波と戯れるように  風に揺れるように

波と戯れるように 風に揺れるように

2013年07月11日
XML
テーマ: 寂寞の中で(1008)


頭の中にどれ程の言葉が浮かんでは消え、消えてはまた違う言葉が浮かび、私はどう返事をすれば良いのか分からなくなっていた。
そんな様子の私を見ながら

「まあ 玲人には近づかない方がいいわよ、
と言っても挙式が済めば顔を合わせることも無くなるけど。
玲人は私のものなの。
麻由美さんは挙式当日までこのウエディングが無事に終わらせるように気を使ってね。
それだけの話し。
あっと 当日には必ず婚姻届を用意してね、
必ずお願いね」

麻由美が言葉を無くしてただ彰子の顔を見ている間に彰子は自分の言いたい事だけを言って席を立った。

暫く呆然としていた麻由美はアイスティの氷がカランと立てた音に我を戻した。

あの日、玲人が私を抱きしめて泣いた夜、玲人は何を思って泣いたんだろう?
入り込んではいけない領域に麻由美は足を踏み入れてしまいそうな自分を抑える事が出来ずにいた。
彰子と別れてから迷わず玲人の名刺を見ながら携帯番号を押していた。
あ いけないと思った時に玲人の声が

「はい 高橋ですが・・」

「あ あの あ・・」

「あっ 麻由美さん 麻由美さんですね」

 玲人の弾んだ声が耳に届いた。

「あの えっと お仕事中ですよね ごめんなさい」

「いいえ いいですよ、嬉しいなあ、
麻由美さんの声が聞きたいと思っていたところですから」

「えええと あの・・」

「今日仕事が終わったら一緒に食事をしませんか?」

「いえ それは・・・」

「ああ 彰子の事を心配しているんですか?
大丈夫です、彰子は夜は家から出る事が出来ませんから」

「え?」

「そうと決まれば、早く仕事を片づけちゃいますから、
あの、また先日と同じ時間に僕の部屋へ来てくれませんか?いいですよね」

「いえ それは・・」

「大丈夫ですから、麻由美さんの嫌がる事はしませんから、お約束します。
では、お待ちしています」

麻由美は携帯を握りしめたままその場から動けなかった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2013年07月11日 19時59分00秒
コメント(2) | コメントを書く
[ショート・light&serious] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

コメント新着

鈴9063 @ Re[1]:今 思う事(08/14) せいやんせいやんさんへ 何の欲からも解…
せいやんせいやん @ Re:今 思う事(08/14) こんにちは。 いつ死んでも悔いのないよう…
鈴9063 @ Re[1]:迎春(01/10) せいやんせいやんさんへ あけましておめ…

お気に入りブログ

スッキリ~♪ ふらっとぴっとさん

君と見た夢 ゆうり154さん
PLUTOからの便り pluto2103さん
ようこそ 小雪牡丹… 小雪牡丹さん
超短編小説・ひ蜂his… ひ蜂さん
さくらと夢の助 夢の助さんさん
がらくた小説館 信兵衛9107さん
ひっこりんの冒険 ひっこりんさん
よくここが・・・ ふじ朗さん
Get your gun road movieさん

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: