黒色花

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第十五話「どんな奴も友達」


信吾は、買い物カゴをぶら下げ、街中を歩いていた。
なぜかというと、10分くらい前に・・・。

紅蓮「お使いいって来い。」
信吾「えー、何で僕が・・・。」
紅蓮「俺は、ゲーs・・・、じゃない、パトロールがあるからな。」
信吾「今、ゲーセンって言いかけたよな、な?」
紅蓮「このごろ、ツッコミ激しくなってきたなぁ・・・。」

とまあ、なんだかんだでお使いに行くはめになった信吾。
内容はいたってシンプル。
とりあえず、何か買う・・・。
信吾「シンプルにもほどがあるんじゃ・・・。」
信吾は、顔を下に下げてしまった、
そこに・・・。
???「おお!信吾じゃないか。」
信吾「・・・?あ、修羅さん。」
信吾が、顔を上げると、修羅が立っていた。
大きな買い物袋を抱えている。
今にも倒れそうだ。
信吾「月光さんは?」
修羅「俺が、少し悪戯しただけでこのありさまだ。」
信吾は、心の中でこう思った。
どんな悪戯をしたら、こんな目にあうんだ?
だが、口でツッコムのも、少々気が引けるので、心の中でツッコンだ。
信吾「月光さんがいないって言うことは、お一人で?」
修羅「いや、もう一人いたんだが、どっかにいってしまってな、シャワーズの水美(すいみ)というんだ。」
信吾「なんですか、その変な名前。」
信吾がツッコミを食らわすと・・・。
???「おーい、修羅兄さーん!」
修羅「お、アイツだ。」
信吾が、後ろを見ると、きれいに二足歩行しているかわいらしいシャワーズがいた。
信吾は、一瞬ドキッとした。
信吾(可愛いな・・・、結構。)
その瞬間、信吾に悪魔の矢のように次の言葉が刺さった。
修羅「あいつな、ああ見えても、♂なんだよ。」
信吾「え?」
修羅「いや、だから♂なんだよ。」
信吾「あんな可愛いのに?」
修羅「そ、俺も可愛いと思うのだが、♂って言うことが分かっているとやっぱり気が引けるよな。」
信吾「そ・・・、そうですか。」
信吾は、ハアっとため息をついた。
水美「ハアハア・・・、兄さん、何処いっていたの?」
修羅「おめぇが勝手にどっかいったんだろ、もう離れるなよ。」
水美「もう・・・、あ、可愛い!この子は?」
修羅「ああ、信吾って言うんだ、俺の友達の紅蓮の・・・、何だ?」
信吾「友達でいいです・・・。」
♂だと分かっていても、こんな可愛いらしいシャワーズが目の前だと、やっぱり、モジモジしてしまう信吾だった。
水美「きゃー!モジモジした所も可愛い!私と友達になろ!」
信吾「いいですよ・・・。」
まだ、モジモジしている信吾であった。
その時、一瞬、ある事が脳裏をよぎった・・・。
アレ?一人称私?僕、頭豆腐になった?訳わかんね。
信吾「あなたなんで一人称私なんですか?」
水美「私、♀として育てられたの、♂だけど。」
信吾は、なるほどと手をたたいた。
修羅「何だ、水美、暇なら、こいつのうちによっていくか?って言うか俺も暇、そして休みたい。」
水美「んじゃ、行こうか!」
そう水美は、言うと信吾の手をつかんだ。
信吾「~~~!」
水美「アレ?どうしたの?顔赤いよ。」
信吾「いや、あの、その・・・。」
水美「照れているの?可愛いな~!さ、案内してよ、あんたの家に!」
修羅「そ、行くぞ。」
信吾「ははは・・・、はい!」
信吾は、顔を真っ赤にしながら、紅蓮たちの元に戻った。
その時、信吾は忘れていた。
彼女・・・、いや、彼が♂であることを・・・。
そして、買い物を忘れていることを・・・。
信吾「ここです。」
信吾は、結局、紅蓮たちの家に、招待するハメになった。
水美「おじゃましまーす!」
信吾「ああ、待ってくださいよ!」
なんも躊躇なしに、入っていった、水美を信吾は追いかけた。
紅蓮「ん?修羅じゃねーか?どうした?」
紅蓮は、ゲーs・・・、じゃなくて、パトロールから帰ってきたようだ。
修羅「何、お前のうちによらせてもらおうとしただけさ、ってお前何処いってんだ?」
紅蓮「ゲーs・・・、違う、パトロールから帰ってきたのだ。」
修羅「お前、ぜったい、ゲーセン行ってたろ?」
紅蓮「さ・・・、さあな・・・。」
紅蓮は、わざとらしく、口笛を吹いた。
その頃、信吾は・・・。
信吾「もお、勝手に入らないでくださいよ、紅蓮さんがいないからよかったけど・・・。」
紅蓮「俺がどうしたって?」
信吾「え・・・、ぐ・・・、紅蓮さん・・・?」
水美「うわ・・・、カッコいい・・・。」
目をキラキラさせて、見つめる水美なぞ、ほっといて紅蓮は、信吾を見つめている。
紅蓮「いい度胸じゃぁないか・・・、信吾・・・。」
信吾「え・・・、ええ・・・?」
紅蓮「買い物ほっぽり出しやがって・・・、今すぐ行って来い!」
信吾「ひええええ!」
水美「紅蓮さん、やめてよ、信吾ちゃん怖がっているでしょ?」
紅蓮「信吾ちゃん・・・?」
水美「そ、私のボーイフレンドよ!」
紅蓮「ぼっちゃん、寝言は寝てから言いなさい。」
水美「わ・・・、私は女よ!」
紅蓮「ヘッ、何の事情があるにせよ、自分の姿は偽れねぇ、出直してきな。」
水美「むー!」
紅蓮「なら、信吾と一緒に、買い物行ってくるか?」
水美「え?」
紅蓮「行きたいのなら、お好きにどうぞって言う意味だよ。」
水美「なら、いこう!信吾ちゃん!」
信吾「え!?ええ!?」
動揺する信吾を、無視して、水美は、信吾を引っ張ってどこかに家を飛び出した。
修羅「やっぱ、あいつら、いい感じじゃん?」
紅蓮「♂同士だがな・・・。」
あのあと、信吾たちは、あらかた、買い物を終わらして、帰っていた。
帰路の路地は、昼でも暗い。
水美「どうしてこっちから帰るの?」
可愛い声で、水美が問いかける。
信吾「こっちの方が近道だからです。」
トボトボと歩いていると・・・。
ゲンガー「おう、兄ちゃん、金よこしな。」
信吾達の前に、ゴース、ゴースト、ゲンガーが現れた。
信吾「な・・・、なんですかあんた達。」
ゴースト「お金ちょうだい、って言ってんの、分かる?」
ゴース「そー、そー、分かる?ゲンガーさんは、ここらへんじゃ強いんだよ。」
水美「何よ!そんなに強いなら、自分らで稼げばいいじゃない!」
信吾「ちょ・・・、やめた方が・・・。」
ゲンガー「ほほお・・・、威勢のイイ譲ちゃんだ・・・。」
水美「やるなら、私がやるわよ!かかってきなさい!」
信吾「あーあー・・・。」
ゴース「ヘッ・・・、やるなら・・・、そこの兄ちゃんにやってもらおうか!」
信吾「ウエエエエ!」
ゴースト「そりゃいい、三対一みたいだな!」
水美「卑怯よ!そんなの・・・。」
信吾「大丈夫ですよ・・・、先に、紅蓮さんの家に帰っていてください、地図はこのとおりです、ここは僕が何とかします。」
水美「でも・・・。」
信吾「紅蓮さんから言われました・・・、どんな奴も友達だ、と・・・、友達は、守ります。」
その時、信吾は、心の中で、こう思っていた。
うわ、ヤベ、アイツら直接攻撃きくのかな・・・?
と・・・。
信吾「さあ、早く!」
水美「う・・・、うん!」
水美は、買い物カゴを持って、紅蓮の家に急いだ。
信吾「さあ、いつでもかかってきなさい。」
ゲンガー「男らしいじゃねぇか・・・、行くぜ!」
その頃、水美は、紅蓮の家についていた。
水美「大変よ!」
紅蓮「んお?どうした?」
修羅「なんかあったのか?もしかして・・・。」
修羅が、ニタニタ笑う。
水美「何考えてんのよ!」
水美は、修羅の顔面に、買い物袋をぶつけた。
修羅「ぶふぉ!」
紅蓮「で、どうしたんだ?」
水美「信吾ちゃんが、ゲンガーたちと喧嘩を・・・、早く助けに・・・。」
紅蓮「嫌だね。」
水美「な・・・、何で・・・。」
紅蓮は、ソファーからスクッと立ち上がると、水美に近づいた。
紅蓮「アイツの喧嘩は、アイツで何とかするだろう、俺は関係ないね。」
水美「・・・、酷いよ・・・、酷すぎるよ!」
紅蓮「・・・。」
水美「あの子は、私のために戦ってくれているんだよ!それを・・・。」
紅蓮「・・・、考えておく・・・。」
紅蓮は、フイッと後ろを向いてしまった。
水美「・・・、もういいよ・・・、私一人でも・・・。」
修羅「駄目だ、行かすことはできねー・・・。」
水美「何で・・・。」
修羅「お前が行ってなんになる、ただの足手まといなんだよ・・・。」
水美「・・・、うう・・・、うわああああん!」
紅蓮は、泣きじゃくる水美をみて・・・。
紅蓮「・・・、ちょっと出かけてくる・・・。」
紅蓮は、そういうと、外に出て行った・・・。
その頃、信吾は・・・。
信吾「畜生・・・。」
かなり苦戦していた。
ゴース「どうしたぁ?よえぇなあんた。」
ゴースト「あ、そうか、直接攻撃意味ないんだった!」
ゲンガー「そーだったな!あーひゃひゃひゃ!」
そう、信吾の攻撃術は、まだ打撃のみ。
ゴーストタイプのポケモンにはダメージを与えることはできない。
信吾「くそ・・・、新しい技、教えてもらうんだった・・・。」
ゲンガー「ハッハァ!もう、逃げ場はないぜ!おとなしく逝きな!」
ゲンガーは、ナイトヘッドの構えをした。
信吾(ごめんなさい・・・、僕、帰れそうにもありません・・・。)
心の中で、そんな言葉がよぎった瞬間・・・。
???「おめーの好きな言葉、生きるじゃなかったけ?」
聞き覚えがあるこの勇ましい声・・・。
信吾「もしかして・・・、紅蓮さん!」
紅蓮「おめーは、よくやったよ、俺よりかっこいいじゃねぇか。」
信吾「アハハ・・・、そうですか・・・。」
紅蓮「さあーて、弱いものいじめっぽいことをしていた、三人、かかってきな。」
信吾(弱いものって・・・。)
ゲンガー「てめー!ふざけやがって!行くぞ!お前ら!」
ゴース&ゴースト「おお!」
ゲンガー「どうせ直接攻撃はきかねーんだ!こわかねー!」
紅蓮「ハア・・・、やっぱりやんのかよ、おとなしく・・・、逃げたほうがよかったのにな!」
紅蓮は、ゲンガーを思いっきり殴り飛ばした。
ゲンガー「な・・・、なんで・・・。」
紅蓮「炎のパンチだよ、コレ、物理攻撃じゃなくて、特殊攻撃だからな、ブレイズキックも喰らうか?コラ。」
ゲンガー「うう・・・、まずいぜ・・・、こういうときは・・・。」
ゲンガー&ゴースト&ゴース「逃げるがかちぃぃぃ!」
そう叫ぶと三人は、消えた。
紅蓮「無茶しやがって・・・、おいかえるぞ・・・、何だねてんのか。」
信吾は、スースーと寝息をたてて、寝ていた。
紅蓮「しゃーねー、担ぐか・・・。」
紅蓮は、信吾をヒョイと担ぐと自分の家に向かった。
紅蓮「たっだいまー・・・。」
爆炎「やっと出番か・・・、修羅から話は聞いているぜ、お前、一人で大丈夫だったか?」
紅蓮「失礼だな、俺が、どこぞの馬の骨とも分からん奴にやられるとでも?」
爆炎「ありえんな。」
紅蓮「で、修羅。」
修羅「なんだ?」
紅蓮「ぼっちゃん・・・、いや、お姫様は?王子様をお届けにまいったぜ。」
修羅「フッ・・・、あそこだよ。」
修羅が、指差す先には、水美が泣き寝入りしていた。
紅蓮「さあ、王子様のご到着だぜ、わがままなお姫様。」
最初は、苦しそうな寝顔だったが、信吾を隣においてやると、水美は、幸せそうな寝顔を浮かべた。
紅蓮「ヘヘッ・・・、コレがお姫様からの報酬かい・・・。」
爆炎「ああ・・・、そうだ・・・。」
修羅「よかったじゃねぇか、イイモンもらって・・・。」
紅蓮「そうだな・・・。」
第十六話に続く・・・。


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