電車内の車掌さんのアナウンスって、独特ですよね。人気お笑い芸人・中川家の弟・礼二さんがしばしば物まねする京阪電鉄のアナウンスもそうですが、鼻が詰まったような声とくねくねとしたイントネーションは強く印象に残ります。あるいは、音楽ユニットSUPER BELL”Zによる車掌アナウンスと音楽をミックスさせた曲が頭から離れないという方も少なくないのではないでしょうか。
なぜ、車内アナウンスはこのように独特なものになるのでしょうか。一説によると、車内の雑音のなかで音声が聞き取りやすいようにするため、というものがあります。他にも、ネットニュースの記事では「車掌の自己満足」「ノドをつぶさないため」などの説が散見されますが、これらは例外なくその根拠が示されておらず、当然ながら当事者への取材もまったく行われていないため、あくまで「説」にとどまります。果たして、その理由はどこにあるのでしょうか?
今回、東日本にある大手鉄道会社での車掌経験がある女性(現在は引退)に話を伺うことができましたのでそのインタビュー内容をご紹介します。
そもそも、中川家のケースは一部にとどまる
【質問1】独特の車掌アナウンスは乗客に聞こえやすいようにするためという説は本当ですか?
「かつてはそのような理由もあったようですが今は違います。そもそも、最近の車掌アナウンスで、中川家の礼二さんのようなアナウンスをしているケースは一部にとどまります。今日乗る電車のアナウンスを慎重に聞いてみてください。男性女性かかわらずわりと普通の話し方をしていると思いますよ。研修の際に車掌アナウンスで教育されたのはゆっくり間を置いて話すことです。にもかかわらず独特なアナウンスが印象に残りやすいのはテレビのモノマネに依るところが大きいと思います」
かつての伝統を踏襲しているケースがほとんど
【質問2】では、いまだに独特なアナウンスをしている人たちが一部いるのはなぜですか?
「会社の先輩でそのようなアナウンスをしている人はいましたが、それはあくまで自己判断によるものです。強いて言えばかつての伝統が好きで踏襲しているケースがほとんどです。だって、最近増えている女性の車掌さんであの独特のアナウンスをしている人って見かけませんよね。若い男性も同じです。そういった10年以上前の古い情報が無根拠なまま流布されていることにこちらも戸惑っていました。というのも、合コンでよく『車内アナウンスのモノマネして!』と言われましたが、そのときは本物が偽物のモノマネをすることになっていたので」
このように車掌アナウンスの独特さの要因というよりも、そもそも私たち乗客のイメージが更新されていないことが「独特」と思わせることの要因となっていることがあきらかになりました。ところで、車内アナウンスについてはこんな調査結果があります。
【質問】
電車の車掌さんや駅員さんの独特なアナウンスの仕方が好きですか?
・好き35.4%
・好きではない64.6%
3人に1人以上は車掌アナウンスに好感を持っているようですから、現在も独特なアナウンスを続けている車掌さんは、その伝統を守る貴重な存在として、今後も「次は〜あっきはばらでぇ〜す」と威勢良くアナウンスしていただきたいものです。
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