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――ネグリ/ハート『<帝国>』の読解を手がかりにして
(日米高齢者保健福祉学会誌第1号 2005.3)
はじめに
本論は、グローバル資本主義下における<協働>の構成をテーマ化する。<協働>のテーマ化は、これまでも社会福祉の研究領域では重視されていたといえる。だが、グローバル資本主義下における「新自由主義(ネオリベラリズム)」の潮流のもとで、我が国において社会福祉基礎構造改革を今後どのように展開していくのかという問いが浮上している。とりわけ鍵を握るコミュニティーワークの構築という課題にとって、この<協働>をどのように構成し実践していくのかというテーマが提起されている。以上のような問題意識のもとで、本論では、この<協働>の構成を、相互的で対等なコミュニケーションを試みる実践として論じる。この<協働>の構成は、<帝国>と呼ばれるネットワーク的権力のもとでのコミュニティーワークの構築という課題である。
1では、ネグリ/ハートの記述する<帝国>と<協働>の実践との関係を論じる。本論では、ネグリ/ハートの記述する<帝国>を、個々人の生存を無際限に階層序列化するコントロール装置としてとらえる。<協働>の構成という実践の狙いは、この<帝国>の機能によって消されていた個の力を引き出すことである。
2では、この<協働>が「顔」をキーワードにして論じられる。<協働>の過程は、他者の呼びかけへと応答する相互的な過程である。本論では、<転移>に関する洞察を視野に入れながら、この<協働>の過程が論じられる。
3では、<協働>の構成に向けた実践事例を論じる。結論として、<協働>の構成は、他者との出会いにおける私自身の<決意>の経験において現実化することが示される。
1. <帝国>と生活問題の出会い
本論では、ネグリ/ハートのいう「<帝国>」を、個々人の生存を無際限に階層序列化するコントロール装置としてとらえる。以下の記述が参照できる。
「<帝国>の指令の一般的な装置は、じつのところ互いに区別される以下の三つの契機から成り立っている。すなわち、ひとつめは包含的な契機、二つめは示差的な契機、そして三つめは管理運営的な契機、これらのことである(中略)<帝国>は、差異の受け入れにさいしてはまったく先入観をもたないわけであり、柔軟性がなかったり、管理が困難であったりするために、社会的葛藤を引き起こしかねないような差異を棚上げにすることによって、普遍的な包含を達成する(中略)<帝国>的管理(コントロール)の第二の契機――すなわち、その示差的な契機――は、<帝国>の領域の内部に受け入れられた諸々の差異を肯定することを必然的に伴っている(中略)<帝国>的管理の示差的な契機につづくのは、指令の一般的経済=配分のなかでそれらの差異を管理運営し階層化する契機でなければならない」
(邦訳『<帝国>』アントニオ・ネグリ/マイケル・ハート著 以文社 2003. p.257-259. 原書Empire, Michael Hardt and Antonio Negri Harvard University Press.2000. p.198-199.)
このように、ネグリ/ハートのいう「階層化」とは、個々人の生活における無数の差異を包み込み、階層序列化する機能である。「<帝国>的管理(imperial control)」により、個々人の生活は、あらゆる場面で、あらかじめ数値化可能なフレームのなかに位置づけられる。個々人がどのような行動を取ろうと、また他者とどのような関係を結ぼうと、<帝国>の機能はそれらすべてをコントロール可能なデータに変換し得る。
現代においては、およそすべての専門化された機能集団・組織が、つまり現代において機能し得るすべての集団・組織が、この階層序列化の機能に組み込まれている。個々人が、職業的従事者、顧客、生産者、消費者等さまざまなあり方でそこへと組み込まれ、他者との関係をコントロールしながら、またコントロールされている。<帝国>は、世界空間全体におけるこうした階層序列化機能を通じて、みずからの正統性を生み出している。ネグリ/ハートは、このことを以下のように述べている。
「新しいパラダイムは、システムであると同時に階層秩序であり、中央集権的なかたちでの規範の構築であるとともに、世界空間全体にまで及ぶような広域にわたる正統性の生産である」(邦訳p.29. 原書p.13.) さらに、以下のように言われる。
「世界市場によって確立されるグローバルな差異の政治は、自由なゲームや平等によってではなく、新しい階層秩序の押しつけ、あるいはじっさいには絶えまない階層化のプロセスによって規定される」(邦訳p.202. 原書p.154.)
「個々人が他者との間で、生活の工夫や技を伝え合うこと」という実践の狙いは、<帝国>の機能によって消されていた個の力を引き出すことである。言い換えれば、日々の生活において埋もれていた問題とその解決方法を発見し創造していくことである。個々人の持つさまざまな力は、個々人を結びつけながら、触発し強化し合っている。このことが、個々人の<協働>の土台となる。しかし、個々人の力は、潜在的なものとして埋もれている。ネグリ/ハートは、次のように述べている。
「潜在的なものとは、私たちの理解では、マルチチュードに属する活動する諸力(中略)の集合である。(中略)潜在的なものから可能的なものを介しての現実的なものへの移行、それは根源的な創造の行為である」(邦訳p.448. 原書p.357.)
個々人の持つさまざまな力は、個々人を結びつけながら、潜在的な場でお互いに触発し強化し合っている。すなわち、<協働>とは、潜在的な場で結びついた個々人のネットワークである。以下では、この<協働>と<帝国>の機能の関係を論じる。
<帝国>の機能は、「個々人は対等ではなく、あらゆる点で階層序列化されている」というメッセージとして考えることができる。こうしたメッセージにより、個々人は分断され、<協働>があらかじめ阻止される。次の記述が参照できる。
「<帝国>の統合が、住民の多様な層の分断と区分化の新しいメカニズムを生み出している(中略)<帝国>の行政管理の問題は、この統合の過程を管理運営するということ、したがって分断され区分化された社会的諸力を馴致、動員、そして管理することなのである」(邦訳p.428. 原書p.339.)
個々人の<協働>は、日々の生活において埋もれていた生活問題とその解決方法を発見し創造していくことを目指す。逆に、<帝国>の機能は、個々人の生活のあらゆる場面を、データベースにおける「想定済みのケース」に置き換える。また、個々人の生活の工夫や技は、データベースにおけるデータ処理に置き換えられる。すなわち、<帝国>とは、データベースの<指令>に応じて個々人のコミュニケーションをあらかじめコントロールする装置である。これにより、個々人の他者との関係があらかじめコントロールされる。ネグリ/ハートによれば、「もしオルタナティヴが提起されうるとしたら、それは実質的に包摂された社会の内部から生じ、その心臓部であらゆる矛盾をはっきりとあぶり出すものでなければならないだろう」(邦訳p.436. 原書p.347.)
そこで、現実の事例を見てみたい。事例は、「生活保護の適正な実施」による受給申請拒否問題(2003年2月19日付朝日新聞)である。以下に記事を引用する。
「妻(60)の入院費が払えず、生活保護を申請した男性(60)。昨年9月、保護を認められると同時に、書類に「12月をもって生活保護を辞退します」と書くよう職員に言われたという。「3ヶ月後も妻の病気が治っていないかもしれない。書きたくない」と答えると、「保護を受けられるか、わからないよ」「まだ悪かったら、そのときに追加すればいい」と迫られた。男性は、リウマチの持病があって十分働けず、知人から10万円ほど借金があった。「書けば返せる」と思い、仕方なく書いた。妻は11月に退院。交渉して1月まで延ばしてもらって、打ち切られた。今はリウマチで痛い手をかばいながら土木現場で働く。妻と自分の医療費が月に1万5千円ほど。「もちろん、保護を受けて助かりました。けれど、今の土木現場はあと1ヶ月で終わり。その後はどうなるか……」言葉に障害がある1人暮らしの女性(63)は今月初め、福祉事務所の面接室でファイルに挟まれた見本を見せられた。「この通りに『辞退します』と書いてくれ」と紙とボールペンを渡され、生活保護の辞退を迫られたという。まだ、仕事も見つかっていない。「2、3日考えさせて」と言って紙を持って帰った。自分が悪いことをしているような気持ちになった」
文中の職員=ワーカーは、みずから問題発見して解決方法を考えることなく、ただ「この通りに書いてくれ」という形であらかじめ決まった「答」通りにクライエントをコントロールしている。また、クライエントの「2、3日考えさせて」という呼びかけに応える姿勢が一切ない。とりわけ、クライエントの「自分が悪いことをしているような気持ちになった」という言葉が注目される。個々人の言動は、「この通りに書いてくれ」という形で、あらかじめ用意された<指令>に応じてコントロールされている。こうして、「2、3日考えさせて」という相互的で対等なコミュニケーションの試みは挫折する。
次に、「情報のデータベース化」という事例を見る。「顧客主導型経営とは」というタイトルのインタビュー記事(『月刊福祉』August 2002 p.80.)における太田順久氏(ホテルインターコンチネンタル東京ベイ支配人)の発言を引用する。
「過去には外部機関を使って、サービスの覆面調査システムを導入しました。調査機関の職員が一般客として、実際に部屋の予約や食事をしながらサービスの評価をするのです。例えば、料理の中にわざと髪の毛を入れておいて、文句を言って、スタッフがどういう対応をするかということまで評価している。苦情処理の対応能力があるかも見るわけです。わざと難しそうなことを言って、それに対してどれくらいで返事が返ってくるかという部分も見ています。調査後1ヶ月くらいに、スタッフの対応、1問1答の会話もすべて事細かに記録された、分厚いレポートが来るのです。当該ホテルはこの部分は何点だけれど、この部分では何点という採点が細かく記されている。その結果、トータル何点でAランクといった、ホテル全体の評価が下されます。(中略)また、宿泊、婚礼、レストランとすべてのサービスのお客様に書いていただく、コメント用紙があります。それ以外にアンケート用紙もあります。これらをお客様に書いてもらって、全部データとしてパソコンに打ち込んで集計し、1ヶ月おきぐらいに集計し、その結果を点数化して、ネットで見られるようにしています」
ここでの「情報」は、「その結果を点数化して、ネットで見られるようにしています」とあるように、インターネット上のデータベースとなる。(注1) では、このデータベース化はどのようなテクノロジーを基盤としているのか。この点に関して、以下の事例(『夕刊フジ』2003.2.25.)が参照できる。
「日立製作所が開発した0.4ミリ角の極小ICチップ「ミューチップ」が増産体制に入っている。同社は0.3ミリ角の世界最小チップ開発にも成功、ユビキタス(ラテン語で「どこにでも存在する」の意味)社会と呼ばれる新たなネットワーク時代で“大きな”存在となりそうなのだ。砂粒や米粒より小さく、紙にも埋め込めるミューチップ。タグ(荷札)や伝票、物品そのものにチップを埋め込み、専用の装置から電波を飛ばしてデータを読み取って管理や追跡を行う。バーコードと違って、商品ごとに情報を入力できるのが特徴で、製造工程で個別のデータをROM(再生専用メモリ)に書き込むため、偽造防止効果もあり、金融、交通、物流、オフィス、スポーツ、エンターテインメントなど多分野での活用が予想されている」
このように、情報のデータベース化は、極小ICチップを基盤としている。例えば、現在、個々人の遺伝的特徴のデータベース化は、「DNAマイクロアレイ(DNAチップ)」と呼ばれる極めて微小な基板を使用している。
<協働>の実践は、こうしたコントロールの過程に介入して、個々人の力を潜在的な場で結びつける。以下、この潜在的な場を「無意識」と呼ぶことにしたい。<協働>の構成を新たなコミュニティーの構成へと繋(つな)げていくためには、この「無意識」において個々人がどのように結びついているのかを考察する必要がある。
2.内在的な場の構成
<協働>の構成は、上述した「無意識」に介入する。それは、他者の呼びかけへと応答する相互的な過程である。その核心には、ラカンのいう<他者の欲望>がある。個々人の欲望は、この<他者の欲望>によって、<転移>を通じて生み出される。(注2) ここで、以下の論点を提起する。<協働>の構成には、他者の欲望の伝達路となり<転移>を可能にする「顔」の機能が不可欠である。以後、この<協働>の構成過程を、「顔」をキーワードにして論じる。(注3)
我々人間は、「顔」を持つことによって単なる「動物」から脱却し、「自分の身体(からだ)」を持つことになる。言い換えれば、「自分の身体」は、我々人間が「顔を持つ」過程で、「意味のあるもの」として生み出される。このとき、「自分の身体」が溶け込んでいる環境は、「風景」と呼ばれる。単なる動物の「頭部」は、「風景」のなかで人間の「顔」となる。
ところで「風景」は、「他者の身体」をも溶け込ませている。その「他者の身体」は、個々人の欲望が向かう他者の「顔」を持っている。「風景」において、私の「顔」は、他者の「顔」へと向かう。この意味において、「風景」とは、お互いの欲望を介して、私の「顔」と他者の「顔」が出会う場である。「風景」のなかでお互いの「顔」へと向かう個々人の欲望は、他者の欲望によって生み出されるのである。
<協働>の構成において、個々人は潜在的な場で「顔」を介して結びつけられる。また、既存の関係が組み替えられながら、個々人の関係は新たに結び直される。次章では、こうした個々人の新たなネットワーク化を目指す、<協働>の構成に向けた実践事例を論じる。
3.新たな<協働>の構成プログラムに向けて
ネグリ/ハートは、「ケア労働」に関して次のように述べている。
「ケア労働はたしかに身体的、肉体的な領域に完全に属するものだが、にもかかわらずそれが生産する情動は非物質的なものである。情動にかかわる労働が生み出すものは社会的ネットワークであり、コミュニティーの諸形態であり、生権力なのである(中略)これらの非物質的労働の形態のそれぞれにおいて、協働が労働それ自体に完全に内属している」(邦訳p.378-379. 原書p.293-294.)
すなわち、社会的ネットワーク、コミュニティー、生権力を生み出す労働(ケア労働)
とは、<協働>が労働それ自体に完全に内属するものである。言い換えれば、<協働>はケア労働の核心にあってそれを支えるものである。そこで、以下において、この意味での<協働>の実践事例を論じる。それは、グローバル資本主義下における新たなネットワークとコミュニティーの構成である。
事例1.NPO『ニュースタート事務局』(千葉県)による「雑居福祉村」構想(2002年10月11日付朝日新聞による)
事例2.『青少年就労支援「育て上げ」ネット』(2002.6.13現在NPO10団体のネットワーク。事務局東京)による「コミュニティー・アンクル・プロジェクト」(2002年6月13日付朝日新聞による)
筆者は、2003年3月に、上記事例を素材にした2日間の集中講義を行った。そこでまず、講義の最終レポートにおいて学生(21歳前後)が上記事例についてまとめたものを以下にそのまま引用する。
事例1について
Kさん(女性)「従来の日本の福祉のあり方は、高齢者、子ども、障害者など、縦割りの活動であった。この計画は、高齢者のグループホームと同じフロアに子育て世帯向けの部屋や若者の共同生活部屋があり、広いらせん階段があるという構造の住居を作るというものである。お年寄りが介護を受ける一方で、子育てを助ける、ひきこもりの若者が職につく練習として介護や育児を行うというのである。診療所や居住者が働く店、地域の困りごと相談コーナーも設けたいという」
Oさん(男性)「いろいろな家族が一緒に住むことでサービスの受け手だけでなく、担い手にもなれる(中略)前述したような場所に一緒に住み、個人の自由なふるまいを互いに認め、必要な時に支え合うシステムが今日必要になってきている」
Sさん(男性)「大家族のもつメリット(子どもの面倒を祖父母が見ているから、父母は共働きでも安心していられた)という相互扶助(中略)この多世代交流型の住居は、もう一度、相互扶助を思い出させてくれ、その交流によって、高齢者や障害者が地域の人間として地域社会に参加できるようになり、ノーマライゼーションの理念の実現といえる。若者や子どもは、高齢者から今までの人生で得た知恵や技術を学び、高齢者は、若者や子どもから今の流行や遊び、歌を教えてもらい、昔をふりかえるばかりでなく、今を楽しく生きるのである。知らないもの同士が共に生活をして、周囲の住民と共に、全ての世代が、ふれあいをもつことが、未来の福祉のかたちであると思う」
事例2について
Mさん(男性)「ひきこもりの若者の就労をサポートする(中略)ケア面においては、雇う側と習う側の希望や不満はコーディネーターが調整し,町内の世話好きのおじさん(アンクル)が若者が一人前に育つように手助けをするというシステムを設置しており、アンクルは働く場を提供し、職業指導をしており、若者は初めは月3万~7万の授業料を払って仕事を習い、ある程度できるようになると無償で働き最後はその職で給料を得て自立につなげる方法をとっているのである。また、引きこもりの人は付き合いは苦手だが、まじめで責任感が強いため、その個性を生かせる職も多いということと、授業料を払って習うので育てる側の負担感が少なく、習う側も自分の希望や適性で選びやすくなっている」
Kさん(女性)「地域の経営者らに呼びかけて、1対1で職業指導をする「職親制度」に民間団体が取り組んでいる。一般にひきこもりの人は親子関係(特に父親との関係)が上手くいっていない場合が多く、「職親制度」はいわば親子関係を人工的につくり、就業を手伝っていくものといえる」
Rさん(女性)「このプロジェクトで画期的な点は4点ある。それは、1.指導者と若者の間で社会的行為が1対1でやりとりされるため、信頼関係を築きやすいこと、2.ひきこもりの人は、組織の中において適応しにくいため(引用者補足:適応しにくいという特性を生かし)、自分のペースで仕事ができること、3.地域住民の協力をもとにひきこもりの就労を支援しているため、地域の活性化になること、4.指導者である高齢者の能力が生かされているため、高齢者にとっても社会参加となる、といった4点である。このプログラムは、ひきこもりの若者だけでなく、指導者の高齢者や地域社会にとっても有益なことであると考える」
Kさん(男性)「活動内容は、月に3万~7万円の授業料を払って、農業、園芸や内装、OA機器、電気工事、そば屋などの指導を自分にあったペースで教えてもらえる。これらの指導をする職親は、ひきこもりをしていた人と比べるとずっと年上であり、コミュニケーションのとり方を教えるにはすばらしく上手というのも一つの利点であり、ひきこもりをしていた人の長所をうまくひきだすことができるのである」
以下は、上記二つの事例に共通する学生のコメントである。
Kさん(女性)「家族機能が縮小すると、社会と依存しながら生活していくことになる。地域での相互扶助、コミュニケーションは欠かせないものになっていくのは確実である。そのような「場」の提供、そして地域で暮らしていくための「共通の気持ち」を育てること、この両者を同時進行で進めていくことが必要だといえる」
これら事例の試みを、以後、<去勢>というテーマにおいて論じる。事例に見られる
<協働>は、以下のような特徴を持っている。
1.個々人の無意識が、私と他者との間で触発し合い、強化し合う過程
2.個々人の生活の工夫や技が触発し合う場の構成
これら2点についてはすでに論じたが、紹介した事例には、さらに次の特徴がある。
3.「顔」を介した他者関係の構成における<去勢>機能
とりわけ「コミュニティー・アンクル・プロジェクト」では、他者との出会いを通じた<去勢>の受容が課題となっている。先に、「一般にひきこもりの人は親子関係(特に父親との関係)が上手くいっていない場合が多く、「職親制度」はいわば親子関係を人工的につくり、就業を手伝っていくものといえる」とあった。ここでは新たな「父子関係」の構成が、職親にとっても、ひきこもっていた者にとっても、「顔」を介した他者関係の構成となる。この他者関係においては、みずからが成育した家族関係では不可能であった<去勢>が実現されていく。すなわち、他者との出会いにおいて、みずからが「万能である」という幻想が断念される。言い換えれば、それ以外の可能性を断念して選び取った一つの可能性の実現を目指していく場を、みずからの生活の工夫や技を獲得しながら創造していくのである。この過程に参加する者は、みずからの生活の工夫や技の獲得は、ただ他者とのやり取りの中でのみ可能になることを学ぶことになる。
<協働>の構成とは、こうした創造の過程である。それは、「顔」と「顔」を向き合わせる1対1の関係のなかで、他者の欲望に応えていくさまざまな場を組み合わせながら、個々人をネットワーク化していくことである。<協働>の現代的な意義は、他者関係をコントロールしようとする際限のない欲望を断念すること、すなわち去勢されることを学び、他者に依存しているみずからのあり方を受容することにある。この他者関係の経験において、個々人はある種の<決意>を迫られるだろう。このことを踏まえ、本論の最後に、具体的なネットワークまたはコミュニティーの構築という課題に向けた原則を提起する。
1. 他者の過去の生育歴にのみこだわるのではなく、むしろその特定の他者との関係において、自分が未来にどう生きていくか、例えば数年後に自分がその他者とどのようなあり方で生きているのかをビジュアライズする。
2. このイメージトレーニングは、その特定の他者との関係を、この私の未来として<決意>とともに選び取ることである。
<帝国>のコントロール機能が世界を包み込もうとする現在、<協働>の構成作業は、
他者との出会いにおける<決意>の経験において現実化するのである。
【注】
(注1) 個々人の遺伝子情報データベースをインターネット上で販売するという戦略のもとで、「ヒトゲノム解析」で一躍有名になったセレラ・ジェノミクス社が、現在「SNP(スニップ)(1塩基変異多型)」情報のデータベースビジネスを推進している。SNPとは、個人によって異なるDNA塩基配列の多様性(ゲノム多型)の一種であり、特定の場所の塩基1個のみが個人によって異なる状態のことである。およそ1000塩基に1個の割合でヒトゲノム全域にわたって分布していると考えられている。これらSNP(あるいはSNPS(スニップス)の組み合わせ)に対応した機能の解明によって、あらゆる「遺伝的特徴」に応じた個々人の階層序列化という戦略が現実に展開されていくことになる。例えば、遺伝子診断・検査の結果を受けて受精卵を「選別・改造」するかどうかに関わる個々人の選択は、データベース上の選択肢という形であらかじめコントロールされる。
(注2) 以下、<転移>について確認する。まず、生育過程の最初期において、母または養育者が私に向けている感情(または欲望:以下同様)が、「自我」の成立とともに、私の自分自身に対する感情へと向け替えられる。これが<転移>の基本である。このようにして、「私自身の感情」としての、「自分自身が好き、嫌い」といった感情が生まれる。次に、この自分自身に対する感情が、そのつど出会う他者へと向け替えられる。例えば、自分自身のこういうところが好き・嫌いだという、その自分に対する好き・嫌いな感情を他者に向け替えて、その他者が好き・嫌いになる。
以上は、次のようにまとめることができる。私たちは、養育者から、さまざまな感情をゼロ歳から絶えず無意識へと注ぎ込まれている。例えば、不幸にも「おまえは嫌(いや)なやつだな」といった言葉を養育者から言われ、またはそのように振る舞われていたとする。その場合、養育者の感情は、知らず知らずの内に自分自身の心の中に住み着いてしまう。すると、私たちは、そのつど出会う相手に対してそうした感情を向け替えてしまうことになる。つまり、この他者に対する自分の感情は、本当は母親や父親などの養育者に対する感情であったものなのに、無意識の内に、そのつど出会う他者、つまり恋人・妻や夫・子・友人・同僚や上司などへと向け替えられてしまうのである。
養育者から私に向かう感情(または欲望)は、実は「私」に対してではなく、「自我」成立以前の「無意識(ES)」に向かって注ぎ込まれている。従って、そのつど出会う他者に対する私の感情は、その無意識を経由して(すなわち無意識の内に)他者へと向けられる。従って、<転移>を自分自身だけの力で意識化することはできないが、その働きを認識した他者とのコミュニケーションを通じて初めて自覚できるようになる。この自覚によって初めて、私たちは自分自身の感情や欲望の癖をコントロールできるようになる。
(注3) 以下の議論では、ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリの『ミル・プラトー』7章「零年―顔性」(邦訳『千のプラトー』 河出書房新社 1994. 原書 Mille Plateaux,Gilles Deleuze, Felix Guattari Editions de Minuit.1980.)および斎藤環氏の『文脈病』の議論を参照している。
文献
著書
Empire, Michael Hardt, Antonio Negri Harvard University Press.2000.
邦訳 アントニオ・ネグリ/マイケル・ハート:<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性.以文社 2003
斎藤環:文脈病.青土社 2001
記事(雑誌掲載のみ)
「顧客主導型経営とは」:月刊福祉 August 2002 p.80.
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