出産

出産

予定日の前日、午後3時頃病院に到着。病棟のナースステーションに行くと、病棟の診察室に入るように言われる。
いつも検診で診てくださっている先生がその日の病棟の担当で、先生の顔を見てほっとする。内診をすると先生が「おしるしきてる。3cmね。いい感じで進んでるよ。じゃ、入院。夜には生まれるね。安産ですよ~!」って。
内診が終わって予備室に案内された。予備室というのは陣痛の間使う部屋のこと。部屋の入口で「じゃ、ご家族の方はここまでで・・・」と私だけ部屋に入るように言われる。え?え?え?私だけ?
そして、家族は帰されてしまった~。
東京にいるダンナに連絡を入れておいてくれ、と姉に頼んで家族とばいばい。私はひとり予備室に入る。

予備室の中は、カーテンで区切られてベッドが2台。普通の部屋と変わらない感じ。部屋の入口ではこの部屋専用のスリッパにはきかえる。粘着力のあるマットが敷いてあってその上を踏んでから部屋に入るようになっている。
奥のベッドに案内された。もうひとつのベッドは空いている。
お産用のネグリジェに着替えてベッドに横になるとすぐに血圧を測ったり、NSTがはじまる。赤ちゃんは元気らしい。良かった!
ときどき腰がキューンと痛くなるけれど、まだまだがまんのできる痛み。それより出血が気になって・・・。トイレに行く度に結構な量の出血がある。T字体をつけていたけれどずれてしまってすぐ汚れてしまう。ということで、T字体は急きょやめてショーツを履いて産後用のパッドをあてることになった。

夕方くらいに浣腸をすることになった。すぐトイレにいかないでがまんしてみて、と言われたけれど、がまんなんてできない。すぐにトイレにかけこんでしまった。出血も結構していたし、血なんだか便なんだかもうわけわからない。
この頃はずっと腰が痛い、お腹も痛い、痛くない時間がかなり短くなっている感じ。何分間隔とかって計っている余裕もないし、常に痛い感じになっていた。
助産士さんがときどき来てくれて腰をさすったりしてくれた。開き具合は7cmくらいとのこと。いきみたくなるけれど呼吸法で逃してと言われ、痛くなると「ふーうん!」と逃していたけれど逃しきれない~。痛いよぉ~。

助産士さんが「ダンナさまが来ましたよ~。会いますか?」と言いにきてくれた。痛みは頻繁におそってくるけれど、廊下に出た。腰が痛いんだよぉ~とパパにもたれてみる。でも痛くてそう長くも廊下にいるわけにもいかず、ひとり予備室に戻る。パパは実家で待機することに・・・。
夕食の時間になったけれど、何も食べられない。そうこうしているうちに常に痛い状態になってしまう。でも開き具合は変わらない。「食事もしていないし、点滴しましょう」と点滴がはじまる。
夜までには生まれる、と言われていたのに、なかなか進まないようだ。ときどき助産士さんが来てくれて内診してみてもなかなか開いてこない。
夜11時頃、やっと全開とのことで、分娩室に移動。予備室と分娩室はつながっている。ところがこの頃は陣痛が少し弱まった感じがしていたのだ。
この病院ではぎりぎりまで予備室にいて分娩台に上がるのは最後の最後だけ、というやり方だと聞いたので、分娩室に行くと言われ、もうすぐ生まれるんだ!って期待したのだった。

分娩台に自分で上がる。はじめて見た分娩台は足を乗せるところがあって、手でつかむところがあって、背中が少し持ち上がるようになっているベッドみたいな感じ。内診台が少し大きくなったような感じ。
足にカバーのようなものをつけられる。そして剃毛。いきんでいいよ、と言われるけれど、陣痛の間隔があいてしまってる。どんどん体力がなくなって足がぶるぶるふるえてくる。そんなこんなで1時間、日が変わって予定日になった。
この頃かな?先生が現れる。あれ?いつもの先生じゃない~。あ、そうか、日が変わっちゃったから夜の担当の先生になっちゃったんだ~、なんてことを考えたりする。微弱陣痛になって痛みが遠のいてしまっていたので、なんだか余裕でいろんなことを考える。

会隠切開をした。ジョキっと切られた。切られた感覚はあったけれど痛みはぜんぜん感じなかった。それから何度かいきんでみたけれどどうにも出てこない。
先生が「おや?旋回が逆だ」と言う。え?旋回異常ですかぁ?そんなぁ~。ここまできて。。。と思ったら「あ、戻った」って。旋回異常だなんてここまで来て切るの?とあせったけど、とりあえず戻ったようで良かった~。
「だいぶ時間がたっているしお母さん疲れてしまっているから、吸引しましょう」と吸引の用意がされた。まずは先生が吸引してみたけど、だめ。何度かめで、先生がお腹の上に乗って押します、という。助産士さんと先生ふたりがかりで私のお腹の上に乗っかって押すのだ。それでやっと吸引で出産することができた。

2000年8月1日午前1時45分。3058g、49cmの男の子出産。

その瞬間、私は叫んでいた。ぎょえ~って感じで。
子供が出た瞬間、それまでずっと続いていたつわりのような気持ち悪さがす~っと抜けたのだった。

生まれたのはわかったんだけど、産声が聞こえない。そういうものなのかなぁ~とわかっていない私。「性別どっちですか?」って質問したりしてのんきな私。あとから聞いたのだけど、一時的に呼吸がうまくいってなかったのだそうだ。「男の子ですよ~」とお腹の上に乗せてもらって我が子と対面。うわぁ~!感動。
私のほうは、すぐ胎盤が出て、あとは傷を縫ってもらう。溶ける糸で中のほうを縫ってあとから抜糸する糸で外のほうを縫っているらしい。結構ガシガシ縫っていたなぁ~。出血が多かったらしく止血剤を点滴に入れる、とのことで、そのまま分娩台で点滴を続けることになった。
赤ちゃんのほうは、「もうだいじょうぶそうですが、生まれたときに少し呼吸がうまくいかなかったので念のため1日保育器にいれますね。保育器があたたまるまでダッコしててください」と分娩台の上で抱っこすることになった。

生まれたばかりの我が子を抱っこしながらずっと顔を見て、幸せだなぁ~って思っていた。もうかわいくてかわいくて・・・。30分くらいして保育器が温まったとのことで、子供は保育器に入れられて新生児室に。生まれたあとに助産士さんが家族に連絡をしてくれていたので、廊下にいた家族は分娩室から新生児室に移動する赤ちゃんに会えたそうだ。そこでパパも初抱っこしたらしい。

点滴が終わって午前4時すぎ頃、病室に移動。途中でトイレによって助産士さんからトイレでの消毒のしかたを教えてもらうことになっていた。分娩台から降りると、くらくら~。目の前が真っ黒になってしまった。
立っていられなくて、その場ですわりこむ。出血が多すぎて脳貧血になっちゃったらしい。とても歩ける状態じゃないので、トイレもパスして、車いすで病室に連れていってもらうことになった。
廊下に出ると、家族が待っていた。パパが頭をなでなでしてくれた~。生まれたよぉ~。うるうる~。
まだ真夜中。みんなが寝静まっている病室に入る。家族は家へ。興奮していてなかなか眠れない。

結果的にはだいぶ時間もかかったし、微弱陣痛→吸引となり、出血も多かったということだった。私自身ははじめての出産だったしこんなもんだろうって思っていたのだけれど後で助産士さんとかに「大変だったんだってね」などと言われることが多かった。そういえば、母親学級で見たときのビデオのお産はもっとすんなりきれいだったのよねぇ~。
生まれた瞬間は、もう2度と産むものか~、と思った。でも、子供の顔を見ているうちにすぐにその思いは消えたのだった。

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