Carolina Life Part II

Carolina Life Part II

某ホテルの頑固シェフ



千葉に新たなホテルをオープンさせる為に本社である東京のホテルから
何名か行くことになり自分が選ばれた。

この時20才、高卒の後輩達を束ねるヘッドウエイトレスになった。

ホテルのオープニングというのはそれこそ戦場で朝から晩まで休みが無い。
私は朝5時半から夜中2時まで働き、仮眠して朝6時にレストランに立つというシフトをこなしていた。
今思うと若さってスゴイ!の一言に尽きる。

私の配属されたのはホテルのメインダイニングでイタリアンレストラン。
ウエイター初心者の子達に簡単なイタリア語を覚えてもらいメニューを理解してもらうように準備した。

・・・が、キッチンを束ねる総料理長のシェフは元来フレンチのシェフだったので、
その日のスープ、お勧め料理などをホワイトボードに書く時に全てフランス語で記入したのである。

私は英語、フランス語のメニューが読めるよう東京のホテルで勉強したので苦は無いものの
高卒のウエイターの子達は非常に苦労しなければならなかった。

このシェフ、職人気質と言いましょうかへそ曲がりといいましょうか女の私が
仕切るのがお気に召さなかったようで散々無視されました。

私は腹が立ったけど腕のいいシェフだと尊敬していたので、いつかはきっと心を開いてくれると
信じて頑張っていました。

でもある日何かがきっかけで(覚えてない)シェフが激怒し、皿の積んであったワゴンを
私に向かって蹴飛ばしてきたのです。「女のくせに生意気なんだよ!」と。
他のシェフ、後輩たちがいっぱい見ている目の前で・・・

裏行って泣きました、職場で泣いたのはこれが初めてです。
悔しかった、何でこんな目に合うんだろうって。

それから、殆ど意地になってシェフに挨拶しました。
本当は顔も見たくない位だったけど負けたくなかったし、絶対に私を
認めさせてやると決意したんです。

そしていつの間にか、シェフも普通に話しかけるようになってくれて
私がメニューにない料理をリクエストしても作ってくれるようになりました。

職人は頑固だけど本当は心が温かいんです。
筋を通して礼儀を尽くせば時間はかかるけど仲良くなれるとこの時に確信しました。

ちなみにシェフも東京のホテルに戻り私もホテルを辞め長いこと経ちますが
未だにホテルに寄るとシェフが「おぅ久しぶりだな、何か食ってけ」と言ってくれます。
数年前に行った時にちょっと寄るつもりがフルコースが出てきて非常に恐縮しました。

でも帰りがけ、「おい帰るなよ、着替えてこいよ。食った分だけ働け」と言われましたが(笑)

このシェフ、ずいぶん頑固ですが何度かTVにも出てます。
(王様のブランチとかどっちの料理ショーとかで)

私はこの頑固シェフが未だに大好きです。








© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: