波と戯れるように  風に揺れるように

波と戯れるように 風に揺れるように

2013年07月19日
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テーマ: 寂寞の中で(1008)



「お待ちしていました。さあ こちらです」

麻由美の腕をそっと掴むと迷わず建屋の裏側に行き裏壁の前に立った。
そこに小さな電気メーターのような箱が有り、
玲人はカギを取り出して開けボタンを幾つか押した。
すると壁だと思っていた面がギィと小さな音をたてて開き、
玲人は麻由美の背中に手を回しながら入った。
そこには二基のエレベーターが有り、麻由美が何も言えずに俯いていると

「麻由美さんを怖がらせる事は何もしません、嫌ならいやと言って下さい」

一基のエレベーターに乗り込みながら玲人は何時もの階のボタンを押さずに違う階のボタンを押した。
戸惑いを隠せない麻由美に玲人は

「大丈夫です。怖がらなくても大丈夫です。麻由美さんには・・・」

やがてエレベーターが停まりドアが開くとそこは和風の家の前のような玄関先になって一軒の家のような造りになっていた。
扉を開けて玲人が麻由美をそっと家の中に誘うように招き入れた。

「ここは・・」

「ここは僕の家です。マンションの一つの階のワンフロアを全て家のように仕立てました。
と言ってもこれは僕では無くて父が残した物ですが」

「お父様が?」

「この部屋の事は彰子は知りません、教えて無いのです。
父はこのマンションを建てるとすぐに他界しましたので内装は僕の趣味です。
最初に来てもらった部屋は彰子の趣味が殆どですけどね・・・ まあ、彰子が勝手に模様替えをしてしまったのですが・・」

玲人は麻由美をゆっくりとリビングへ招き入れた。
その部屋は深い藍色を基調としたインテリアで統一されていて落ち着いた雰囲気をかもし出していた。

「あの、どうしてこの部屋に私を?」

「僕と彰子の関係をもうご存知でしょうか?」

「え?えっと、婚約者同志」

「あははは まあ そうですけど、それ以外に聞いていませんか?麻由美さん達は同業者から色々な情報を収集しないのでしょうか?」

「あ あの・・・」

「いいんです、知っているのですね。もう何軒の式場で同じ事をしたのか、麻由美さんの所で5軒目です」

苦しそうに苦笑いをしながら玲人は話しを始めた。

「あの、どうして同じような結婚式を何度も挙げるんですか?何回も御姫様になりたいってことかな?」

麻由美の素朴な質問に

「麻由美さんって本当に素直と言うか、単純と言うか・・毒されていないってことかな?」

嬉しそうに笑う玲人に麻由美は頬を赤らめた。






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最終更新日  2013年07月19日 06時03分16秒
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