巨人と阪神のクライマックス・シリーズ(CS)最終ステージの第1戦は4−1で阪神が先勝した。1回表に3点を鮮やかに奪った阪神が最後まで試合を優位に進めた。援護をもらった先発・藤浪が伸び伸びと投げ、7回1失点の好投。百戦錬磨の内海−阿部のバッテリーの「狙い」を見極めた阪神打線と、若さで押した藤浪のピッチング。投打の歯車がかみ合った勝利だった。
阪神、楽天、巨人で15年間の現役捕手としてプレーした中谷仁氏は、捕手の目線から試合を分析。両チームのバッテリーの経験値が思わぬ形で、勝敗に直結したと見ている。
阪神打線はストライクを取りに、カウントを作りにいく球を積極的に振ってきた。
「内海、阿部さんのバッテリーは百戦錬磨。だからこそ、初回から慎重になるような重い(慎重な)展開にしないようにしていました」
最終ステージでは初となる伝統の一戦。満員のスタジアム。こういう独特な雰囲気の初戦では慎重になるのが通例。しかし、中谷氏はWBCなどビッグマッチを経験してきた2人について「逆にどんどんストライクを先行させて、リズムを出していきたかったはず」と見る。「ですが、逆に相手のリズムにはまってしまった3点でした」。
相手は初のCS最終ステージに進出。阪神の方こそ慎重に攻めてくると巨人バッテリーは読んだのだが、第1Sから勝ち上がったきたタイガースには恐れるものは何もない。どんどん攻め込んできたのが、巨人バッテリーには誤算だった。
藤浪の「荒れ球」に苦しんだ巨人打線
一方、「20歳の藤浪、鶴岡さんのバッテリーは力一杯、腕を振っていったことでいい意味で荒れ球がはまって好結果になっていました」。ピッチングにすさまじい勢いがあった。
適度なコントロールの荒れ具合、150キロ台のスピードボールが要所に決まっていたことで巨人打線に的を絞らせなかった。これが好投の要因となったと見ている。
捕手の視点から試合を見た中谷氏は「そういった意味では気持ちもリズムもコントロール出来ていた内海が点を失い、細かいコントロールを気にせず腕を振り、気持ちを全面に出した藤浪がいい結果を出したという面白い展開になりましたね」と話した。
巨人は満塁のチャンスでセペダがゲッツーに倒れるなど、決定打が出なかった。ただ、中谷氏は「巨人打線は試合間隔が空いている感じもなく、あと1本が出なかっただけでした」と話す。
本塁打を打った阿部、長野や坂本にもヒットが出ており、「心配はいらないと思います。試合勘が戻ってきてないということはない」。結果的にチームは1点しか取れなかったが、あくまで「(藤浪の)荒れ球にはまっただけだと思います」と分析しており、2戦目以降、点が取れないということはなさそうだ。
これで巨人のアドバンテージはなくなった。「カタチ的に1勝1敗になってこれから本当に互角の勝負になりそうです」と話す中谷氏は次戦以降も捕手の視線から試合を注目して見ていく。
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