国内供給を見据えたワクチンの製造、流通体制の整備も進む。AZD1222についてワクチン原液はアストラゼネカからの輸入と並行し、JCRファーマ(兵庫県芦屋市)が製造を受託。第一三共の子会社である第一三共バイオテック(埼玉県北本市)と、KMバイオロジクス(熊本市北区)がワクチンを製剤化する。ワクチンの保管と配送は、Meiji Seika ファルマ(東京都中央区)が行う。
米バイオ企業のノババックスも、開発中のワクチン「NVX—CoV2373」の日本への供給に向けて武田薬品工業と提携した。武田薬品は、同ワクチンの承認申請や製造、流通を担う。厚生労働省から約300億円の助成を受けてノババックスから技術移転や生産設備の整備を進め、年間2億5000万回分以上の生産能力を構築する見込みだ。
—核酸ワクチンに注目が集まる理由は。
「従来のワクチンより安全性が高い可能性があるのが一因だ。生ワクチンや不活化ワクチンの場合、元のウイルスに感染してしまう懸念がある。こうした有害事象を防ぐため厳しく安全性評価を行うが、新型コロナワクチンは開発の緊急性が高く、時間や人が足りない。核酸ワクチンは細胞内で新型コロナのたんぱく質が作られて抗体ができる仕組みなので、接種しても新型コロナ感染症にかかる心配がない。安全性の高さから、迅速な開発が可能な核酸ワクチンが選ばれているのではないか」
—核酸ワクチンの弱点はありますか。
「感染過程を再現できないことだ。核酸ワクチンの場合、細胞内で自分以外のたんぱく質が作られるという現象の再現はできるが、体内に侵入した異物に対する免疫応答は起きない。核酸を打ち込む技術は以前からあったが、体内への侵入を再現できず免疫の誘導が不十分で有効性が低いといった課題があった」
—ワクチンによる有害事象の懸念は。
「ADE(抗体依存性感染増強)の懸念が大きい。ADEとは、ウイルスを中和できない抗体がウイルスにくっついてしまうことによって免疫細胞の中でウイルスが増え、感染が広がる現象だ。同じコロナウイルスの重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発も、ADEによって頓挫している。ADEを抑えられるような抗体を作る工夫が必要だ」
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