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悪の娘(二次創作小説)プロローグ



0、プロローグ

 かつての王宮近くにある広場の中心、白い垂れ幕の敷かれた処刑台の上に一人の少女が引き出された。
 風に揺れる金の髪から覗く双眸は周りを取り巻く人たちではなく、どこまでも広がる青い空に向けられている。
 悪逆非道の限りをつくした王女の姿に彼らは声を揃えて唱え続ける。「王女に復讐を! 王女に裁きを!」と。
 沿道のみならず、民家の屋根まで埋め尽くす彼らの声は街そのものが怨嗟の叫びをあげているようだ。
 地面さえ震わせるような大音響を前にして背筋を伸ばす少女に怯えた様子はない。
 罪人として両手を背中の後ろで縛られていようと、頭上にギロチンが吊るされていようと屈することのない姿は傲岸でさえある。
 少女が瞳を伏せると同時に、三時を告げる鐘が鳴り響いた。
 王女の処刑を告げる待望の鐘。
 新たな時代の幕開けを告げる祝福の鐘。
「あら、おやつの時間だわ」
 未だに鐘の音の余韻が残っている中、少女の小さな呟きはその場にいた全員に伝播した。
 一瞬、静まり返った広場に再び誹謗の嵐が巻き起こる。
 それでも少女は彼らに目を向けることなく、身台の前まで自らの足で歩み寄る。
 執行人は慌てて駆け寄ると少女の体を台の上に仰向けに横たわらせ、白く細長い首を無骨な木枠で固定した。
 執行人がその場を離れ、兵に合図を送る。
 支えを失った鋼鉄の刃が滑り落ち、少女の頭を跳ね上げた。


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