまった。この場かぎりのアートだけれど、美術館展示でもぜひトライしてほしい。)

260602  羽多野加与 (ごめん、また遊ぼな☆) (~6/8) @ space 2*3  (日本橋本町一丁目)
(イラストを抜け出た、いい線をかく。平成2年生まれ。過去ファイルを見ると分かるが、昨年 京都造形藝大情報デザインを卒業してから急速に絵のレベルが上がっている。Mitsui Art の光井 聡さんもおもしろい才能を発掘したものだ。space 2*3 には初訪問だったので、挨拶の意味も込めて小品 「アイロニー」 (nau mil) 購入。)

260602  構想計画所展 Conceptual Architect (~6/7) @ 養清堂画廊  (銀座五丁目)
(構想計画所とは小林耕二郎、酒井一有、前野智彦、三田健志の4人のグループ。無人島の砂浜をモチーフに、絵・写真と手書き文で物語る。)

260602  ダビデ・ガルデ個展 David Garde めぐりあい (~6/7) @ Niche Gallery  (銀座三丁目)
(脈絡のない夢のなかの群像のように見えるが、個々のモノや動作は何かを象徴しているのに違いないと、西洋藝術なりの読み解き法があるのだろうなと思わせる。)

260531  筒井伸輔 (しんすけ) 展 (~5/31) @ Mizuma Art Gallery  (市谷田町)
(父・筒井康隆さんの小説『聖痕』の平成24年朝日新聞連載のための葉書大の挿絵展。非具象。康隆さん署名入り『聖痕』も購入。)

260530  MY duo 2014 井上雅之 高木彩 (~6/2) @ Shonandai MY Gallery  (六本木七丁目)
(高木彩作品は木綿地にアクリル絵具でステイニングした、にじみ具合がたまらなく好きなのだが、今回は黄緑やビリジアンの色づかいが安っぽく見えて、いただけなかった。彼女の紺や赤紫がぼくは大好きなのだけど。)

260527 没後7年  高塚省吾展 (~5/28) @ 四季彩舎  (京橋二丁目)
(平成19年5月28日に逝去した作家を偲ぶ。)

260526  門倉直子 ―いつかあなたになる― (~6/7) @ Gallery Tsubaki/GT2  (京橋三丁目)
(新作の童女たちは、どことなく近藤聡乃 (あきの) さんのキャラに通じるところも。ドローイングも含め、お買い得価格の小品が多く、カネがあれば数点買っていたところだが、じっと我慢の子であった。)

260526  堀江 栞 「生・静」 “Sei Sei”  ―心境と言葉の差分表現―  (~6/4) @ 加島美術  (京橋三丁目)
(古美術の老舗で突然にも、平成4年生まれ多摩美日本画卒の女性の個展である。しかも動物に鬱屈の想いを託した現代アートだ。なぜに? 展示作品を見たら、大学1年生のときの作品が既にして高い完成度で、才能に驚いた。ところが年を追うごとに作品が小ぶりになっている。入口の外の椅子に坐っている子がいる。待ち合わせかなと思ったら、何と堀江栞さんその人だった。シックハウス症候群に苦しんでいて、油画の画材が天敵なのだそうだ。好きな絵を描きに美大に行っても油画はおろか日本画教室でも辛く、個展を開こうにも普通の画廊では油画の薬剤が壁に残っていて不可。探した末に、古美術の老舗が個展開催を OK してくれたという。加島美術さんの心意気や良し。堀江さんも、しっかりね!)

260525  公募団体ベストセレクション 美術 2014 (~5/27) @ 東京都美術館 公募展示室1・2、ギャラリーA・B・C
(言ってみれば、スーパー日展である。151名、163点。版画の12名のみ1人で2点の出展。ポスターに使われた犬追う兎迷路は、榎本香菜子さん「MAZE ―私も、うさぎ―」。山田彩加さんのリトグラフ 「生命の変容と融合 ―0への回帰―」 2連作に注目。女性を取り巻く象徴にみちたモチーフを、ごてごて感なしにまとめている。浜西勝則さんのメゾチント「着物」連作は、渋い色の彩色で仕上げて、和服のたたずまいを絶妙に表現した。)

260523  非日常からの呼び声  平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品  (~6/15) @ 国立西洋美術館 企画展示室
(常設展で見たことのある作品が多いはずなのだが、じつに新鮮な32点だった。キュレーションによって所蔵作品がこんなにも輝いて見えるものとは。カロ展を見て心が揉みほぐされたところで、カロ作品に共振する作品群と出会う。好企画!)

260523  ジャック・カロ  リアリズムと奇想の劇場  Jacques Callot: Theater of Realism and Fantasy (~6/15) @ 国立西洋美術館 企画展示室
(収蔵作品だけでもって、これだけレベルの高い回顧展をやれるとは。西洋美術館の底力を感じた。カロの43年の生涯の1,400点余の銅版画のうち、当美術館は400点を所蔵、そのうち220点で今回の展覧会を構成した。ポスターに使われた 「2人のザンニ」 は意外にも 93 x 140 mm の葉書サイズだった。カロの奇想の数々は、後世 「アリス」 シリーズの挿絵を描いたJohn Tenniel にも継承されたというべきか。)

260523 開館25周年記念  魅惑のニッポン木版画 (~5/25) @ 横浜美術館
(幕末から現代まで230点余。浮世絵よりもまず生活に密着した引札や双六から始まる。手摺千代紙を見て、母を思い出した。子供の頃、千代紙を集めていたと言っていたなぁ。岡田三郎助 「大経師昔暦のおさん」、さすがモダンな美人である。吉田博の 「タジマハル」 シリーズは、江戸の蘭学者の絵の趣。恩地孝四郎 「ダイビング」 の構図が好き。齋藤清の 「凝視」 の猫、こう来たか! ぼくの一押しは吉田穂高の亜鉛凸版+多色木版の「町外れの神話」など。おしゃれ!
常設展は、新収蔵として奈良美智 「春少女」、カンヴァスにアクリルで適度なにじみ。平成24年作品。)


260521  西村一夫展 ―内なる風景― (~5/24) @ 養清堂画廊  (銀座五丁目)
(2年前の個展で、色見本のような、アップリケのような作品のメッセージを掴みかねつつ、色彩に恋をした作家に違いないと思った。今回、過去ファイルを見て、人物画の究極のデフォルメであったことを知り、ひとつ謎が解けた気分。昭和22年生まれ、養清堂で20年目10回目の個展。)

260520  ホシノ リコ人形 (ヒトガタ) 展 ―月の舟― (~5/25) @ アモーレ銀座ギャラリー515  (銀座一丁目)
(美しくもはかない、絶品の少女造形が3点まじっていました。)

260520  高木優子個展 ―Secret Party― (~5/25) @ 万画廊  (銀座一丁目)
(万画廊さんとの最初の出会いが数年前、青山のスパイラルの高木優子展示ブースだった。)

260519  ジャパン・アヴァンギャルド ―アングラ演劇傑作ポスター展― (~5/19) @ ポスターハリスギャラリー  (道玄坂二丁目)
(寺山修司演劇のポスターや台本、ちらしなど。当時はニッチなところを切り込んだジャンルだったのかもしれないが、今日これらを見るとメジャーでありクラシックである。)

260517 日本・トルコ国交樹立90周年  トルコ展 (~8/10) @ 東洋文庫ミュージアム  (本駒込二丁目)
(東洋文庫へ初めて行った。チュルク系諸言語の文字の数々を見つつ、自分がこれの研究に没頭できるかと自問してみたら、否と出た。ぼくは、現代と向き合っていたいのだなと分かった。)

260515 星山耕太郎さんに依頼した注文画 「少女曼荼羅」 を購入
(かわいい少女の曼荼羅を所望したら、手塚治虫キャラになっていてびっくり。多人数の女の子をどう構成するか苦労した由で、3度描き直したと。少女たちの歌声が渦を巻いている。ありがたく購入 (kvindek mil) 。ペルー料理の Tia Susana で会食した。)

260515  八太栄里 初個展 昨日の光 (~5/18) @ The Artcomplex Center of Tokyo, Act 4  (大京町)
(描かれた人物の、力を抜いた表情や、色づかいは好き。絵全体の構成を改善すると、ぐっとよくなるはず。)

260515  美島菊名 “The Stranger”: Total Collection 2007-2014 (~5/17) @ アート★アイガ  (八丁堀二丁目)
(見覚えのあるプリントと新作と。モデルさんの肌の色が美しい。綿密な色調整を重ねたデジタル銀塩出力(ラムダプリント)のクオリティの高さ。)

260515  大矢真嗣 (しんじ) 日本画展 (~5/17) @ 靖山画廊  (銀座五丁目)
(祖父の代の大矢黄鶴氏に始まる日本画3代の大矢一族。真嗣さんは昭和47年生まれで金魚や熱帯魚を瑞々しく描く。靖山画廊にあるまじき不行き届きで、絵の掛け位置が低すぎ。)

260515  村松和明展 『不可思議な梢』 ― もう一人のあなたとの出会い (~5/22) @ 永井画廊  (銀座四丁目)
(学藝員の職に就き、実作から離れていることを残念がったところ、作品を作ってみたらと後押しされたのが発端とか。様々なジャンルの作品に挑戦しているが、写実デッサンがない。)

260514  現代根付展  手のひらの小宇宙  (~5/20) @ 日本橋高島屋6階 美術工藝サロン
(十数名の人たちが畏まって待機するので、どこの美術界の大物が来るのかしらと思ったら、ほどなく高円宮妃殿下久子さまがお見えになった。一点一点、ゆっくりとご覧になっていた。以前、東京国立博物館で高円宮憲仁親王殿下の根付コレクションを拝見したことがある。)

260514  設楽知昭 (したら・ともあき) 個展 「光・人間・顔料絵画」 (~6/7) @ 不忍画廊  (日本橋三丁目)
(DM に使われた 「露光」 に描かれた白い人々の群れがピンと来なかったのだが、最新作の 「水仙の咲く人形劇場」 を見て設楽ワールドに入り込むカギをもらった。画廊の荒井裕史さんが 「もう一度ご覧になると、また別の世界が見えてくるでしょう。名古屋の美術界で著名な作家です」 と。昭和30年生まれ、愛知県立藝大 院修了、現在は同大教授。)

260514  鶴川勝一 泥ノ空 (~5/17) @ Gallery b.Tokyo  (京橋三丁目)
(インカ帝国人のデザイナーが蘇生して、染色技術を学んで幻夢をとことん染め描きしたら、こんなふう。鶴川作品を初めて見たのは Gallery フォレストだった。一段とパワーアップした。)

260514  横田 尚 (なお) 展 (~5/24) @ Gallery Tsubaki  (京橋三丁目)
(さわやか度アップ。門倉直子さんと同じく、横田尚さんも彼女だけの女性キャラを育てている。あの子はいま、どうしてるかなぁと近況を見に来る気分だね。)

260514  真条彩華 「御伽話」 (~5/24) @ Gallery Tsubaki/GT2  (京橋三丁目)
(応援している作家。試行錯誤感が消えて、絵に安定が感じられる。唇の辺り、襞めいた皺を描きすぎでは? と言ったら、作家自身も薄々感じていたそうで、考えてみますと。)

260514  緑川俊一回顧展 Part 1 (~5/24) @ ギャラリー川船  (京橋三丁目)
(昭和22年生まれの作家の昭和45~50年頃の木版画と油画。Part 3 までやるらしい。)

260513 椿会展2014  初心 (~5/25) @ 資生堂ギャラリー  (銀座八丁目)
(5人展。赤瀬川原平さんのクラシックカメラの鉛筆画は『アサヒカメラ』誌上に平成8~25年に連載されたもので、これが壁面を埋め尽くすと壮観。人間のデザインの多様な発想力に改めて驚かされる材料でもある。畠山直哉さんの写真は、廃棄された送電鉄塔や、水力発電所など、人工物に表情を読み取らせる。)

260513  王培 Wang Pei 新作展 ―千々結― (~5/22) @ ナカジマアート  (銀座五丁目)
(北京で装飾絵画を学んだ後、来日して16年。広島市立大で博士号を取得し、最近 日本人の漆藝家と結婚なさったとうかがう。現在も広島在住で愛知県立藝大非常勤講師。人物の描線は中国の徹底写実の伝統が感じられ、そこに加わる岩絵具の新鮮な色づかい。絵もさることながら、作家本人も美しいひとである。以前、日本橋三越の個展にいらっしゃったが、ご挨拶しそびれた。)

260510  ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション (~5/25) @ Bunkamura ザ・ミュージアム
(看板作品の Piero del Pollaiolo の 「貴婦人の肖像」 (1470年ごろ) はさすがに美しいが、感情がしっとりと絵に溢れるのは Palma il Vecchio の通称 La Cortigiana であり Giuseppe Molteni の Rebecca だ。Griselda の物語の画家による Artemisia は藤田嗣治の描く女性のようだ。音声ガイドの大島優子さんの声、かわいかったけど滑舌がちょっとね。ショップで売っていた芦屋の焼きティラミスがおいしい。)

260510 リバリューアート  『古布コラージュ展』 by 住川信子 (~5/11) @ 代官山ヒルサイドテラス E棟ロビー  (猿楽町)
(作家が熱心に説明してくれる。骨董市などの古布の立体貼絵。着脱可の椿の大輪と鄙びた地の絵の作品が気に入った。)

260510  下田真由美 color symphony (~5/21) @ Gallery Speak For  (猿楽町)
(多色彩輪郭画はネオンサインのようだが、地の白を薄っすらと塗ってある。 Music Magazine 誌の扉絵の原画シリーズ。昭和59年生まれ、女子美絵画卒。応援団しようかと思ったけど、ふところが寂しくて御免!)

260509  栄西 (ようさい) と建仁寺 特別展 (~5/18) @ 東京国立博物館 平成館
(展示前半は文書資料や肖像作品が多く、後から見ようと さらりと流して後半の絵画展示に躍り込んだら、点数が多くて1時間があっという間に過ぎた。襖絵の多くが保存のために巨大な掛軸に仕立て直されている。海北友松 (かいほうゆうしょう) の 「雲龍図」 全8幅のうち4幅を見る。元朝と本邦南北朝の 「十六羅漢図」 各3幅が実におもしろい。羅漢さんは、いいね。長谷川等伯の「松に童子図襖」 4面、六曲一双 「竹林七賢図屏風」。長沢芦雪の 「牧童吹笛図」 がなんとも軽やか。伊藤若冲 「雪梅雄鶏図」 の色遣いにシビレる。西紀1643年に朝鮮国からわが国の対馬の外交窓口に宛てた朝鮮国書契が興味深い。「珍皇寺参詣曼荼羅」 の寺院群パノラマと 「熊野観心十界曼荼羅」 の地獄・極楽図。極めつけの俵屋宗達 「風神雷神図屏風」 は、色が思いの外しっとりとして、黒雲のむらむらとした描きが真髄だ。)

260509 日本の美・発見IX  日本絵画の魅惑 (後期 ~6/8) @ 出光美術館  (丸の内三丁目)
(「十王地獄図」 の衆合地獄では四肢をぴんと吊られた女が頭から真っ二つに鋸挽き。土佐光信筆探幽斎とある重文の 「四季花木図屏風」 は、道具立ては揃いつつも、意匠が原初的試行錯誤に満ちている。歌川豊国の 「円窓美人図」 は美意識に西洋デカダンスを感じる。浦上玉堂 「雙峯挿雲図」 の雄大、渡辺崋山 「鸕鷀捉魚図」 の鵜と鮎の気合いぶり。長谷川等伯 「波濤図屏風」 は角ばった岩と流麗な波の対比のうちに金泥の飛沫が美しい。)

260508  萌木ひろみ 『けものがれ』 (~5/11) @ The Artcomplex Center of Tokyo, Act1  (大京町)
(丹伸巨さんキュレーションによる、東京初個展。じつは器用な作家でもあるが、あえて原点を模索する痛々しさが流れる。折鶴をモチーフにした 「紙一重は裏表」 2連作がよい。)

260508 The Front in Tokyo (~5/17) @ マキイマサルファインアーツ  (浅草橋一丁目) + Art Lab Tokyo  (浅草橋四丁目)
(米国 New Orleans の画廊 The Front 所属のアーティスト展。点数が少なすぎて、散発的な企画になってしまった。作家のメッセージを読み解くカギを、いちいち解説してもらわないと素通りしてしまいそうになる。)


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