しかたのない蜜

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スザク×カレン 「モザイク カケラ」 4



 スザクは浮き立つ足取りで、カレンの元に向かった。
 きっといつものように、彼女は喜びいさんで自分を迎えてくれるのだろう。
 が、今日のカレンは明らかにいつもと違っていた。
 まず最初の頃のように牢屋に入れられている。
 そして、顔からはうち解けた笑顔が消え、代わりに凍り付いた表情が張り付いている。


 嫌な予感がして、スザクはカレンに歩み寄った。

 カレンが鋭く叫ぶ。

「こっちに来ないでっ! この卑怯者!」

「そ、そんな……」

 突然の事態に戸惑いつつも、スザクはカレンの牢獄に自分も入った。途端に、カレンの
平手打ちが飛ぶ。

 痛みを感じている暇はなかった。


「この卑劣漢! 妙な力で私を洗脳して、よくも、よくもあんなことを……」

「そんな、カレン、違うんだ!」

「いや! いや! 離して!」

 泣きながらカレンがおのれの腕から逃れようとする。
 昨日まで、あんなに自分を愛してくれていたカレンが。

 彼女を離したくない。

 その一心で、スザクはカレンを抱きすくめ、強引に押し入っていた。
 カレンの叫び声が単なる怒声から、やがて甘いうめきに変わっていく。
 彼女の体は、確実にスザクを覚えていたのだ。

 やがて、カレンは高みに達し、スザクの腕の中でのけぞった。

「あっ――!」

 強く抱きしめると、カレンは小さくつぶやいた。

「スザク……」

 その声が慈しみに満ちていると思うのは、スザクの気のせいだろうか。




 身繕いを終え、宮殿を出るとすでに夜はとっぷりと暮れていた。
 一人の少女がじっと自分を見つめているのに気づき、スザクは脚を止める。

「君はいったい何を企んで、こんなことをしたんだいアーニャ? いや……別の人」

 アーニャは優雅な仕草で肩をすくめる。

「最初考えた計画が失敗だったって分かったから、ギアスをキャンセルしてもらったの。このままじゃ、あなたあの子に勝てないわ――ルルーシュに」

 スザクの目がギラリと光る。

「ルルーシュっ? やっぱりゼロはルルーシュなんですかっ?」

「それを確かめるためには、カレンにこれを注射しなさい」

 そう言ってアーニャが差し出したものは注射器とアンプル――リフレインだった。



 翌日。

 リフレインを持ったスザクは、カレンのいる宮殿へと向かう。
 きっとそこには、憎悪に満ちた彼女がいるのだろう。
 魔法が解け、苦い現実に戻った姫君が。

 そしてスザクも、ゼロ――ルルーシュを追い詰めるという本来の目標に立ち返った。

 もう確信している。

 カレンは二度と、自分に心を許してくれない。

 あの甘やかな日々は、すべてギアスが見せたまやかしだったのだ。

 それでも、スザクはそれを忘れることができなかった。




 カレンのいる宮殿に脚を踏み入れ、リフレインを取り出した時でも。




                           第一章 fin



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