灰色猫のはいねの生活

灰色猫のはいねの生活

最終回


こんな時ばかりカンが良くなるのもちょっぴり考えものよね。
羽衣音はあたしといるだけで嬉し楽し大好きなはずなのに。
時折見せるようになった不安そうな顔。
そうしてある日とうとう
「こにゃん、居なくなったりしないよね」
なんて言い出したの。
あたしは内心ギクリとした。
けれどポーカフェイスで「にゃおん」なんて啼いてみた。
「こにゃんがいなくなっちゃたら、ブログだって続けられないよぉ。」
あたしは差し出された羽衣音の大きな手に、いつものように頭をすり寄せながら
「大丈夫だよ。」
と答えた。
「大丈夫。大丈夫だよ。」
そう言いながらあたしは喉をごろごろと鳴らした。
羽衣音はもう大丈夫。
あなたはこの1年間で見違えるほど生まれ変わった。
それは誰でもない、羽衣音自身が努力した成果。
これから先、どんなに苦しく辛いことがあっても、きっと乗り越えられる。
あたしたち猫族は「幸せと共にやって来て、不幸と共に去って行く」のが原則。
あたしは文字通り、あなたに幸せをもたらして、不幸と共に消えるから。
それを嘆かないで。
哀しまないで。
羽衣音に出会えて、あたしは本当に楽しかった。
だから、この1年は本当にあっと言う間だったの。
この派遣が終わったら、あたしは今度こそ暖かいドバイにでも行って、思いっきり羽根…もとい猫背をのばすわ。
高級ホテルのディナーを食べてお洒落なカクテルを飲んでエステでもっと美猫になっていい男とデートして。
思い切り楽しむわ。
そうしてまた次の派遣先へ行って、そうしたら。
それがまた終わったら、羽衣音。
今度はちょっぴり寒い北の魔境にでもバカンスに来ようじゃない?
だから。
さよならは言わない。
「こにゃん」じゃなくても。
茶色のしましま猫じゃなくても。
たぶん...きっとまたあたしは羽衣音に会える。
その時、あなたはもっと幸せになっているはず。
そう、信じているから。


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