その1.「わたしメッセージ」


「わたし」を主語にして自分の気持ち・自分の考えを話すことです。 そんなの普通のことじゃんと思うかもしれないけど、相手に不満を持っていたり、文句を言いたい時には、これをするだけでずいぶんさわやかになります。

たとえば
   「文句言うんだったら、食べなくていい!」

 これは「あなた」を主語にしたあなたメッセージ。 
 わたしメッセージにすると
   「せっかくつくったのに、文句言われるとがっかりだよ。」
   「文句言わないで、食べてほしいな。」
という感じです。


   「何でそんなところに置くの!」  は

   「ここにあるとつまづきそうでこわいよ。」となります。


同じことを言うんだけど、これがけっこう難しいのです。何でかっていうと、特に子どもを叱るときって、相手の何が悪いかとか、こうしなさいという命令は考えていても、自分がどう思っているかなんて考えていないことが多いんですね。
「親」とか「先生」とかは、子どもに大切なスローガンを教えていくことが大事だと思っていて、そこに「自分」を持ち込むべきではないと思っている人がけっこう多いんです。

でも、ひとつのルールやスローガンに納得するということは、そうしないとうまく暮らせないという身近な現実の積み重ねです。自分と目の前の子どもとの間で起こっていることに、当事者として話していくことが一番伝わるんですね。

親や先生で説教が一番子どもに届かないのは、スローガンばかり語る人です。
  「人には優しく」
  「中学生らしい態度で」
  「みんな仲良く」
  「自分は自分」
  「一生懸命やれば結果なんて・・・」

こういうことは大事なことです。 でもそう簡単にできることではないし、とても抽象的でこのことばで現実の行動を変えられるようなものではありません。 スローガンはスローガンとしてあって、それが大切と思っている、親や教師の生身の等身大の姿を「わたしメッセージ」で語ることの方が、ずっと子どもに届きます。

私は小学校の頃、ライバルだった子の椅子をふざけて引いて、彼女の尾てい骨にひびが入ったことがありました。 それはわざとではないということもできるけれど、わざとかもしれないと自分の中でざわついていて、親としてかなりあけすけな話ができるようになっても、この話はなかなかできずにいました。

でも、ある時子どもが自分ではあまり意識しないまま友だちを傷つけているということがあった時、初めて私はその話をしました。 その後、母と一緒に菓子折りを持ってあやまりに行った時の気持ち、体育の得意な彼女が見学する前でやった体育の授業がどんなにつらかったか、高校生になって彼女が陸上部で活躍していると聞いたとき、どんなに肩の荷が下りたか・・・。

子どもは子どもなりに、「えっ、おかあさんそんなことしちゃったの?」というショックはあったようです。 でも、自分にそんなつもりがなくても人を深く傷つけることはその人も自分も苦しめるんだということは、とてもよくわかってくれたようでした。

できればそんなことする人間だとは思われたくないけど、私はそれ以上でもそれ以下でもない、それを正直に子どもの前にさらして、たたき台になればいい、と私は「わたしメッセージ」から学んだ気がします。


それから、「わたしメッセージ」が言いにくいもう一つの理由は、相手に向ける怒りの感情、攻撃の気持ちを発散できないからです。 特に子ども相手だと、何かを教えたりしつけたり・・・という名目の元、実は相手を攻撃するために怒る、やっつけるための言葉というのがけっこうあるんですね。 

確かに、ただ怒りをぶつけたい時ってあります。 わたしメッセージなんかじゃ迫力がないんだから・・・と思う時もあります。 でも、それならそれで、今、自分はとにかく怒りを発散したいんだ、と自覚してほしい。 少なくともそれで、相手に伝わったとか、何かを教えたと勘違いしないでほしい。 そして本当に伝えたいこと、教えたいことは怒りの発散では届かないということを知っていてください。

それから、「わたしメッセージ」というととたんに言葉が優しくなって、怒っちゃいけない…と必死に怒りを隠した笑顔を浮かべて、「子どもが気持ち悪いって言いました。」という受講生がよくいます。
わたしメッセージだって、怒っている時は怒って言います。感情のボルテージが上がっているときは、感情的に言います。そういう時、本当にその人の言葉であるわたしメッセージは使い古された「あなたメッセージ」より数段迫力があるものです。

私はどうも、理路整然と説明するのが下手で、つい自分のエピソードになっちゃうんですが、何となくわかっていただけたでしょうか。

でも、私自身が「わたしメッセージ」を知って一番変わったのは、肯定のわたしメッセージが自然に言えるようになったことです。
「わたしメッセージ」は文句を言うときだけじゃなくて、相手のいいところを言う時にも使えるのです。この肯定は「あなたメッセージ」と「わたしメッセージ」ではすごく違います。

たとえば
   「ひとりでお使いできてえらかったねー。さすがはおにいちゃん!」

  こういうのは「あなたメッセージ」で、相手のいい事への評価なんですね。

  わたしメッセージは
   「一人でお使いして来てくれたから、助かったー。その間に洗濯物もたためちゃったよ。」 という感じ。


これ、ぜひ試してみてください。 子どものうれしそうな顔が違います。すごく自分が役に立って認められたっていう鼻になります。ぜひ、鼻に注目!

これは、評価ではないので、傍から見たらちっともえらく見えないことでも、言えるのがみそです。 私なんかよく、悔し泣きすると30分はおさまらない息子に、「おかあさん、5時まではあんたが泣いてご飯のしたくできないかなあって思ってたけど、20分で泣き止んでくれて、よかったー。」なんてやりました。

そして何より、私は人をほめるということがすごく苦手だったんです。 「ほめ育て」なんていうと、もうとっても自分にはできないと思っていました。 それが、肯定のメッセージはあいてをおだてたりするのではなく、自分の気持ちが自然に言えるので、言えるようになりました。 これは夫婦関係、その他の人間関係にもすごく役立っています。 それでも、はじめはやっぱり何だか言うのが気恥ずかしかったりしたけれど、言いはじめると慣れるし、言う様になると今まで見えなかった認めてあげたいことが見えるようになるんですね。 親って、よくないときは文句言うし、すごい時はほめるけど、普通のときとか、本当なら崩れちゃうのに何とか保っている時とかは「まあこんなもんか」みたいに表現しないことが多くないですか。
言葉にする、伝えるってとっても大事なことだと感じています。


© Rakuten Group, Inc.

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: