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2007/09/05
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カテゴリ: 短編、シリーズ物
【「終わり行く夏」を最初から読む】 【目次を見る】

 夕方、相変わらずの大雨の中帰宅した渉を、心配顔の母が玄関で出迎えた頃には、もうすっかり陽も暮れてしまっていた。
「随分と遅かったのね。裏の路地で土砂崩れがあったから、まさか渉が巻き込まれてるんじゃないかって、お母さんとっても心配してたのよ」
 和室の箪笥の中からバスタオルを取り出して渉へと手渡しながら、でも良かったわ無事で、とようやく安堵の笑みを浮かべて母 真紀子が言った。
 母は近所の総合病院に勤務する看護婦で、父が他界してからは女手一つで渉を育ててくれていた。
今日が日勤のため、早めに帰宅していた彼女は、帰宅するなりテレビで土砂崩れのニュースを目にし、それからは息子の安否が気がかりでならなかったのだと言う。
 土砂崩れの起きた時刻は十三時頃。それはちょうど渉達が美術館へと向かっていた頃の時間帯だった。
もしもあの時、普段通りに近道を通っていたら。きっと渉も夕凪も、ここには存在していなかったかもしれないのだ。


 翌日から渉は暇を見つけては海へ行き、夕凪に渡すための絵を描くことに励んだ。
木陰で絵を描いていると、打ち寄せる波の音や蝉達の声が一つの音楽のように耳に響き、とても心地良い気分になった。
 絵が完成に近づくと、それを受け取った時、夕凪がどのような顔をするかが楽しみで、自然と笑顔が零れた。

「できた!」
 八月末。ようやくそれは完成した。
碧海を背に佇む少年は、栗色の髪を風になびかせ穏やかに微笑む。
水面には銀の陽光がきらめき、空の淡い水色と海の鮮やかな紺碧が少年の姿を余計に清廉で美しく浮かび上がらせる。
 渉自身全力で取り組んだので、今回の絵には意外と自信があった。
明日これを彼に渡すんだ。そう考えているところへ、母から庭の水遣りを頼まれ、渉は二階の自室から降りて玄関の外へ出た。
水遣りをしている途中も、明日夕凪に描いたばかりの絵を渡す瞬間が楽しみで、どうにも落ち着かずそわそわした気持ちだった。
続く






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最終更新日  2007/09/05 10:31:57 AM
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