黒色花

黒色花

第三十四話「隕石山編終結」


煙の中に立っていたのは・・・。
「信吾じゃねぇか!」
なんと煙の中に立っていたのは信吾ではないか!
しかし目はうつろで焦点が合っていない。
しかも左手が爆炎を襲った手だった。
この状況から見て、爆炎に攻撃を仕掛けたのは信吾だろう。
「オマエ・・・、一体どうしたんだ!」
「ア・・・、アアア・・・。」
まるで耳に入っていない。
「駄目ね、さっさと片付けなくちゃ。」
銃口を信吾に向ける恋歌。
「馬鹿言ってんじゃねぇ!」
バシッ!
爆炎は恋歌のケロベロスをはたき落とした。
「って・・・!何すんのよ!」
「アイツは俺の仲間だ!手をだすんじゃねぇ!」
「あなたを襲ったやつが仲間だっていうの?」
恋歌から言われた無情な一声。
爆炎はその言葉には反論できなかった。
「くっ・・・。」
「今回の戦いは自分達の命の保護が優先よ、余計な感情は無用だわ。」
「でも・・・。」
「黙ってて!」
ドガガガガガ!
恋歌はケロベロスを拾うと、容赦なしの連射攻撃を信吾にお見舞いした。
「ホラ!ボケッとしてないで!そこの転がっているヤツの見ておいて!」
「転がってるって・・・、あっ!」
爆炎は辺りを見渡すと、腹部から多量の血を流している夢を見つけた。
ぐったりしていて生気を感じられない。
すぐさま駆けつける爆炎。
「だ、大丈夫か!?」
「何敵に情けかけてんだ・・・?自分はもう死ぬ・・・。」
「バッカヤロ!味方でも敵でも命は命!一個しかねーんだぞ!」
「・・・、フッ・・・、敵の命を救おうとは・・・、馬鹿なヤツだ・・・。」
「バカって・・・。」
「自分は・・・、一体何があったんだ・・・。」
「は?」
「さっきの攻撃の最中・・・、いきなり呪縛を破り、自分の腹から出てきたのだ・・・、何者なのだ?アイツは・・・。」
「ともかくしゃべんな!」
「ゴホッ・・・、もう自分は終わる・・・。」
「お、おい!ホントに大丈夫か!?」
「なぜ・・・、あの者は・・・、出てこれたのだ・・・?なぜ・・・、あんな強大な力を・・・、爆炎とやら・・・、あの者の力を止めるのだ・・・、望んでいない力を止めるのだ・・・。」
ガクッ・・・。
夢はうなだれてしまった。
もう息がない・・・。
「ちくしょう・・・、確かに敵だったけど・・・、命・・・、救えなかった・・・、すまねぇ・・・。」
爆炎は夢の亡骸をそっと置いた。
ドクン・・・。
爆炎は胸の奥に何か熱いものを感じた・・・。
「・・・?」
何かの声が聞こえてくる・・・。
(友達を守ってあげて・・・、僕も力を貸すから・・・。)
(誰なんだ・・・?オマエは・・・。)
(僕は君の中に眠る心器・・・、さあ僕を開放するんだ、今あの子は苦しんでいる・・・!)
(開放って・・・、いきなりどうするんだよ・・・?)
(イメージして・・・、僕をイメージするんだ・・・、そして君の信じるものを思い浮かべて・・・。)
次第に声が小さくなる・・・。
(早く・・・、僕はもう・・・。)
声は聞こえなくなった・・・。
(俺がイメージするもの・・・、そう正義を貫き、皆を守る力になる・・・!)
カッ!
気がつくと爆炎の手には鉄の大槌が握られていた。
柄の部分はほんのり暖かく、鉄の部分は荒々しく熱を発散している。
どうやらこれが爆炎の心器らしい・・・。
「ヘッ・・・、友達を救えか・・・、今からやってやらあ!」
バッ!
爆炎はいきなり恋歌の前にたった。
「ちょっと!危ないわよ!」
「危なくて結構!次は俺の番だ!俺が信吾を救ってやる!」
「その手にあるのは・・・、心器・・・?」
「よくわからねぇが、そうらしい。」
「凄い熱・・・、持っているだけでもやっとじゃない。」
「確かに、スゲェ熱だ、しかも力を吸い取られてるみてぇだな・・・、さっさと終わらすぜ!」
爆炎は大きく大槌を振りかざし、信吾に飛び掛った!
ドガゴォン!
大きな音とともにクレーターはもっと深くなった。
「スゲェパワーだ、ってこれ信吾大丈夫なのか・・・?」
「グアアアア!」
ドガッ!
「うおぶ!」
思いっきり信吾の鋼の手に吹っ飛ばされた爆炎、空中へ打ち上げられ、身動きが取れない。
「う・・・おおお・・・。」
「グウア!」
完璧に爆炎を捉えてホーミングジャンプをする信吾。
的確な判断といえるのか、本能というのか、焦点のあっていなさそうな目がしっかりと爆炎を捉えている。
「ちょっ・・・、やばいんじゃねーの・・・。」
ズガガガガ!
弾丸が信吾に命中した!
衝撃で若干バランスを崩した信吾は地面に落ちた。
ドタッ!
「いってー・・・、助かったぜ・・・。」
「た・・・、助かったなんていっても何もでないわよ!ただ私は・・・、あなたにかけてみたいだけ・・・。」
「・・・?」
「な、なにジッと見てんのよ!早く行きなさい!」
ズガガガガガ!
「おわ!銃うつな!」
爆炎は、信吾との戦闘に戻った。
「さあ、続きをはじめようぜ!」
「オ、オオオ・・・。」
(と強気でいってみたけど、もう限界なんだよなぁ・・・、もう一発殴る力しかねーんだよなぁ・・・。)
爆炎は大槌に徐々に力が吸い取られていくことを感じていた。
ゆっくりだが確実に力が吸い取られていき、もう大槌を持っていること・・・、いや立っていること自体難しくなってきている。
(さて・・・、一発で決めれるかな・・・。)
「グロオオオ!」
信吾の手が伸びて、爆炎に迫る!
「でえええ!」
ギリギリのところでかわす爆炎。
だが、容赦なく信吾の攻撃は続けられる。
ドガッ!
「ふおおお!」
ドバッ!
「おおおおう!」
ズバッ!
「くおおおおお!」
防戦一方の爆炎。
「やっべ、こっちの体力なくなるじゃんか・・・。」
バキッ!
「ギャー!」
ドシャ。
ブザマにも空中に打ち上げられた爆炎。
そのまま頭から地面に落っこちた。
「あでででで・・・、クッソー・・・。」
「フウウウ・・・。」
「アンニャロー・・・、何処までも世話がやけるぜ。」
ギラッ!
信吾の鋼の手は剣のような形状に変化した。
「ウッソー・・・、あいつ俺を殺す気かよ・・・。」
「フウウ・・・、グッ!?」
動きが鈍くなった信吾。
「タ、ス、ケ、テ・・・。」
ポロポロと涙を流した信吾。
その涙は苦しみから解放されたい一心での訴えだった。
「オマエ・・・。」
「タ、ス、ケ、テ・・・。」
「・・・、わかったぜ!全力でオマエを止めてやる!」
爆炎は思いっきり振りかぶった・・・。
「おおおおおお・・・!」
大槌がどんどん赤くなり、煙が出てきた・・・。
「いくぜ・・・!」
グアッ!
「フル・スイング(最大火力)!」
ドッゴオ!
凄いパワーとスピードで繰り出された一撃は一発で信吾を吹っ飛ばした。
信吾は叩きつけられそのまま意識を失ってしまった。
「ップハァ・・・、スゲェ・・・、なんつー破壊力だ・・・。」
ドタッ。
爆炎も気を失ってしまった。
「ありゃりゃ、二人とも気を失っちゃった・・・。」
恋歌はため息をついた。
「でも・・・、こんなんもいいか。」
恋歌はその場に座り込んだ。
恋歌自身もそうとう疲れているようだ。
「あー、終わったぁ・・・。」
そしてあの黒影が消し飛んだ場所では・・・。
「チッ・・・、紅蓮やりすぎだぜ・・・、せめて黒影の体くらい残しとけよな・・・。」
何者かは黒陽刀を拾い上げた。
「あー、めんどくさいくらい荒いな、使い方、しゃーねー、俺が大事に使ってやるよ。」
何者かはそのまま消えていった・・・。
続く・・・。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: