このプログラムでは「治療学」というキーワードを使用しています。さまざまな基礎研究の出口として、医療の改革と進歩を目標とすることを意味しています。
私が専門とする臨床免疫学の分野では、気管支喘息などのアレルギー疾患や、関節リウマチ、血管炎などの自己免疫疾患を対象に生物学的製剤をはじめとする治療薬の開発が急速に進んでいます。そして生物学的製剤の臨床応用により、免疫学は基礎医学の進歩を臨床医学に結びつけやすい代表的な研究領域になりました。さらに生物学的製剤の使用により新たに生じた臨床的疑問を基礎研究により解明することも多くなっています。すなわち、免疫学は基礎と臨床の双方向性の交流が活発なため、基礎と臨床の両者を理解し新規治療法の開発を行うスペシャリストを育てやすいフィールドと言えます。
また、千葉大学は、歴史的に免疫学の分野で基礎研究が活発に行われ、多くの実績を残しています。アレルギー疾患、自己免疫疾患をはじめとする免疫関連疾患の診断や治療においても多くの実績があります。それらは、大先輩から脈々と受け継がれてきたものであり、そうした伝統的な強さは、このプログラムにおいても継承されるだろうと期待しています。
さらに2012年10月には千葉大学医学部附属病院に、内科、小児科、耳鼻科、皮膚科が診療科の垣根を越え、アレルギー疾患に関する診療、研究、教育を行うアレルギーセンターが設置されました。本プログラムの学生はアレルギーセンターにおける実習に参加するだけでなく、アレルギーセンターが主催する医師や患者を対象にしたセミナーの企画や運営にも関与出来ます。とても貴重な経験がつめると思います。
自分の可能性を広げる機会を逃さない努力を
このプログラムの特徴としてもう一つ挙げたいのは、ローテーション演習です。この演習では、基礎と臨床の枠を超え、さらに薬学系の教員も加わり、研究室をローテーションし総合的な知識の養成が図られます。いろいろな研究室をまわって、多様性に富んだ知識や情報に触れることは学生にとって、とても大きなメリットです。一見、自分の専門とは畑違いに見える研究であっても、それに触れることで自分の知識の「幅」が広がります。狭い庭に高い塔を建てることはできないですよね? それと同じで、様々な知識や情報に触れることで自分の土台を広げないと、より高い場所には到達できません。いろいろな分野からの情報、価値観が入ってくることで、考え方も柔軟になります。こんな素晴らしいチャンスを、逃さないでください。