未完成な世界

詩のページ

夜明け

  今 夜があけた
  怒涛の 雲の
  流れる朝だ
  滾々と
  陽の湧く朝だ

  風よ 唸れ
  この幕開けに
  天の銅鑼を
  打ち鳴らせ







なごり雪のなか
ふくらむつぼみ
かくれんぼする
少女子のよう

ひと雨ごと
なみだに濡れながら
大人になって
咲き競う

嫌いだ 春の桜は
その女々しさが
そのやさしさが
そのはかなさが

命みじかい
その虚飾を捨てさって
炎のような
赤い若葉を萌えさせろ




2003年『桜』

昨日、新聞に載っていた
砂嵐の中行進するアメリカの兵士たち
ひたすらに前をめざすジープの列

今日、家の前の桜が咲いた
花は咲く時、何を考えるのだろう
フワフワと フワフワと
流れのままに ただ 身をまかす

今日、新聞に載っていた
怪我をしたイラクの子ども
じっとカメラを見つめている黒い瞳

今、冷たい風が吹いた

桜は、小枝にしがみつく
花は散る時、何を思うのだろう
フワフワと フワフワと
ただ、フワフワと フワフワと






あなた

藍色の コロイド分子の夜明けの色

今 太陽を迎えようと期待に満ちた東の空

夜の冷気に洗浄された 朝の風


     あなたの微笑みは私の空

     あなたの歌声は私の風

     あなたは私の始まり


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