黒色花

第十七話「怪盗Ｒ」

静寂の中、時計塔は静かに立っている・・・。
時計塔のてっぺんには、一匹のポケモンがいた・・・。
「・・・、さあて・・・、次は何を盗ろうか・・・？」

朝、紅蓮たちは、いつもどおりの朝を向かえていた。
「おはようございますぅ・・・。」
だらしない顔で信吾が、居間に出てきた。
「おはよー・・・、ダリー、もうちょいねて・・・。」
爆炎も凄い顔をしている・・・。
「うぃーす、もっと早く起きろよ。」
相変わらず、紅蓮が一番早い。
「何でお前が一番早いんだよぉ？」
「そうですよぉ・・・。」
「知らん、ともかく朝飯食って、顔洗って、目ェ覚ませ。」
紅蓮は、そういいながら、ペラペラと新聞をめくる。
コンコン・・・。
朝っぱらから、玄関をたたいている人がいる。
「んん・・・、朝早い人もいるもんだ・・・。」
爆炎は、のそのそと歩き、玄関を開けた。
「ここが、万事屋「紅蓮」ですね、仕事をお願いしたいんですが・・・。」
一匹の、ピクシーが紅蓮に近づいた。
「そうですが、何か？」
まだ、新聞に目をやる紅蓮。
それを見ても、かまわず話を続けるピクシー。
「私、宝（ほう）と申します。」
宝は、そういうと名刺を紅蓮に渡した。
「んー？その宝さんが何の御用？」
「仕事ですよ、我が秘宝、大炎石（だいえんいし）を守ってください。」
と言うと赤光する宝石の写真を出した。
爆炎は、ヒョイと写真をとると、こういった。
「なんだぁ？凄いありがちな名前だなぁ・・・。」
「真実です、本物ですよ。」
「いまいちねぇ・・・、信じられません。」
「フン・・・、俺達にそれを誰から守ってほしいんだ？」
紅蓮は、パサッと新聞をたたむと、宝に目線を向けた。
「怪盗Ｒです。」
「・・・？Ｒだって？」
紅蓮は、首をかしげた。
「ロケット団じゃないですか？」
「そんなんじゃありません、普通にポケモンの怪盗です。」
「ほぉー・・・、聞きたいな、そいつのこと。」
紅蓮は、問いかけた。
「はい、怪盗Ｒは、大泥棒で・・・。」
「うん、ルパンね。」
紅蓮は、３秒くらいで、宝の説明を無駄にした。
「あのですねぇ・・・。」
「まあまあ、紅蓮はああいう奴ですよ、おいコラ紅蓮、仕事だ、行くぞ。」
「まあ、待て、今日の俺は、運勢最悪なんだ、出て行かない。」
「オイイイイ！」
「はあ・・・、ちゃんとできるんでしょうか・・・。」
あきれる宝に、信吾は。
「大丈夫です、ちゃんと何とかなります。」
「そ・・・、そうですか・・・。」
あの後、結局紅蓮は待機。
修羅、月光、信吾、爆炎のチームでいくことになった。
そして、屋敷に到着した、爆炎一行は、宝物部屋に行くことになった。
「で、あるからして・・・、大炎石は、炎の力を封じ込めた石です。」
廊下を歩く爆炎一行に、宝がなにやら説明している。
それを聞きながら、爆炎一行は黙々と廊下を歩く。
「おい、宝とやら、この廊下はいつまで続くんだ？」
修羅が少し険しい表情で問いかけた。
それもそのはず、長い廊下を何十分とあるいているのだから・・・。
「もう少しです、あと３０分ほどです。」
「思いっきり少しじゃねぇぇぇぇぇぇ！」
殴りかかろうとした修羅を月光が止める。
「ハイハイ、やめましょうね。」
「しっかし、修羅の機嫌は何で悪いんだ？」
「せっかく休めると思ったらテメーが電話してきたんじゃねぇか！ぶっ殺すぞ！コラッ！」
爆炎を指差しながら、修羅がギャアギャア騒ぐ。
「つきました、ここです。」
ドンッと大きく構えた扉は、何かを寄せ付けないように見える。
ともかくでかい、爆炎たちはそう思った。
中に入ると、窓がひとつもなく、扉はあの大きな扉だけ。
そして、真ん中に四角いガラスの入れ物のようなものがあるだけだ。
中には、大炎石が赤く光るのがわかる。
「・・・、なんもないじゃん。」
爆炎があたりを見渡しながら言った。
本当に何もない、ゴミひとつも見当たらない。
「こういうのを、万全なセキュリティというんですよ。」
宝は、自慢げにしゃべりだした。
「あの大きな扉からしか入れない、確実に捕まえることができるでしょ？」
「そりゃ、そうだが・・・。」
爆炎は、少し困った表情を見せた。
「何かご不満でも？」
「いや、普通の怪盗にそこまでするかね？」
「怪盗ですから。」
「いや、理由になってないから・・・。」
結局、この部屋で、怪盗Ｒを待ち伏せするはめになった爆炎一行。
そして夜、怪盗Ｒの指定した７時に近づいてきた。
「・・・、りんご。」
「ゴ・・・、ゴリラ。」
「ラッパ。」
「・・・、パイン。」
「ああああ！修羅んついたぁぁぁぁ！」
「ゲッ！何で俺ばっか・・・！」
どうせこないだろ、そう確信した爆炎たちは、しりとりを始める始末。
そして、なぜか修羅ばかり負ける。
「もう一回だ！」
「あんたもしつこいなぁ・・・、おとなしく負けを認めろ。」
「絶対次は勝つ！」
そして・・・、７時になったとき・・・。
「皆さん、７時です、怪盗Ｒがきますよ。」
月光が時計を見ながら言った。
「こないこない、こんな状態でどうやって・・・、あああ！」
「ん？どうし・・・、ああああ！」
爆炎と修羅が、大炎石を見ると・・・。
なんとガラスケースから大炎石がなくなっているではないか！
「うそーん！何で！？」
「とにかく落ち着きましょう！ええと・・・。」
「この程度？もうちょっとがんばればいいのに・・・。」
どこからか声が聞こえる・・・。
「誰だ！」
修羅が辺りを、見る。
だが、誰もいない。
「フフフ・・・、困ってる困ってる、さあ、見つけて御覧なさい。」
「・・・、修羅。」
「ああ、おそらく♀、どこにいる！」
「・・・、教えちゃいけないでしょ？」
果たして、怪盗Ｒを捕まえることができるのか！？
ガタン！ドタバタ！
大炎石がなくなったショックで信吾はパニクってしまった。
「どどどどうしよう！？」
「なーに、ディズニーのあのピンクブタみたいなこと言ってんだ！」
ドガッ！と爆炎のパンチが信吾に当たった。
「とりあえず、状況を確認しろ！」
修羅が、ビシッと月光を指差しながら叫んだ。
「ええと・・・、まず、石がなくなって、謎の声が聞こえてきたです！」
「そうそう、そして、まだ見つかっていないと・・・。」
またあの声が聞こえてきた。
「ちくしょ！どうすりゃいいんだ！」
「かー、なさけねぇ・・・、見てられねーぜ。」
「そ・・・、その声は・・・、紅蓮！」
「おおす、救世主が来てやったぜ、運勢最悪だってのによ。」
そういった紅蓮は、スタスタと大炎石の置いてあった中心のガラスケースに近づいた。
「・・・、やっぱり、このケースハナッから細工してあったようだな。」
「え？どゆこと？」
「よく見てみろ、マジックミラー加工だろ、しかも新種の物質、ムーンミラーだしよ。」
「ム・・・、ムーンミラー？なに、その物質？」
「この物質は、夜に近づくごとにマジックミラーの性質をもつようになる、しかも効果はちょっとずつ、アレみたいなもんだよ、たまーにテレビでやるだろ？絵が少しずつ変わっていくやつ、アレみたいに錯覚を起こすみたいなんだ。」
「へ・・・、へー。」
爆炎が感心するような口調と目で言った。
「で、大炎石は・・・、ここだ！」
紅蓮は、ガラスケースを叩き割った。
「やっりー♪大炎石みっけ♪」
紅蓮が、ガラスケースから手を抜くと、手には、大炎石が握られていた。
「え！？最初からそこにあったの！？」　
爆炎は、驚いた顔をしながら叫んだ。
なぞの声も驚きながら・・・。
「な・・・、何で！？わかったの！？」
「こいつらは、ガラスケースにへばりつくようにいた、やるならガラスケースからしかだませないだろうな。」
「く・・・、また盗みにくるからな！」
「・・・、フウ・・・、やっと終わった・・・。」
「だらしねぇな、さっさと見破れないのかよ？」
「あ！紅蓮さん！」
宝が紅蓮に近づいた。
どうやら、やっと騒ぎに気づいたらしい。
「ほれ、こいつだろ、守ってやったぜ。」
「あ・・・、ありがとうございます！ぜひお礼を・・・。」
「いいや、いらねぇ。」
「な・・・、何でですか？」
「どうやら、お礼なんてものはもらっている暇はないみたいだ・・・。」
「な・・・、何でだよ？」
「お客さんだ・・・、出てこいよ、零・・・。」
「わかっていたかい？紅蓮君・・・。」
「フッ・・・、わかっていたよ。」
紅蓮が、後ろを向いた。
「目的は何だ？零。」
「大炎石、ほしいんだよね。」
「渡してたまるか、運勢最悪の状態で来たんだぞ。」
「いや、関係ないから。」
爆炎がつっこんだ。
そして、零のほうを向くと。
「とりあえず、あんたを倒さないといけないようだな。」
「そのようですね。」
「紅蓮様、私もがんばります！」
「おう、やれやれ、すき放題暴れな、じゃあ・・・、いくぜ！」

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