黒色花

黒色花

第三十一話「記憶の世界ってベタだな。」


信吾が目を覚ますと、公園に立っていた・・・。
身に覚えがない場所だ・・・。
「僕はどうしてこんなところに・・・?わからないや・・・。」
わいわいと子供のポケモンたちが遊具で遊んでいるのが見える。
だが、砂場で一人で砂山を作る影がある。
パッと見たところ、一人で遊んでいるのだろう・・・。
「どうしたんだろ?あの子・・・。」
信吾はその子にそっと近付いた。
「どうしたの?遊ぶ人いないの・・・、ん?」
その影はリオルだった。
なんとなく懐かしい感じがする。
(僕・・・?いやそんなはずはない。)
「ねえ、お兄ちゃん。」
いきなり話しかけられた信吾。
一瞬ひるむと、周りと見渡し声の主を探しはじめた。
だが、誰も近くにいない。
「おかしいなぁ・・・、一体何処からなんだろう?」
「ここだよ、お兄ちゃん。」
自分の足元から聞こえてくるような・・・。
そんな感じである。
下を向くと足に小さなリオルが抱きついていた。
「な・・・、何か用かい?」
「うん、だって僕はお兄ちゃんだから。」
「は?」
意味不明の発言に混乱する信吾。
「何言っているの?君・・・。」
「だって、お兄ちゃん僕と同じ目をしているもん。」
ワケの分からない発言に理解に苦しむ信吾。
「ううん・・・、君の言っていることがよくわからないなぁ・・・。」
「分からなくたって良いよ、僕は困らないし。」
真顔で言われた言葉。
(なんかハラたつ・・・。)
信吾は握り拳を作りながら、こう思っていた。
「お・・・、お母さんはどうしたんだい?」
「もうすぐしたら来ると思う。」
「そうかい・・・、それじゃお兄ちゃんかえるから、バイバイ。」
しかしリオルは離れてくれない。
「離してくれよぉ・・・、お兄ちゃん行かないと。」
「いやだ、離さないよ・・・。」
(なんだ?この子・・・。)
いっこうに離す気配がないリオル。
というかどんどん力が強くなってきている気までする。
「僕はお兄ちゃん、お兄ちゃんは僕だよ。」
ササッと信吾の背中をよじ登ると、後ろから顔をのぞかせた。
だが、のぞかせた顔の目はさっきの無垢なる目ではなく、うってかわって血の色の紅い瞳に変わっていた。
「うわ・・・!」
思わず、リオルを叩き落としてしまった信吾。
ドタァ!
「大丈夫!?」
倒れたまま、ぐったりしているリオル・・・。
ゆすっても反応がない。
「ねえ、起きてよ、ねえってば・・・。」
返事がない。
信吾の心の中には不安がつのるばかりだ・・・。
「う・・・、嘘でしょ・・・?」
あとざさりしていく信吾。
ドッ・・・。
何かに当たった。
後ろをそーっとむくと・・・。
そこにはドアがあった。
「何でこんなものが・・・、ってあれ・・・?」
信吾は周りを見た。
公園ではなくどこかの家の廊下にたっていた。
リオルの姿もなくなっている。
「ここは一体・・・。」
ガタン!
いきなりの音に体をびくつかせる信吾。
どうやらドアから聞こえてくるようだ。
「何か起きているのか・・・?」
ドス・・・!
何かをさす音と同時に騒ぎもおさまってきた・・・。
ゴクッ・・・、とつばを飲む信吾。
ドアノブにのびる手は振るえ、息は絶え絶え、心の中は不安と恐怖でいっぱいだった・・・。
カチャ・・・。
ノブが回る。
ギィィィ・・・。
「うわ・・・。」
そこは目を疑う光景だった・・・。
家具も何もない部屋に血がべっとり木の床に飛び散っていた。
だが、死体らしきものは何もない。
「誰がこんなことを・・・。」
「僕だよ。」
何処からともなく声がする。
「誰だ!?」
部屋中を探しても誰もいない。
「気のせいか・・・。」
「気のせいじゃないよ。」
後ろから声がする。
後ろを向くとルカリオが立っていた。
「・・・!」
信吾はバックステップで間合いをとる。
「まあまあ、そんなに構えなくても、僕はあのリオルだよ、さっきはよくも叩き落してくれたね。」
「君があのリオル・・・、だって・・・?」
「そーだよ、痛かったなぁ・・・、首の骨折れたかと思ったよ。」
首をゴキゴキならすルカリオ。
痛そうな顔をしているが、言動からして何事もないように思える。
「やっぱ、君も誰かを殺すことに快感覚えているんじゃないの?ねえ。」
「う・・・、うるさい!」
信吾は両足のホルスターに備えてあるトンファーを構えた。
「殺れるまえに殺れ、それが紅蓮さんに教えてもらったことだ!」
「おお、怖い怖い、そんなんじゃもてないぞぉー?」
「ふざけるな!僕は君じゃない!僕は僕だ!」
ルカリオはハアとため息をつくと・・・。
「なら無理やりにでも分からせないとなぁ・・・。」
その頃、表世界では・・・。
「フウ・・・、いい加減おぬしもあきらめたらどうなんだ?」
「ウ・・・、ウルサイ!オマエニウチュウサイキョウノコノワタシガマケルハズハ・・・。」
「はあ、うざったいとはこのことだな。」
「ナニ!?ワタシガウザッタイダト!?」
「そうだ、スピードも知略もパワーも何もかも駄目だ。」
「ナ、ナラ・・・、コノコウゲキヲウケテミロォ!」
デオキシスは体を鞭のように変え、360度全方向攻撃をはかった。
だが、それをヒラヒラかわす黒影。
「ナ・・・、ナニィ!?」
「駄目だ、あせりで攻撃に隙ができている。」
「ナゼオマエニカテナインダ!マエノハナシデハナンカクセンシソウナカンジダッタノニ!」
「演技だ・・・、もう終わりにするぞ。」
「マ、マテ!オチツケ!」
「もう容赦はせん!」
ビュ!
黒影はデオキシスを一閃した・・・。
「ア・・・・、アアア・・・・・。」
デオキシスは胸の切り口からドンドン黒くなり始めた・・・。
「ナ、ナンダコレハ!?」
「拙者の刀の能力だよ、切り口から相手の細胞を腐食させ、消す。」
ジワジワと広かる黒。
終いにはデオキシスの体は真っ黒に黒ずんでしまった。
「グハア・・・、シヌノハ・・・、イヤダ・・・。」
「散って土になるがいい・・・。」
バサササササ!
デオキシスは一気に崩れ去った。
「フン、愚か者め。」
黒影は、その場に座り込んだ。
満足に立ち上がる力もなさそうだ。
「はあ、やっぱり使わないほうがよかったかな、コレを使ったの代償はすごいからなぁ・・・。」
「オッス、黒影。」
「その声は・・・、紅蓮・・・!?」
ゆっくりと黒影が立ち上がると、そこには紅蓮が立っていた。
黒くはなくなったが、右ほほに黒く「紅」と書かれている。
「ほお、頑張れば立ち上がれるじゃないか。」
「お主・・・、やはり・・・、零の・・・。」
「零様の行うことは偉大だ、この腐った世をなおそうとしているんだ。」
「あの、犠牲伴う「心器」でか・・・?たくさんの命を失って手に入る世なんて厠に流してやる。」
「相変わらず古い脳みそをお持ちのようで・・・、そんな人はこの世にいらない、さっさと消えろ。」
「フン・・・、死にかけの底力見せてくれよう・・・。」
その頃研究所内部では・・・。
「・・・、恋歌のヤツ大丈夫かな?やっぱり行ったほうがいいかな・・・?」
スクッと爆炎は立ち上がると、倉庫を抜け出した。
廊下は一応電気は通っていて、点滅しているがなんとか見えるぐらいの電気がついていた。
「さあて、何処に行ったのかな・・・?」
爆炎は走り出した。
もう、止まらない、泣かないと心に決めて・・・。
そして、恋歌は・・・。
「見つけたわよ!さあ!吸い込んだ信吾君をかえしなさい!」
「自分は吸い込んだものを戻すことはできない・・・。」
「とんだ掃除機ね、なら無理やりにでも出させてやるわよ!」
恋歌は腰のポーチから取り出したナイフを夢に投げつけた。
「こんなもの・・・。」
夢は指でいとも簡単にナイフを止めた。
「かかったわね・・・。」
「何・・・?」
ヂヂヂ・・・。
「しまっ・・・。」
ドウン!
ナイフから小規模の爆発が起こった。
「どお!?アタシ特製の火薬ナイフは!」
「・・・。」
モクモクと煙が立ち昇り、狭い廊下をどんどん飲み込んでいく・・・。
「ヤバ・・・、ヤツの姿を確認できないじゃない・・・、火薬の量間違えたかな・・・?」
「面白いことをしてくれる・・・。」
煙の中から声が聞こえる。
「やっぱり・・・、あの程度の攻撃では倒れないか・・・。」
「このように攻撃してくることは大体予想していた、そしてもう一つ・・・、詰めが甘い!」
煙の中から手が出てきた。
その手は恋歌の首をつかみ、ギリギリと締め付ける・・・。
「ぐ・・・、手がのびるなんて・・・。」
「反則・・・、といいたいんだろうが、あいにく特殊訓練を受けている身でね、手の取り外しはなんのぞうさないことなんだよ。」
煙から夢が何事もなかった顔ででてきた。
「この・・・、バケモノ・・・。」
「バケモノ?かまわないさ、自覚しているからね。」
「でも、これは予想していなかったでしょうね!」
恋歌はポーチからまたナイフを取り出し、手に思いっきりつきたてた。
「ヌッ・・・!だが恐れるにたらん痛みだ・・・。」
「まだまだよ!」
ドウン!
手で小規模の爆発が発生した。
おそらく火薬ナイフだろう。
「グウウ・・・!」
「キャ!」
痛みに耐えかね手は恋歌を離した。
「ゲホ・・・、このくらいしないと、怪盗の名が廃るわ!」
「なかなか面白いことをしてくれる・・・、だが・・・、お遊びは終わりだ!」
ムクッと夢は起き上がると、ブツブツと何かを言い始めた。
「なんかヤバイかも・・・、ハッ!」
恋歌は夢に向かってナイフを投げつけた。
もちろん特製爆薬ナイフを使った。
だが・・・。
シュウウウ・・・。
ナイフは飛んでいっている最中に砂となって消えてしまった。
「ウッソォ!?なんでェ!?」
「自分の心器が発動したからだ・・・、いくぞ・・・、ヘル・ワールド!」
ゴゴゴゴゴ・・・。
辺りを暗闇が支配していく・・・。
一体何が始まろうというのだろうか・・・。
続く・・・。


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