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体にいいものにこだわって! 悠々粋亭
20150216~20疫学で考える健康的な食事
Last update 20150811
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≪ラジオあさいちばん「健康ライフ」≫より
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2015年2月16日~2月20日
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「疫学」で考える健康的な食事!
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東京慈恵会医科大学 教授 浦島充佳さんのお話です。
「疫学」とは何か?
統計学的なリスクを分析し、それを実践して病気の発生を予防したり、病気の治療を促
進したりする学問で、病気の原因とかメカニズムが分からなくても、病気の予防に効果
的な手段を探るということである。
「疫学」を上手に生活に生かして健康維持に繋げるためには、世の中に健康情報があふれ
ているが、一見いかにも健康に良さそうに耳に響く健康情報の内には、実際には統計学や
疫学でちゃんと証明された事実に基づかない偽の情報がたくさんある。
一方で、医学雑誌などに掲載されたものは、疫学者が入念にデザインした研究を行って、
十分な人数をしかも長期間に亘って観察した結果だから、多くの場合には疫学的に正しい
情報である。
健康になりたいと思って様々な方法を試す前に、科学的根拠がしっかりしたものであるか
どうかというのを知ることによって、効果的、安全にきちっと成果を上げることができる。
『タンパク質を考える』
タンパク質を多く含む食品の代表は「肉」である。
肉と健康について検証した研究で、ハム・ソーセージなどの加工肉が心臓病や糖尿病のリ
スクを高めるという研究結果がある。
この研究は、計10か国、121万8千人以上という非常に多くの人のデータを分析した結
果である。
具体的に赤身肉と加工肉で比較した分析で、赤身は100g増えても心筋梗塞や糖尿病のリ
スクは増えなかったが、加工肉の摂取量が一日50g増えるごとに心筋梗塞の発症リスクが
42%増え、糖尿病のリスクも42%増えたという結果が出た。
勿論、適量というものがあると思うが、普通の人たちが食べる量の範囲内であれば、赤身
肉を少々多く食べても病気の発症リスクを上げないという研究結果が出た。
一方で加工肉は、摂り過ぎると病気になるリスクが増えた。その理由は、加工肉には通常
様々な食品添加物が含まれていて、殺菌、発色剤で発がん性物質になるといわれる成分も
含まれている。
製造業者の方は、この物質は、許容量の半分以下しか使っていないので、問題は無いとし
ている。また業者として食中毒から消費者を守るという側面もあるので、なくすというの
も難しいが、疫学的には明らかなデータが出ているので摂り過ぎはよくない。
食材全体として摂ることはバランスのとれたいい摂り方であって、あくまで一つだけを極
端な量を摂るというのは体にとって悪いこともある。
タンパク質には動物性と植物性があって、一般的に植物性タンパクの方が体にいいという
イメージがあるが、必ずしもそういうことではない。
タンパク質はおよそ20種類のアミノ酸からできているが、人間にとって必要とされるア
ミノ酸の量を基準として算定された資料としてプロテインスコアというものがある。
例えば、卵は100点、豚肉90点、鶏肉87点、牛肉81点、豆腐は51点しかないので食
肉を一切食べないとタンパク質不足に陥る恐れがある。
プロテインスコアが高いから動物性タンパク質ばかりを摂った方がいいということではな
く、
少しずついろんな食材を毎日食べるということがポイント!
『脂質を考える』
脂質(脂肪)の種類は、大きくいうと「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられる。
「飽和脂肪酸」とは、バター、ラード、牛の脂など、動物性の脂に多く含まれる肉の白い
部分になる。普通の室温では固まりやすいもので、体に取り込まれると血管の壁などにへ
ばり付いて動脈硬化の原因にもなる取り過ぎに注意したい脂肪である。
一方、「不飽和脂肪酸」には、オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸、ごま油などに含
まれるリノール酸、青身魚に含まれるDHA、EPAなど様々あり、普通の室温でも液状でサ
ラサラしたもの。
一般的に植物性油など「不飽和脂肪酸」に含まれるものは、体にいいというイメージがあ
るが、注意が必要なものもある。
例えば、主に人工的に作られる「トランス脂肪酸」。含まれているものとしてマーガリンや
ショートニング(クリーム状のものでバターやラードの代用としてパンや焼き菓子に使わ
れている)で、「トランス脂肪酸」を摂り過ぎると善玉のコレステロールを悪玉に変える働
きがあることが分かっている。従ってこれの摂り過ぎにより高コレステロール血症を招き
やすい。
統計的、疫学的にも、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の発症確率が上がることが示されている。
65歳以上の高齢者を対象にした調査では「トランス脂肪酸」「飽和脂肪酸」の摂り過ぎで
認知症の進行が早まったという報告もある。
海外では「トランス脂肪酸」に対して規制が行われている国も多い。
WHO(世界保健機構)は、「トランス脂肪酸」の摂取量を、一日に摂る総エネルギーの1%
未満にするよう勧告している。
■具体的に食生活で気を付けたいことは、
◎パンにつけるマーガリンをオリーブオイルに変える
◎クロワッサンを食パンにする
ブラウンブレッド(全粒粉を使った茶色っぽいパン)だとなおいい
◎青身魚を多く摂る
◎肉の脂身はそぎ落として
『糖質を考える』
糖質(糖)は、いろいろ健康に影響を与えるが、その一つに「認知症」との関係が分かっ
てきた。
空腹時の血糖値が高ければ高いほど「認知症」になりやすい。
血糖値が高いといっても、糖尿病になるほどの水準まで血糖値が高くなくても、糖尿病レ
ベル以下の血糖値でも高ければ高いほど認知症の発生リスクが高くなる。
糖尿病でないからと言って安心して甘いものばかり食べていると、将来認知症のリスクを
上げていることになりかねない。
■「糖質を制限してダイエットをする」ということについて
「糖質制限ダイエット」は、短期的には効果があるが長続きしないという特徴があって、
しかも体には非常に強い負担がかかっている。
■「糖質と食事の関係」について
GI(グライセミック・インデックス)という指標を意識してみる。
GIというのは、ある食品を摂った時の血糖値の上がり方、そのスピードの度合いを知る目安
で、100が一番高い大きい数字で、大きい数字であればあるほど血糖値が急激に上がりやすい。
血糖値が急激に上がるほど認知症のリスクが上がり、太りやすくなる。
GIは低いほど良い。100がMAXだから60前後を意識すればよい。
例えば、
・「ご飯」であれば白米より玄米とか五穀米の方がGIが低い
・「麺類」でもビーフンやうどんは高い方で80以上、ラーメンが70、
次がそば・スパゲティで60前後、春雨は麺類の中で一番低く30
・「パン類」は、アンパンが一番高く100、フランスパンや食パンは90以上
ナンは80、ライ麦パンは57、全粒粉(ブラウンブレッド)49
・「野菜」にも順番があって、ジャガイモが一番大きくて89、人参・山芋が70台
とうもろこし・かぼちゃが60台
そういうGIという食べ物の持つ血糖値の上がりやすさについて頭に入れておくことが大
切である。
■「食べる順番によって」血糖値の上昇が変わってくる
すごくお腹が空いている時にいきなり白いご飯を食べると、GI(血糖値)が急に上がって
しまう。一方おかずとか、GIが低いものを先に食べておいて白いご飯を食べると、お腹が
少しこなれているので血糖値は急速に上がらない。順番を考えることも一つの方法。ある
いは一気に食べずにゆっくりよく噛んで食べることも血糖値を急速に上げない一つの方法
である。
『疫学から見た地中海食』
「地中海食」とは、地中海沿岸の諸国で、昔から食べられている伝統的な料理のこと。
まず典型的な地中海料理で一番多いのは、料理やドレッシングにオリーブオイルを使って
いる。その他には野菜を2皿以上、その内、少なくとも1皿は新鮮な野菜を使っている。
週に3回以上、豆を使った料理を摂る、あるいは週3回以上魚を使った料理を摂る。週1
回以上ナッツを使った料理を摂る。肉の脂身を極力摂らないようにする。オリーブオイル
を使ってゆっくり煮た、トマト・ニンニク・玉ねぎを使ったソースでパスタや大豆料理を、
少なくても週2回は摂る。お酒は一日ワイン一杯程度で、大勢の人とゆっくり時間をかけ
て楽しく食事を摂るというのも地中海食の特徴である。
この地中海食が疫学的にみて健康的だということが分かった。
日々の食生活を変えることによって、健康状態を良くすることが出来る。病気を避けるこ
とが出来るという強い疫学的メッセージである。
■どうしてそのような効果が出ると考えられるのか?
地中海料理は、鶏肉とか魚・豆が中心で、加工肉の摂取が少ない。
動脈硬化を招く飽和脂肪酸も少なく、魚にはDHAとかEPAという動脈硬化を予防するよ
うな油が多く含まれていて、野菜、豆類、芋類、ナッツにも食物繊維、ビタミン、抗酸化
物質などが自然な形で多く含まれている。オリーブオイルも不飽和脂肪酸の代表選手でこ
ういったオイルを摂ることによって悪い脂肪を摂る機会も減る。
もう一つ重要なポイントは、家族でゆっくり食べるということ。そうすると食物の吸収が
緩やかになるので、急に血糖値が上がることもなく、楽しみながら食べるということは長
続きするポイントでもある。このように様々な条件が重なって優れた健康効果を発揮して
いると考えられる。
毎食、地中海食を食べるということは難しいですが、参考になるところは、炒めものに使
う油をオリーブオイルにしてみるとか、おやつをナッツにしてみたり、ゆっくり食事をす
るなど、個人個人にあわせた工夫が望ましい。
大切なことは、共通項としてなるべく人の手が加わっていない自然界に近いものとして食
品を摂る方が健康によい。
例えば
◎食肉であれば加工肉より赤身の方が病気になりにくい
◎糖質にしても白米より麦飯とか胚芽米の方が血糖値が上がりにくい
◎脂肪についてもトランス脂肪酸という人工的に作った脂肪は体によくない。一方、オリ
ーブオイルのように天然に圧搾したものの方が体にいい。
◎鍋一つにとっても同じような原理で、鉄鍋の方が自然に近い。鉄鍋だと少しずつ無理な
く鉄分を吸収できるので体にもよいという結果になる。
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