夜桜亭~月光店~

夜桜亭~月光店~

瞳子の憂鬱



瞳子の憂鬱
                               祐巳×瞳子

「ごきげんよう」
そう言って近寄ってくるのは紅薔薇のつぼみこと祐巳さまだ。
瞳子は声の主を確認するとわざとムッとした表情になって言う。
「…ごきげんよう、祐巳さま。」
「ん~、つれないなぁ~瞳子ちゃん」
そう言うと、祐巳さまはわざとらしく残念そうな顔をしてみせる。
「これから薔薇の館に行かれるのですか?」
「うん、そうだよ」
にっこりと笑って言う。…まったく、そんなだから皆さんに「百面相してる。」って言われるんですわ。と思ったが口にはださなかった。
いや、別に出してもよかったのだがそれでわ少しかわいそうかな?と思い口に出さないであげたのだ。
「それではこれで。」
「えっ?」
なんで??と言わんばかりの顔で瞳子を見ている。
「別に、薔薇の館に行くなんて一言も言ってないですわ。それに瞳子これから部活ですの。…私、祐巳さまみたいに暇じゃありませんから」
何を勘違いしたのか、瞳子も一緒に薔薇の館にいくと思っていた祐巳さまは、さぞつまらなそうに、ちぇっ、などと呟いている。
「まっいいや、じゃーねー瞳子ちゃん♪」
「はい。それでは失礼します。」
そう言って祐巳さまはたのしそうに「うんうん」とわけの解らないことを言いながら背を向けてさっていってしまった。
そんな祐巳さまを見て、嬉しいと感じてしまう自分がいることに苛立ちながらも、瞳子は部活に行った。






「乃梨子さん」
「何?瞳子。」
今は昼休み。
今日はいつもどうり学校にきて授業を受け、そして今に至るわけである。
「乃梨子さんは今日、薔薇の館に行くのかしら?」
少しばかりむくれっ面で言う。
「まぁ、いくけど…それがどうかした?」
妥当だと思われる言葉を選んでか、自然にかは解らないが乃梨子は口にした。
乃梨子にしてみればせっくの昼休み、ゆっくりさせてもらいたいものだが。そんなこと関係のない瞳子は乃梨子の机に両手をのせている。
「瞳子も薔薇の館に行く予定なんですけれど…」
瞳子はどこかバツが悪そうな顔をしていった。
「瞳子もご一緒さしてもらってもよろしいですか?」
「別にいいけど…何で?」
瞳子は小さく「っう」と言ってから続けた。
だって、祐巳さまがうるさいんですもの。………って。








「あら、いらっしゃい瞳子ちゃん」
「ごきげんよう。紅薔薇さま」
瞳子は笑いながら言うと、すぐに流しにいきみんなのためのお茶を用意し始めた。その後を追うように乃梨子は流しに向かった。



「ねぇ、何で祐巳さまをさけてるの?」
私と乃梨子さんが二人でお茶の準備をしているときに、乃梨子さんが瞳子だけに聞こえるくらいに声のトーンを落としていった。
「別にさけてなんていませんわ…!」
「さけてないっていったて、…それにさっきだって祐巳さまが嫌だからって…」
乃梨子は少し大きい声で言葉を放った瞳子に、もう少し静かにしてね?と注意するかのようにさっきよりもほんの少し声のトーンを落とした。
「…………」
瞳子は少し俯いて黙ってしまった。
「瞳子は祐巳さまのことが嫌いなの?」
「………」
瞳子は何もしゃべろうとしない。
「瞳子?」
乃梨子は再び声を掛ける。
「……だって…」
かすかに唇を動かしていった。
「…だって…何を言ったらいいのか解らないんですもの……!!」
瞳子は今にも泣き出しそうな顔で言う。
「私はあんなことを言いたいんじゃないのに!あんな言葉しか出てこないんですの!」
「…瞳子…」
「…私ってば何を言ってるのでしょう、乃梨子さんにこんな事を言ったって何がどうなる訳でもないのに…」
そう言って瞳子は自虐的な笑い声をもらした。
その途端ビスケット扉が開いた。
「ごきげんよう、お姉さま。」
______祐巳さまだ。
瞳子は__あぁなんてタイミングだろうと思った。もしかして扉を開けるタイミングを計ってたんじゃないのかな?と思わせるくらいにナイスタイミングだった。
………まぁその線は無いと思うけど。
「あっ!瞳子ちゃん!来てたんだ~!なぁんだぁ~私瞳子ちゃんのクラスまで行ったんだけど、もうどっか行っちゃった、って言われたから部活に行ったのかと思ったよ~。」
瞳子の顔が一瞬ひきっつたように見えた気がした。
「別に私が何処に行こうと祐巳さまには関係無いでしょう?」
瞳子は顔を歪ませながら言った。祐巳さまに悟られないように下を向きながら。
「っえ…?まぁそうだけど…」
祐巳さまは戸惑ったように普段より少し高めの声を出した。
「でもさぁ、ちょっとくらい待っててくれてもいいじゃんよぉ」
あぁ、なんて情けない声を出すんだろう…この人は。苛立ってる私が馬鹿みたいでわないか。まったく、嫌になってくる。
「…そんなこと言ったって……っ!!!」
瞳子はそう言い放つと途端に走り出して薔薇の館から出ていってしまった。残った人たちはただ呆然としていた。
その沈黙を破ったのは乃梨子だった。
「追いかけてください!!祐巳さま!」
「うん!!」
祐巳は言われなくてもそうすると言った感じで、ビスケットみたいな扉を勢いよく開けた。
その後に聞こえるかわからなかったが、乃梨子が叫ぶ。
「瞳子は思ったことと反対のことを言ってるときもあるんです!」
それは紛れもなく瞳子の“親友”から出た言葉だった。






薔薇の館で呆然としている山百合会のメンバーの由乃が言った
そろそろ私も妹つくらないとなぁ、
だって、私だけ取り残されちゃうかもしれないでしょぅ?と。






















「瞳子ちゃん!!」
瞳子は後ろから聞こえてくる声に気づいていたが気付かないふりをしていたのだ。
だってこんな顔見られたくないんですもの!それが瞳子の本心だった。
そんなことを考えていた瞳子は途端に腕を捕まれて小さい悲鳴をあげた。
「ハァ…ハァ……や…と捕まえた」
どのくらい全力疾走したのかがすぐにわかるくらい祐巳の息が切れていた。
「……はなしてくださいっっ!!!」
瞳子は全力で言い放った。
「………いや。」
祐巳は少しキョトンとしてから、はっきりと嫌だと言った。
「瞳子ちゃんは私のことが嫌い?」
「…………」
瞳子はうつむいたまま何も言わなかった。
「…そう、顔を見るのも嫌なくらい私のことがきらいなのね…」
祐巳は言った何もかも諦めたように、瞳子を突き放すような冷たい瞳で…。
「………っ!?…私は…祐巳さまのことが嫌いだなんて思ったことはただの一度もありませんっ!!」」
瞳子は涙を流しながら言った。力強く、祐巳に言い聞かせるように…。
「…うん。」
祐巳はうなずいた。
沈黙の時間んが流れた…………
そしてそっと抱き寄せて言う。


             ……よかった。瞳子…

                           END











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