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103(hundred three) 第1章
「お帰りなさいませ。マスター」
非常に淡白な物言いでこの家のメイドであるファイが出迎える。
「あぁ、ただいま。すぐに風呂に入る。使徒の臭いというのはいつになっても慣れん」
一息ついたハーレイは黒のコートをファイに渡し、先ほどの戦闘での疲れを癒すため、そのままバスルームに向かう。そして服を脱ぎ、そのまま風呂に浸かった。
ハーレイの家は洋式の豪邸であるが、風呂だけはハーレイがこの家の主となったときに和風に改装させたものだ。当然ハーレイのお気に入りである。
湯船に浸かり、全身をほぐす。日常生活を送っていても体というものはどうしても硬くなってしまう。こうして湯船に浸かるということはハーレイにとって至高の癒しであり喜びである。しかし、そのままずっとその空間に居てしまうとのぼせてしまう。何事もほどほどがよいのである。
そのように考えながらハーレイは風呂場から出て、浴衣に着替える。
「マスター。いつものです」
すたすたと歩いてきたファイはお盆の上に一本のコーヒー牛乳の入ったビンを乗せていた。ハーレイはそのコーヒー牛乳を一気に飲み干し、
「やはり風呂のあとはこれだな」
と言い空になったビンをファイに渡した。
「良い飲みっぷりです。マスター」
賛美かどうかの真意は不明だが、ファイがまた淡白な物言いでハーレイに言った。続けてファイが暴走使徒つまり先ほどの異形のモノについての報告書をハーレイに渡した。
「今月に入り、使徒の暴走事件は前月よりも十件も増えています。このままではこのマースの均衡は確実に崩れてしまいます。そのため対暴走使徒組織ARPOへの駆除要請と被害報告は日に日に増えています」
マースというのはこの世界の名称である。この世界マースは機械文明と魔術文明が同等に発展しており、機械文明が突出しているわけでもなく、魔術文明が突出しているわけでもない。適度なバランスが保たれており、どちらかが突出してしまった状態となると非常にバランスの悪い世界になってしまうというデリケートな世界である。
そして暴走使徒とは、人が機械と己の魔力を使用し別の次元から生き物をマースに召喚した使徒が何らかの影響を受け暴走してしまい、結果として建築物や機械を壊したり、人を殺めたりする被害を出す。何らかの影響というのは現段階で分かっているもので、多量の負の感情を含んだ人による召喚、召喚生物への人工的関与、また違法研究者による召喚を行わない人工的生物(これは通称ホムンクルスやキメラと呼ばれている)が挙げられる。
続いて対暴走使徒組織ARPO とはAnti Reckless Purpose for spending Organizationの略であり、暴走使徒の駆除と発生の原因究明を主な活動としている。暴走使徒が発生し、それをそのままにして置く訳にはいかないと具体的成果のある対応策をしない帝都の政府や警察、軍隊に見限りをつけ、民間が独自に立ち上げた民間武装組織である。
この組織の基盤を作り上げ、資金面での援助をし続けた人物はハーレイの祖父エレタート・スペイルである。彼は組織の四大幹部のひとりとなった。四大幹部とは組織の基盤、資金面の援助、そして強さによって決められた四人である。
この四大幹部は、ハーレイの家であるエレタート家、そしてアークレイ家、ベルクリア家、橘家それぞれの領主がなることになっている。そしてそれぞれの家で私兵団を作り、任務に当たるという形式をとっている。自動的に金持ちが上に立つという構造はその辺の企業や集団と変わらない。
「打開策として私たちも大規模な私兵団を作るというのはいかがでしょうか。私兵団の団名もすでに考えてあります」
このエレタート家ではエレタート家の分家である三つの家の領主を私兵としている。経済上の都合がつかないわけではなく、単にエレタート・ハーレイの趣向である。
「私兵団か。しかし、即戦力になるものならまだしも、何も知らない民間人を一から教育するのはとても面倒だ。それにせっかく教育した私兵たちが死んでしまっては意味が無いように思える。前から言っているだろう」
諭すように述べる。
「しかし、他の家特にベルクリア家では兵数が約数千の私兵団を組織しているとの事。そうなれば私たちも私兵団その名もハーレイ軍団を組織いたしましょう」
書斎に着き自分の椅子に座る。その向かいでグッとこぶしを握りながら力説するファイ。それを見ながらため息をひとつ。
「……第一そんな単純な名前の武装組織は御免だ。それに真似事で武装組織を構成しても安定しない。俺には人の上に立ち指揮するのはどうも苦手だ。悔しいがベルクリア家のセレナードはその点に関してはカリスマ性を持ってやがるからな」
少しムスッとしながらファイの入れたコーヒーを一口飲んだ。
「そうでした。そういえば今日の十八時頃にセレナード様がおいでになるとの事でした」
ファイは思い出したかのようにポンと手をたたきながら淡白に言った。
「十七時に言うことかそれは……。まぁ良い、セレナードが着たらここに通せ」
若干呆れながらコーヒーを飲み干すと空になったカップをファイに手渡した。かしこまりましたという様にファイが礼をすると、ファイは書斎から退出した。
「後一時間か」
セレナードと会うのは実に二年ぶりである。二年前、各家の領主全員である任務に当たっていたところ、謎の閃光によってすべての領主つまりハーレイやセレナード達の両親が行方不明になるという大惨事の後の幹部への就任式以来である。
あの時、代々受け継がれてきたエレタート家式召喚転送魔術の承認キーであるペンダントだけがハーレイの手元に戻ってきた時のことを思い出した。
父も母ももう居ない。有るのは莫大な財産とARPOの幹部という地位、ファイと家そしてペンダントと使命だけであるということを受け入れざるおえなくなった。そのことを思い出し、少し感傷に浸っているとすでに一時間が過ぎていた。
「おいでになりました」
ファイがドア越しに話しかける。そしてハーレイが入れという間もなく
「やぁ久しぶりだねハーレイ」
と小包を出しながら話しかけた。
「これはうちの名産品の小龍包さ。小包だけに小龍包。味もギャグも抜群だと思うんだけど、どうかな?」
チャイナドレスの上半分と洋物のズボンを組み合わせたような服装にひょうひょうとした体と物言いをするこの長髪の男が四大幹部の一人ベルクリア=セレナードその人である。
「そのつまらんギャグとヘラヘラした所は相変わらずだなセレン」
セレンというのは彼を知るものたちが頻繁に使用するセレナードの愛称である。
小包を受け取りファイに渡すと、書斎にあるソファに両人が腰掛けた。
「ただ単に小龍包を渡しに来たわけじゃないだろう?」
ハーレイは腕を組みながらソファにもたれた。
「ん、ちょっと野暮用でね。まぁ、せっかく都市エーレに来たし君に会った後観光でもしようかと思っていたんだけど、どうやらそうも行かなくなってしまってね」
少し残念そうに彼の金髪を揺らす。
「君の領土のことだから分かっているかとは思うけど、四番地区の研究所、確実に黒だよ」
ハーレイが領主となっている首都エーレは五つのブロックに別れており、それぞれの地区に技術開発や魔術の向上をはかるための研究所が設けてある。これは、ぞれぞれの地区ごとで競い合うように発展するようにと組んだ町のシステムである。
前回の暴走使徒発生場所も四番地区であり、ハーレイは明日にでも四番地区研究所の潜入捜査と暴走使徒発生の首謀者と暴走使徒の排除を慣行するつもりでいた。
「そこで……だ。最近私兵団の指揮と運用ばかりに時間を費やしていて少し体がなまっているんでね。手伝わせてもらおうかと思ってね」
この男……勝手なことを。と内心思いながらも不安要素が無くなったことに安堵した。
排除の慣行にはハーレイとその分家である三つの家の領主と共に行うつもりであった。しかし、緊急時に他の地区で暴走使徒が発生した場合、対処する時間が遅れてしまうということはかなりの不安ではあった。
しかし、セレンが居れば話は別である。四大幹部の名は伊達ではない。三つの分家の者の戦闘能力を合わせても尚彼の戦闘能力のほうが高い。となれば、三人を残し、セレンとハーレイで慣行することが出来る。
「非常にありがたいが、借りとはみないからな」
セレンに借りを作ると後が面倒だということを、ハーレイは経験上しっていた。
「ふふっ、かまわないさ。僕が好きでやるんだ。それに他の領主が他の都市で戦闘するには領主の承認が必要だしね。それが承認されたことでプラスマイナス零さ」
なんだか裏があるようにも思えたが、この際良しとした。
今日は泊まっていくようにとセレンに告げ、ファイに部屋まで案内するように言った。
「それじゃあお休みハーレイ。また明日」
そういってセレンは部屋を出て行った。
バサッと音を立てながら黒衣のコートをはおる。そして指先が出るグローブを装着する。
これがハーレイの戦闘用の衣装である。しかし戦闘用とは言ったものの、外出する際の衣装は常にこれである。いつ使徒と遭遇してもいいようにと備えているわけではなくこれもまたハーレイの趣向である。
「さぁじゃあ行こうかハーレイ」
セレンの服装はハーレイの屋敷に来たときの服装となんら変わらない、これから観光でもするのではないかというラフな服装である。
「これからするのは観光じゃなく強制排除の慣行だぞ。全く……いいのかそんな軽装で」
実はセレンと共同戦線を張るのはこれが初めてである。セレンが戦っている姿は、幼少の頃ARPOの合同演習でしか見たことが無かった。
「ハーレイにしては珍しくシャレを取り込んだセリフだね。まぁもう少し捻ってもいいと思うけど?」
クスクスと笑いながらセレンが歩き出す。本当は先導するのはハーレイのはずだが、ハーレイはその後を付いていった。ハーレイの邸宅から四番地区まではさほど距離は無い。また、研究所までは大通りを歩いて十~十五分程度の場所にある。
「灯台下暗しとはよく言ったものだ」
ハーレイとセレンが研究所前で止まった。まだそこまで古びていない研究所には多人数の研究員が見受けられた。見た感じでは他の地区の研究所とあまり変わった様子はない。
しかし、ひとつだけ妙な点が見受けられた。
「あれは……帝都のKingdom Armsか……?」
この世界マースは四つの都市と一つの帝都で構成されそれぞれ独立している。帝都を中心として他の四つの都市が周りを囲んでいるという体系である。帝都には他の四都市を含む領土の絶対的権力者である王のウズベル=ニースレンの城がある。その帝都の軍人こそ帝都が組織している軍隊、総称Kingdom Armsの隊員である。この組織は研究開発部と戦闘兵団とに別れている。さらに、研究開発部は兵器部所と生態部所に分かれており、それぞれ違った研究を進めている。兵器部所は魔力と機械を使用した対暴走使徒用の兵器の研究開発をしている。生態部所は召喚した使徒や捕獲した暴走使徒の研究を行っている。戦闘兵団は一~五までの兵団があり、格兵団に一人の将と軍師がいる。そしてその下に数千~数万の下級兵士といった具合で構成されている。今回この四番地区研究所に居たのは警備員として存在している下級兵士であった。
「そう。研究所の警備員の様相だけど、あれは間違いなくKingdom Armsの兵士だね」
セレンやハーレイが気付いたのにはわけがある。警備員の服を着ていると周りからは一見気がつかれないと思われる。しかし、ハーレイ達はこの警備員の様子を見逃さなかった。ハーレイ達がこの研究所の前で止まった直後これまでとは違い警備員たちに緊張にも似た様子をうかがうことが出来た。奥に居た者はイヤホンマイクのような物で何処かに連絡している様子も見受けられた。
「あ~あ面倒だな……Kingdom Armsの連中ともやりあう事になっちゃうかもね」
セレンは後々面倒な書類を書き、帝都に提出しなければならなくなる事を考え、ため息をついた。
研究所は四階建てのビルであり、また地下にも研究室がある。
「セレンは上を。俺は地下を探索する」
何の抵抗も無く正面ゲートから入ることが出来たことに多少の疑念を持ったが、ハーレイは地下へと続く階段を下り始めた。研究所の定番として絶対に地下に秘密があるのだろうと考え、体がなまったままこの任務が終了してしまうのではないだろうかと思いながら、渋々セレンは上を目指した。
「The 69th box α Searcher. And searching」
ハーレイがそう言うと腕時計のような器具がハーレイの腕に装着された。そして青白い光と共に建物の全体像が立体で表示される。この立体映像はハーレイ自身にしか見ることが出来ず、傍からみたハーレイは少し変な人となってしまう。ハーレイがあまり使いたくない器具のひとつである。やがて赤い点がポツポツと立体映像の中に浮かび始めた。この赤い点こそ暴走使徒である。この赤い点の数が暴走使徒の数であり、大きければ大きいほど固有周波数の強い物つまり強敵であることを示している。
「セレンのやつ……体力もつかな?」
セレンが向かった先に多量の赤い点がある事がその器具で判明し少し心配をしたが、ハーレイ自身も向かう先に暴走使徒がいることに気がついた。
こんなことなら研究所に入る前に使えばよかったなと多少後悔しつつも地下への階段を一段ずつ下りていった。
ハーレイが地下三階に差し掛かった頃にはもう他の研究員とすれ違うことはなくなっていた。ハーレイは確実に暴走使徒との距離が近くなってきているのを「α Searcher」を使わなくても感じることが出来た。また、設備も地下一階、二階に比べ格段に整っていることも見受けられた。
「怪しいですよといっているような物だな」
しかし何も障害も無くここまで来れてしまうというのは、いささか順調すぎるのではないかと感じていた。普通ならもう少し警備が厚くなっているであるとか、防壁の一つや二つがあったりするとか何かしらの障害があるはずである。
腕組みをしながら地下四階から地下五階へと続く階段へ「α Searcher」を頼りにと向かっていると、初めて防壁のような物に遭遇した。
「ようやく秘密の実験室らしくなってきたな」
ハーレイが少しニヤリとし、「The 13th box Shotgun」と唱え箱を出現させ、箱の中身であるショットガンを手にする。
「派手にぶっ飛ばすか」
ショットガンの銃口が重厚な防壁に向けられる。ハーレイは狙いも定めずトリガーを引く。一回ではなく二回、三回、四回と何度もトリガーを引く。
当然の如く銃口からは青白い銃弾が射出され、防壁の手前で拡散する。拡散した銃弾によって防壁は紙であるかのように次々と穴が開いていく。
何発の銃弾が発射されただろう。防壁であった筈のそれは粉塵となって周囲に霧散している。先が見えないほどの粉塵にハーレイは少しやり過ぎたかとも思った。
やがて粉塵は収まり始め、防壁の先が見えてきた。粉塵が完全に晴れ、防壁の先へとハーレイが進むとそこには巨大なサーバーコンピュータと多くのコンピュータ、そして部屋の壁であるかのようにディスプレイがあった。
「ずいぶんと大掛かりな研究だな」
ハーレイは研究員が一人も居ないコンピュータルームに入った。どうやらここの研究員はハーレイ達がこの研究所に捜査に入ったことを知らされ、いち早く立ち去ったのだろう。コンピュータを操作し、データを表示しようと試みたがすでにフォーマットされているようで、めぼしいデータは何一つ得ることが出来なかった。やはり一足遅かったようであった。
「ん……」
ハーレイは巨大なサーバーコンピュータの奥に赤く光る巨大なカプセルがあることに気がつき、そのカプセルに歩みよる。一歩一歩近づくにつれ、そのカプセルの中身が鮮明に目に映る。
「に……人間?」
カプセルの中で人間が液体の中に浮いている。しかし、どうも様子がおかしい。人間にしては腕や足が太い。筋骨格構造も人間と似てはいるが確実に通常ではない。
漫画や映画に出てくる怪物「トロール」を彷彿とさせる体躯である。
ハーレイは、この人間はどうやら暴走使徒と人間を遺伝子的に結合させ、培養したものであるのではないかと推測した。しかし、そのような研究にはかなりの時間がかかる筈である。事件が増え始めたのはこの一ヶ月。暴走使徒化しているとはいえ、成人ほどの大きさに培養していくことは一ヶ月で可能であるだろうか。いや、今のこの世界の技術力では不可能に近い。だとしたら……これは一体……
セレンはハーレイと別れ、二階をフラフラと歩いていた。二階には何度もすれ違うほど研究員がいた。中には学生のような顔の研究員まで居た。やっぱり上はハズレ、地下が当たりか。サクッと見回って地下に行こうと考えていると
「ARPOの方ですね? 私がこれより先を案内いたします」
と、初老の男性が話しかけてきた。美人の女性に案内されるのならばまだしも、こんな爺さんに……とは思ったものの断らずに付いていくことにした。セレンは感じていたのである。今まで関わってきた違法研究者的な「におい」をこの初老の男性に。セレンはその様子を気付かれないよう今までと同じようにフラフラと歩いた。
セレンが案内役を申し出た初老の男性と行動を共にして数十分。セレンは四階に案内された。四階は一つの大きな広間になっているようであった。
「今明かりをつけますので」
と初老の男性が階段の方の電源スイッチを押しに向かった。
暗いながらも大広間には異臭が漂っていることにセレンは気がついた。
パッと大広間に電気がともる。と同時に先ほど階段があった場所は完全に閉ざされてしまった。
「なんのつもりだい? 帝都の違法研究者さん?」
ニヤリとしながらセレンは初老の男性に問いかける。
「フクク……気が付いておったのか。だがもう遅い……貴様はこの広間でその辺に散らばっている物と一緒になるのだよ」
明かりの点いた大広間にはかつて人であった筈の肉と血が散らばっていた。先ほどの異臭はこれかとセレンは納得した。続けて初老の男性は一本の注射器を彼の白衣から取り出した。
「これがなんだか分かるかい?」
注射器の針から空気を抜きながら初老の男性がセレンに問いかける。その注射器の中には青い液体が入っていた。
「これは試作品ではあるが、一時的に暴走使徒と同等な体躯と力を得ることが出来る人体強化薬さ」
と、初老の男性は血走った眼になりながら力強く言い放つ。セレンは正直驚きを隠せなかった。帝都の連中が暴走使徒の研究成果の一つとして強化薬を開発していたということ、そしてそれが試作とはいえ完成していたこと。帝都がこの事に関わっているとなれば非常に危険な事態である。
この事実は次の定例集会で挙げなきゃなとセレンは考える。
「ということで君にはこの薬の実験に付き合ってもらう」
そういうと初老の男性は注射針を自らの腕に勢いよく刺した。勢いよく刺したせいか、彼の腕からは血が滴った。そして注射器の中の液体が初老の男性の体の中に入っていく。
「そんな薬を自分に投与するなんて、なかなか研究意欲旺盛な爺さんだねぇ」
セレンは関心関心といった具合で腕を組み、頷く。
カランと注射器の落ちる音と共に初老の男性の肉体は変貌していく。平均男性よりも少しやせ気味であった男性の体は一気に一〇倍ほどにまで膨れ上がり、爪は太古の恐竜を思わせるほど鋭く尖っていた。口からは涎をだらだらと垂らし、理性は何処かに飛んでいるようであった。
「でも。排除対象だ」
すばやく二対の槍を出現させ片手に一本ずつ槍を握るというセレン独特の構えをとる。
暴走使徒と化した初老の男性の目が赤くひかり、暴走使徒特有の奇声で吼えた。
セレンは久々の戦闘の空気をぴりぴりと感じていた。本来ならば指揮などせず暴走使徒を駆除していきたいというセレンの本能が徐々に膨れ上がっていく。
先に仕掛けたのはセレン。突破力の有る加速で一気に暴走使徒との距離をつめる。完全にセレンの間合いまで距離を詰め、剣先が赤く光る右手の槍で暴走使徒に一撃を叩き込んだ。
なんの防御もなしに叩き込まれた一撃の衝撃はすさまじく、暴走使徒は血を撒き散らしながら広間の壁に衝突した。
「たいしたこと無かったねぇ」
セレンがため息をつく。もう少し骨の有る暴走使徒であると思っていたのだが、どうやら勘違いだったようだ。相手の力量を見誤るなんて……実践を離れていたせいなのだろうかと多少の後悔をしていると、突如天井の天板を衝撃が襲い始めた。セレンが驚いて上を見上げると、すでに広間の天井のいたるところに凹凸が出来ていた。
やがて板が金属音を立てながらガシャンと落ち、天板と共に暴走使徒が落ちてきた。それを始まりとしたのか、次々と天板が落ち暴走使徒もボロボロと落ちてきた。セレンは突如暴走使徒の大群に囲まれてしまったのである。
ARPOの人間をここから逃がすわけには行かないのだろう。証拠隠滅といった具合でセレンやハーレイを消すつもりである。
「さすがに……この数は無いんじゃないの……」
広間には数え切れないほどの暴走使徒。天板を壊し次々と落ちてくる暴走使徒。一体この広間には何匹の暴走使徒が格納されているのか。そもそも何故このような多量の暴走使徒が居るのか。
「そんなこと考えてる場合じゃないよなぁ」
いつどの方向から襲い掛かってくるか分からない状況はさすがのセレンもあせりを隠せなかった。緊張感を張り詰める。空気の流れを読み反応速度を極限まで上げる。
突如、周りの空気に大きな乱れが生じた。暴走使徒が四方八方から一挙にセレンに襲い掛かったためである。感覚を研ぎ澄ませていたセレンは瞬時にそれを察知し、その攻撃の唯一の隙である上へと跳躍した。セレンの居ない床に暴走使徒たちの力は集中する。爆音を立てながらあたりに粉塵が舞った。
セレンは青白く光る左の槍に力をこめた。すると槍の先に氷の塊が出現した。セレンの持つ宝槍「旋風冷槍」の力である。空気中の水分を集めそれを瞬時に氷結することが出来るという特殊な力をもつセレンの母親の形見の槍である。その氷塊を足場にし、もう一つの宝槍である「煉獄猛火槍」を地に向け突進する。右手に持つ槍、「煉獄猛火槍」は父の形見であり、生前の父のような猛々しい炎を纏っている。
セレンの槍が床に刺さると同時に突進の着弾点から放射状に炎が走る。先ほどまでセレンを囲んでいた暴走使徒はその炎に包まれその炎に焼かれ暴走使徒数体がセレンの周りで悶え、のた打ち回った。
しかし、その悶えている数体の暴走使徒たちの奥からまた別の暴走使徒が襲い掛かる。思わずセレンは後ろにステップを踏む。ギリギリではないが、前方からの攻撃を避け、こちらからの攻撃の態勢に入った。
その刹那、左サイド右サイドからの挟撃がセレンを襲う。攻撃態勢に入っていたセレンはやむを得ずさらにバックステップ。暴走使徒たちに戦術というものがあるとは思えないが、この数を相手にしているということは意図せずとも人海戦術的な戦いとなっていってしまう。
「さすがにこの数は厳しいかな……」
セレンも避けることに精一杯な自分に気がつき少し焦りを感じていた。さらに、気がつくとセレンの周りには休日の遊園地並みの人ごみのように暴走使徒が居た。
研究所の外部ではまるで戦闘機のような音をたてながら、一人の女性が研究所四階の外側に浮遊していた。
「ターゲットを複数確認。ベルクリア=セレナード様を空間内部に確認。ハドロン粒子充填率八十%オーバー、粒子砲発射可能充填率許容範囲」
地上四階に並行するように浮遊している女性が淡白な物言いで言う。彼女が両手で所持している銃は、拳銃のような小型の物とは違い、大型の火砲といった具合の物である。その火砲にはむき出しの配線やエネルギータンクの様なものが装着され、通常の拳銃とは違いロングバレルとなっていた。その火砲の銃口は研究所の四階に向けられていた。煌々と煌くその銃口には大きな光の塊が形成されつつあった。彼女が「発射」と一言発しトリガーを引くと、その光の塊は太いレーザーとなって研究所四階を貫通した。
五秒ほど発射され続けたそのレーザー砲はその太さ分の穴を四階の広間に開け、広間の床は抉られたかのようにレーザー砲の軌道を示す。当然その軌道上に居た暴走使徒はレーザーによって焼かれ、蒸発しこの世から完全に消え去っていた。
四階にあいた大穴から内部へその女性が侵入し、一言
「セレナード様、お怪我はございませんか? ハーレイ様からのご通達によりセレナード様の援護に参りました」
その女性とはなんとハーレイの邸宅でお茶を運んだりしていたファイであった。ファイは重厚な火砲をドンと床につき、一礼をした。
「君は……ロボットだったのかい?」
セレンが多量の暴走使徒のことも忘れて問いかけた。ファイはハイと頷き自分の型番である「FA-01」と通称がファイである事を説明し、火砲のエネルギータンクを交換した。
カプセルの前で思考をめぐらせていると、突如地鳴りと共にカプセルに一筋のヒビが入る。一筋のヒビはやがて四方八方へと広がり、カプセルが割れる予兆が見て取れた。
ハーレイは手にしているショットガンをもう一度握りなおした。
そしてヒビの入ったカプセルが音を立てて割れた。ヒビから序々に漏れ出していた液体が堰を切ったように流出する。その流れに乗って同時にカプセル内の人間も流出した。
しかし流出してきた人間は一向に動く気配を見せず、ただ床に転がっていた。すでに死んでおり、暴走使徒の骸に過ぎなかった。物的証拠として、真相解明に役立つと見てハーレイはそれの一部の組織細胞を手持ちのナイフで抉り取り、黒衣のコートのうちポケットからキャップ付きのガラスケースに保管した。
研究者を一足違いで取り逃し、戦闘も無く終わったが、それなりの成果が得られ、多少の悔いが残ったがまぁよしとしよう。そう考えていると、割れたカプセルの奥から二体の暴走使徒が現れた。その暴走使徒達はハーレイが居ることに目もくれず、骸である暴走使徒に喰らいついた。
下品な音を立てながら骸に喰らいつく暴走使徒たち。骨や内臓などお構いなし。空腹な獣のように一心不乱に喰らう。このような光景は飢えた暴走使徒ならばよくあることである。しかし、今回のそれは違っている点があった。それは骸を喰らう暴走使徒たちの体がボコボコと脈をうっていることである。その様はまるで即効性のプロテインでも打たれたかのような物であった。
骨も残らず骸が食い尽くされた時にはすでに暴走使徒二体の体躯は通常の物とは大きく違い、強敵であることは素人が見ても分かるほどであった。そこに生えている筈のない四対の腕、爪は長くそしてより鋭くなっていた。どう考えても異常である。出てきたときの暴走使徒は見たことの有るタイプであったが、骸を喰らってからのそれは、別物にみえる。骸の組織細胞は持ち帰り検査の必要があるなと考えると同時にこの二体の暴走使徒もどうにかする必要があるとハーレイは考えた。
食事を終えた使徒たちが次にすること。それは暴走使徒の基本的欲望である破壊と殺戮。対象となるのは身構えているハーレイ。低く喉を鳴らしながら二体の暴走使徒がハーレイのほうを向く。二対一。ハーレイにとって不利な戦闘が始まるのを感じさせた。
研究室のコンピュータ機器がバチバチと火花を出している。その火花はピリピリとした緊張感をあらわすかのようであった。
突如、コンピュータの一つが爆発音をたてながら電装部品などを撒き散らす。その爆発音がハーレイと暴走使徒たちとの戦闘開始の合図となった。一体目は床を疾走し、もう一体はハーレイに向かって空中から攻撃を仕掛けるべく跳躍した。
「The 51st box Missile」
手を開き前に突き出すようにしながらそう唱えると、疾走中の暴走使徒の直前に黒い箱が現れ、一体目の暴走使徒がその黒い箱に衝突した。突撃力を無効化された一体目は瞬時にバックステップし箱との距離をとる。跳躍し、滞空からの攻撃を行おうとしている二体目が黒い箱のちょうど垂直上を通過する瞬間、ハーレイは開いていた手をグッと握る。すると黒い箱から対空ミサイルが出現し垂直に発射された。突然の下からの攻撃にどうすることも出来ない暴走使徒。そして暴走使徒のみぞおちにミサイルの先端が触れる。その刹那ミサイルは当然の如く爆発する。爆風と爆炎にのまれ、暴走使徒が体に火を纏いながら天井に吹き飛ばされ、天井への衝突後床に落ちる。
「どうした。二対一だぞ」
ニヤリとしながら片腕に持っているショットガンを床に落ちた暴走使徒に向け、トリガーを引く。一筋の弾丸の軌跡が床でもがいている暴走使徒に向かって伸びていく。確実に仕留めるはずであった。通常の暴走使徒ならば確実に仕留めることが出来る軌跡であった。しかし、暴走使徒の直前で弾丸の軌跡が途切れた。
「な……これは……魔術障壁」
円の中に陣が描かれたものが暴走使徒前方の空中に浮かび上がる。これが障壁であり、暴走使徒を守った魔術の一種である。
ショットガンの弾丸はハーレイの魔力で構成されている。そのため障壁によって弾かれてしまう。なぜ暴走使徒が障壁を構築することが出来るのか。人間であっても障壁を構築するためには多くの知識と経験そして素質が必要である。理性の外れた暴走使徒が使えるとは到底思えなかった。
ハッとしてハーレイが辺りを見回すと一体目の暴走使徒がいつの間にか消えていた。少し目を放した隙に何処かへ逃げたのかと不安を覚えた。その瞬間床に一滴が落ちる。自分の冷や汗であるかと思った瞬間上空から一体目の攻撃が迫る。重力を利用したその攻撃は通常でも威力のある爪撃にさらに重みを乗せる。ハーレイはその攻撃をとっさに右へのサイドステップでかわそうとするが、一歩遅かったのか左腕に一筋の爪撃を受ける。ハーレイの左腕が浅く裂け、そこからは血が滴る。一方爪についた血をペロリと舐め恍惚に浸る暴走使徒。
「久々に暴走使徒に傷を付けられたな」
傷を押さえながらハーレイが言う。先ほどまで倒れていた暴走使徒が立ち上がり、ハーレイのほうを向く。
突如一体目の暴走使徒が先ほどまで立ち上がった暴走使徒に向かう。そして疾走状態から立ち上がった暴走使徒に喰らいつく。そして片腕を喰いちぎる。奇声を上げながら再度倒れこむ暴走使徒。その奇声は人間で言うところの断末魔の叫びのようであった。
一本目の腕を喰いちぎった暴走使徒の腹が突如開いた。その腹はもう一つの口とでも言うように牙を有し、三本腕の暴走使徒を丸呑みにするとニヤリと笑うように閉じた。
さすがのハーレイもこれには絶句した。おそらくあの暴走使徒には理性は無いが知性はあるのだ。それを証明したのが今の惨状である。ミサイルによって大きなダメージを負い、弱った状態ではハーレイを倒ことは不可能であり、足手まといになる。ならば自分の糧として吸収し自らのパワーアップに当てようという合理的な思考があの暴走使徒には構築されていたのである。
「まるで進化の過程を見ているみたいだ……」
最初はなかった筈の知性。欲望の塊であった暴走使徒が知性をつけ襲い掛かる。これは確実に今後の脅威となる。この研究がすでに完遂しており、ここを立ち去った研究員たちがそのデータを下に暴走使徒を改造する。その改造された暴走使徒に人が命令を下せるよう暴走使徒たちにプログラムを施したら、
「考えるだけでもぞっとするな……」
そうこう考えているうちにも暴走使徒の体はボコボコと脈打ちながら変貌していく。変貌中に攻撃するのはハーレイの趣向に反するが、ハーレイは銃口を向け、狙い、放つ。先ほどは障壁を構築されたが、変貌中は無防備になる。つまり障壁が構築されることはないはずであると考えた。
躊躇無く何度も引かれるトリガー。引いた分の弾丸が暴走使徒に迫る。何発もの弾丸が暴走使徒の手前で拡散し、無数の青白い軌跡が暴走使徒に向かって伸びる。弾丸は暴走使徒を直撃し大きな爆音をたてた。
先ほどのファイの砲撃で広間の風通しが良くなったのと同時に暴走使徒の数も相当数減った。それでもまだ数十体は残っている。
「残存の標的を破壊及びセレナード様の援護及び護衛」
そうファイがささやき、火砲を背負いメイド服の両袖からマシンガンを取り出す。それと同時に腕をクロスさせ左右斜め前方へ銃口を向ける。トリガーを引き、すでに迫ってきている暴走使徒に向け連射力の高い銃撃を加える。無数の銃弾を受けながら二体の暴走使徒は、迫るその勢いを無くしてゆく。
「うはぁ、最近のメイドさんは強いねぇ。このまま立ってたら四大幹部の名折れだよ」
後ろから迫る暴走使徒を薙ぎながら驚く。
しかし暴走使徒の絶対数から徐々に囲まれはじめ、ファイとセレンの背が軽くぶつかる。最初ほどの数は居ないものの、まだかなりの数が残っている。マシンガンの弾数が無くなり、多数の薬莢が金属音を立てて床に落ちる。
「残りの暴走使徒の数分かるかい?」
セレンが背中越しに話しかける。
「残存数は四六体です。ノルマは一人二三体です」
ファイが淡白な物言いで報告する。四六体という報告に少し驚き両槍を握る。そして何かを決意したかのように目を閉じ槍の末端同士を近づけた。
「相容れぬ力よ交わり一つとなれ」
そうささやくと末端同士が光に包まれた。その光は炎のように情熱的な赤でも冷気のような冷静な蒼さでもない。表現しがたい柔らかな光。この光に包まれ、徐々に末端同士は結合していく。瞬間的閃光がはしった後、先ほどまで二本に分かれていた槍は一つに結合し、先端と末端に色の違う刃を有した一本の武具になった。
セレンがその武具の柄の真ん中を持ち、目を見開く。その瞬間、片方の刃からは紅蓮の炎、もう片方からは蒼い冷気が噴き出す。
「ちょっと上に退避していてくれるかな」
ファイにそう指示すると、畏まりましたというように一礼をした後、上空に跳躍。彼女が跳躍した瞬間セレンが武具を持っている片腕に力を籠め周りの暴走使徒を一掃するように自身が回転した。蒼と紅がそれぞれ見事な半円を描いた。セレンが技を使用し床に手をついている頃には、ある暴走使徒は灰塵と化し、またある暴走使徒は永久に溶けることの無い氷塊となっていた。お見事ですとでも言っているかのようにファイが拍手をする。
「これ使うと疲れるなぁ」
セレンが息を整えながら槍の結合を解除し、槍をしまった。
「残存する暴走使徒はおりません。出現の可能性はありますが、後はお任せください」
未だ両手にガトリング、背に大型火砲を装備したままの体制で状況を見守る。
セレンがクスクスと笑いながら頼んだよという合図としてしゃがみながら手をふった。
爆発。それに伴った粉塵。この二つが対象の消滅を確定する筈であった。やがて粉塵がはれ、視界に透明感が出てくる。するとそこには消滅する筈の暴走使徒が存在していた。変貌した暴走使徒の体躯は人間に近い物であり、最初に発見したカプセルの中のそれと酷似示していた。また暴走使徒の周辺には魔術障壁が数陣存在していた。弾丸はこの自動で発動した魔術障壁によって阻まれたのである。
驚きの連続でハーレイはたじろぐ。魔術障壁を自動で発動、それも複数発動など熟練した魔術師でも難しい。ハーレイもこの術は会得していないほどである。ハーレイは久しく感じたことの無い暴走使徒への恐怖を感じていた。もはや目の前にいる者は暴走使徒なのであろうか……「全くの別物に進化したモノ」と考えたほうが良いのではないかとハーレイの脳内では様々な推測が飛び交う。
「恐怖」
突然目の前のモノが口を開く。暴走使徒が会話をする、これもまた進化の証拠である。また、知ってか知らずかハーレイの心情を表す単語を口ずさんだこともまたハーレイを驚かせた。
ハーレイはハッとして目の前のモノを見据える。すぐさま「The 2nd box Twin Braid」と唱え二対の剣を出現させ、それを握り攻撃態勢に入った。
ハーレイは決して後衛的な戦闘だけをするわけではない。時には後衛からの魔術、時には近接戦など多目的に戦術を変更することが出来る。ハーレイが「戦術召喚士」と呼ばれる所以である。
目標に向け疾走するハーレイ。魔術を使用しても恐らく魔術障壁によって確実に阻まれてしまう。魔術障壁の影響を受けない物理的ダメージを目標に与えなければならない。
「焦り」
またもやハーレイの心情を察したかのように暴走使徒はつぶやく。しかし、ハーレイはそれを気にする間もなく暴走使徒へと縦薙ぎの斬撃を加える。肉を斬る感触がハーレイに伝わり、暴走使徒の切り口からは血が噴き出した。それを確認すると同時にハーレイは後方にステップを踏んだ。
「安堵」
体を斬られたにも関わらず、平然としている暴走使徒。そしてまたもや心情を表現した単語を口にする。暴走使徒がふと上を見上げ眼を瞑る。その様は何かを思い出しているかのようであった。
「転移」
眼を瞑りながら暴走使徒がそう囁くと閃光が辺りを包む。とっさの閃光にハーレイは光をさえぎるように手を目の前にかざす。
閃光が収まり辺りが先ほどまでの明るさを取り戻した。ハーレイは手をおろし周囲を確認した。上空からの攻撃の対処のため天井もくまなく見た。しかし、暴走使徒の姿はどこにも無く、研究室にはハーレイ一人が取り残されていた。久々の敗北感をハーレイは感じずにはいられなかった。
研究所の潜入捜査も終わり、ハーレイとセレンそしてファイが研究所の外で合流した。互いに起こった出来事、つまり帝都の暴走使徒改造研究の着手と試作品の完成、そして逃走した暴走使徒の報告をし合い、今後の対策会議をするため近いうちに幹部会を執り行うことを決定した。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るとするよ」
ハーレイの邸宅で身支度を済ませたセレンが微笑みながら別れを告げた。
「あぁ。今回の件は世話になったな。それじゃあまた幹部会で」
ハーレイは少し笑いながらセレンを玄関前にある迎えの車まで送った。
セレンを送り、邸宅内の庭を散歩しながらハーレイは思考をめぐらせる。今回の件は異常が多すぎた。セレンたちが戦った大量の暴走使徒はいったいどこに隠されていたのか。帝都の研究はどこまで進んでいるのか。研究所の職員はそれをどの程度知っていたのか。そして最大の異常、暴走使徒の進化。ハーレイが回収した細胞組織の分析には後数日はかかる。今はその結果から何かが分かることを祈るしかない。
ハーレイは真実を切望した。これまでに無いほど切望した。すべてを知りたいと。
「欲するモノがあるならば、求めよ」
ハーレイの背後で幼い頃に聞いた父の懐かしい声が聞こえた。ハーレイはすぐに振り向き辺りを見回す。しかし庭にはハーレイ一人しかおらず、ましてや行方不明または死亡したはずの父がいるはずも無かった。そして胸にぶら下がっている承認キーであるペンダントをハーレイは何故か強く握った。
「ご……ご主人様どうかなさいましたか?」
ファイがハーレイの近くにより、いつもとは違った抑揚のある声で話しかける。
「いや、なんでもない。それより……そのしゃべり方は何だ」
このロボット、ネジが四・五本外れてしまったのではないかと思いながらファイのほうを見た。
「いえ、セレナード様からこのようなメモを頂きまして」
数枚のメモをハーレイは受け取った。メモのタイトルは「ハーレイが喜ぶメイドの言葉集」と書かれており、その数行先には様々な言い回しと単語一つ一つの抑揚の付け方など細かに記されていた。
「……こんなもの」
とっさにハーレイがメモを破り捨てた。
「あぁ。しかしご安心ください。このメモは私のメモリー内にすべてインプットされています。ご・主・人・様」
意地の悪そうな笑みを浮かべながらファイが自信を持って言う。
セレンのやつ……面倒なことしていきやがって。そう思うと同時にため息をついた。
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