波と戯れるように  風に揺れるように

波と戯れるように 風に揺れるように

2013年07月18日
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テーマ: 寂寞の中で(1008)


午前中に言ったことが夕方には変わる程になっていき、
沙希はその為に衣装や調理やアレンジメントスタッフから大ブーイングを受けることになり、二人とスタッフの板挟みで次第に憔悴してきた。
そんな沙希の秘密のお楽しみは玲人からの夕食のお誘いだった。

「ねえ 沙希、今夜一緒に食事にどう?」

同僚たちや麻由美の誘いに沙希は

「もうね、疲れちゃってね、夜は早く寝るからごめんね」

全ての誘いに断るようになった。

「ごめんね沙希、私の代わりに・・・本当にごめん」

「あははは いいの、いいの。
私がやるって言ったんだからさ、気にしないでね」

麻由美の沙希を労わる言葉に沙希は苦笑いしながら答えていた。

あれから玲人は麻由美の携帯に週2,3回程掛けて来るようになった。
内容は取りとも無いことで上映中の映画の話題だったり、
オフィス街の他愛もない噂話だったりで決して玲人は麻由美をマンションに誘うことはしなかった。
電話を切る前に必ず

「では、また連絡します。
おやすみなさい、良い夢を見て下さい、出来れば僕の夢を見てくれると嬉しいな」

その言葉に麻由美は心が満たされる思いだった。

そんなこんなで玲人と彰子の挙式があと一週間に迫って、丁度沙希がオフの日。
お昼休みに玲人から会社に電話が入った。
沙希がオフなので麻由美が代わりに受けることになったのだが

「えっと 込み入った話なんで出来れば余り他人に聞かれたくないのですが」

「沙希がお休みを頂いているので明日にでも」

麻由美が言い終える前に

「もし、宜しければ僕のマンションに来てもらえませんか?」

「それは・・・」

「僕の事を嫌いなったわけでは無いのなら今夜何時もの時間に待っています。
嫌なことはしません。
ですから来てくれますよね」

麻由美は返事が出来なかった、こんな時沙希が居てくれれば。

終業後、麻由美は熱に浮かされたように玲人のマンションに向かった。
いけないって分かっているのにここで踏ん張らないといけないって分かっているのに、
引き寄せられるように玲人の元に向かう自分を止める事が出来なかった。





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最終更新日  2013年07月18日 22時02分35秒
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