財務省は財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会で公立小学校で導入された35人学級について、いじめなどの目立った改善が見られないとして、厳しい財政状況を踏まえて40人学級に戻すよう求める方針を示しました。
これに対し文部科学省はきめ細かな指導には35人学級が望ましいとしており、来年度予算案の編成に向けた調整が難航することも予想されます。
27日開かれた財政制度等審議会で財務省は、少子化にあわせて教職員の定数を減らしたうえで授業以外の業務の効率化などで子どもにきめ細かく対応すべきだという方針を示しました。
さらに平成23年度から公立小学校の1年生に導入された35人学級について、財務省がまとめた調査結果を示しました。
この中では、小学校全体に占める1年生のいじめや不登校の割合は、35人学級の導入前の5年間の平均がいじめが10.6%、不登校が4.7%なのに対し、導入後の2年間はいじめが11.2%、不登校が4.5%だとして、35人学級の導入でも目立った改善がみられないとしています。
これを踏まえ財務省は厳しい財政状況のなかでは、従来の40人学級に戻すべきだとする方針を示し、その場合は、教職員の数をおよそ4000人、国の負担はおよそ86億円それぞれ減らせるとしています。
これについて委員からは「教員の数は硬直的になっており40人学級に戻すのが本質だ」といった意見が出されました。
一方、下村文部科学大臣は、先週の記者会見で「きめ細かな指導には35人学級が望ましい」という考えを示していて、来年度予算案の編成に向けた調整が難航することも予想されます。
また、27日の会合では文部科学省が来年度から段階的に進めたいとしている幼児教育の無償化も取り上げられましたが、財務省は、例えば35人学級の見直しや教員の給与の削減によって出来る財源を充てることなどを求めていくことになりました。
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35人学級とは
公立の小中学校の1クラスの人数は「義務教育標準法」で上限が定められていて、小学1年生は35人、そのほかの学年は40人となっています。
小学1年生については、入学したばかりの児童が学校生活になじめない、いわゆる「小1プロブレム」に対応するため3年前、平成23年度から35人に引き下げられました。
また、小学2年生については法律上は40人学級ですが、自治体から申請があった場合に予算措置を行うことで平成24年度から実質的に35人学級が実現しています。
1クラスの人数は教員の配置に影響します。
例えば新入生が36人の場合、40人学級であればクラスは1つですが、35人学級になるとクラスを2つに分けることになり、担任の教員は2人必要になります。
文部科学省は「子どもたち1人1人にきめ細かい指導が可能になる」として、すべての学年に導入できるよう予算要求してきましたが、「効果が分からない」などとして認められていません。
今回、財務省がいじめなどの目立った改善が見られないとして40人学級に戻すよう求めていることについて、文部科学省は「いじめは発生件数ではなく把握した件数であり、いじめを早期に見つけ出そうという教職員の意識の高まりの結果だ」と話していて、「40人学級に逆戻りすると教員の負担が増え、学力や指導に影響が及ぶおそれがある」と反論しています。
また、下村文部科学大臣は先週の会見で「OECD諸国の中でわが国の教員がいちばん多忙感が強く、子どもの教育環境の悪化にもつながっている。大局的な教育におけるこの国の在り方という視点から、しっかり財務省に説明していきたい」と話しています。
吉川会長「きちんと議論すべき」
財政制度等審議会で分科会の会長を務める東京大学大学院の吉川洋教授は「教育が大事であることは大前提で共通の理解だ。1人の先生が担当する児童の数が少なければ、教育の質が上がるという考え方があるのは承知しているが、効果が上がっているかは別問題だ。35人か40人かというスローガン的なものではなく、ある施策がどれだけ効果を高めているかをきちんと議論すべきだ」と述べました。
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