紅葉が見頃を迎えた山形・宮城県境に跨る蔵王山は、「お釜」と呼ばれるエメラルドグリーンの山上湖で知られる東北有数の景勝地だ。そこで異変が起きた。「お釜」の水が10月8日と19日の2度にわたり白濁したのである。
蔵王山を定期的に調査しており、19日の白濁を確認した山形大学理学部の伴雅雄教授はこう語る。
「10年以上にわたって蔵王山を観察してきましたが、湖面の一部とはいえ白濁を確認したのは初めて。今回の異常の他に、昨年1月以降22回の火山性微動(※注)が観測されました。今年8月には106回もの火山性地震とともに山頂の隆起が起きています」
白濁現象は74年前に同山が小規模噴火を起こした際にも見られた。今回も噴火の前兆なのか。地球物理学者の島村英紀氏が解説する。
「地下のマグマから出た火山性ガスが白濁を引き起こしたと考えるのが自然です。火山性微動が繰り返されていることから蔵王山は御嶽山よりも危険な山としてマークされていました。現在の火山活動を見ると、いつ噴火してもおかしくありません」
蔵王山は記録に残るだけでも773年から約20回の噴火を繰り返してきた。1895年の噴火ではお釜の水が沸騰し火山泥流が発生した記録が残っている。
「これからの季節は噴火の熱のせいで積雪が溶け、甚大な被害に繋がりやすい。火山泥流が市街地まで流れ込めば多くの死者を出す恐れがある」(島村氏)
現在は白濁が収まり水の色にも温度にも異常が見られないが、宮城県の担当者は避難小屋に不具合がないか確認したり、レストハウスに飲料水やヘルメットを配備したりするなど備えを進めている。
あと1か月もすると日本最大の面積を誇る蔵王温泉スキー場がオープンする。十分な監視態勢が必要だろう。
【※注】火山性地震とは火山およびその近傍で発生する地震のこと。火山性微動は数分から数時間揺れが続くもので、地震とは異なりマグマやガスなどの移動が原因の振動とされている。
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