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2023年11月03日
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カテゴリ: !なことば
最近よく聞く言葉で、どうしても納得出来ない言葉に「ワイプ」があります。

日本ではテレビ画面の隅にゲストやコメンテーターの顔がちょっと映っていたりする小窓のことをワイプと呼ぶそうです。最初に聞いたときは一体何のことか分からず、戸惑ってしまいました。

ワイプ、英語で言えば wipe でしょうか。普通は拭き取るという意味です。だから自動車で雨の粒を「拭き取る」ものをワイパーと呼びます。辞書を引いても「拭き取る」とか「消し去る」という用法しか出てきません。

本来テレビやパソコンの画面で「ワイプする」と言えば画面の切り替え手法として、前画面と後画面がバシッと切り替わるのではなく、前画面にかぶさったり押しのけたりして後画面が登場するもののことを言い、これはれっきとした英語のwipe in、wipe outのことです。

そこには本来の「拭き取る」「消し去る」の意味があります。後画面が前画面をwipeしますから。

でも、何ものをも消し去らないで画面隅にゲストの顔などがずっと映っている状況に「ワイプ」という、動きを感じさせる言葉を使うと、どうしても違和感を禁じ得ません。「ワイプする」と言われると「これから何がなくなっていくんだろうか」という気になってしまいますが、その画面からは何も消えていきません。

なぜ、こういう全然意味のちがう言葉が日本では一般的になったのでしょうか。

なぜ本来の英語、picture in picture を使わないのか疑問に思い、検索していくと漫画のような説明に行き当たりました。とある人が作っていた動画には一つの画面に重なってもう一つ小さな画面が隅に映っていたそうです。見た人が感心して「この手法は何という技術か」と聞いたのですが、たまたまその画面が次の瞬間、wipe outして別の画面と入れ替わったので聞かれた人はそちらのことを尋ねられたのかと思い「ワイプ」と答えました。

それ以降、この技術がワイプと呼ばれるようになった、という話です。



あるいはイギリス人のキャプテン・クックがオーストラリアで初めてカンガルーを見たときアボリジニー(原住民)に「あの動物は何か」ときいたところアボリジニーは「わからない」という意味の現地語、kangarooと言ったので、その動物の名前になったという話とも通じるところがあります。

おもにテレビ業界で、今では当たり前に使われる「ワイプ」の由来がこんなところにあったとは。
(ただし、これらの逸話はいずれも真偽のほどは不明です)

アニメがanimeとなったように、そのうち「ワイプ」も日本発祥の国際語になり得るという意見があるかも知れませんが、私は疑問に感じます。本来のwipeという手法はそもそも映像技術にすでに存在しますし、日本で言う「ワイプ」とは全然違う意味を持ち、さらにここには何かを消し去る、拭き取るという意味がまったくないのも気になるからです。


たしかにワイプはpicture in pictureより短くて言いやすい言葉です。でも日本以外では絶対に通用しないことは忘れないでいて欲しいですね。





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最終更新日  2023年11月03日 11時33分12秒
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