矢野経済研究所が10月14日に発表した「ウェアラブルデバイス市場に関する調査結果」によると、ウェアラブル端末の世界市場規模は2013年に約671万台だったが、わずか4年後の2017年には2億2390万台にまで拡大すると予測している。
普及の起爆剤となりそうなのが、腕時計型のウェアラブル端末だ。モバイル評論家で青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏が解説する。
「米アップルが来年初めに発売を開始する予定の『Apple Watch』は、スマホと連動してメールや電話の着信通知をしてくれるなど、手が塞がった状態でも様々な情報に接することができる点で注目されています。
また、身に着けることで得られる体温や心拍数などのデータを元にしたヘルスケアサービスの充実や、モバイル決済も取り入れる予定で、ウェラブル専用のアプリ開発もますます進んでいきそうです」
アップルに負けじと米マイクロソフト(MS)も年末商戦に照準を合わせたスマートウォッチの発売間近——との情報も海外メディアが報じており、“スマホの次”を狙う表示デバイスの覇権争いが本格化するのは間違いない。
そして、時計型よりも常に視界に入ることで利用シーンの広がりが期待されているのが、メガネ型のウェアラブル端末だ。
2013年より米国でテスト販売されている「Google Glass(グーグル・グラス)」は、医療、警察関連など特定分野での活用が試されているが、一般ユーザーへの発売に支障が出そうな事態も起きている。
軍務での利用が許可されていた31歳の米国人男性が、1日18時間もグーグル・グラス超しに表示される情報を見続けていたために、ネット依存症になったというのだ。四六時中、端末が手放せなくなる禁断症状に加え、夢まで小さなウインドウを通して見ていたというから重症だ。
「メガネ型デバイスは、スケジュールに合わせた行動支持や目的地までのウォークナビゲーション、重要なメールのテロップ表示、目で見た風景の写真撮影やクラウド連動など、まったく視線を落とさなくても操作することが可能なので、“究極のハンズフリー端末”といえる」(IT専門誌記者)
しかし、前出の木暮氏は「あくまでスマホの補助的な情報表示で十分」と日常使いの機能には警鐘を鳴らす。
「PCのディスプレイ画面をそのままメガネに映して細かい情報が表示されたとしても、決して見やすいものではありませんし、目の疲労やストレスも相当なもの。また、カメラを装着すると、プライバシー侵害の懸念から本人よりも周囲にいる人たちが嫌悪感を抱き、トラブルにも発展しかねません。
重要なメールのタイトル表示や矢印だけのナビ機能に限るなど、メガネ型端末は必要最低限の情報表示や機能だけに絞り込んだほうが一般への普及も早いと思います」(木暮氏)
東芝や日立、EPSONなど、日本でもメガネ型端末の研究開発を急ぐ企業は多い。だが、ウェアラブル端末の本分である「身に着けるメリット」から逸脱して商品化すれば、新たな情報機器として根付かないばかりか、せっかくの利便性もユーザーに届かないだろう。
(抜粋)
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