○ソフトバンク2−1オリックス●(延長十回)
優勝目前で苦しんだ分だけ、ソフトバンクに劇的なフィナーレが待っていた。左中間へサヨナラ打を放って満面の笑みでバットを投げ出した松田を、ベンチから一斉に飛び出した選手たちがもみくちゃにする。目を潤ませた秋山監督は松田を熱く抱きしめる。ソフトバンクが3年ぶりに歓喜の瞬間を迎えた。
土壇場で、今季の打線の特徴である「つなぎ」の精神がよみがえった。同点の延長十回。今季、選球眼を高めて急成長した柳田が四球で出塁。犠打と内川の敬遠で1死一、二塁となっても「いかにつなぐかが大事」という信念を持つ4番・李大浩はボール球に手を出さず四球で後続に託す。そして1死満塁。「みんながつないだ気持ちを忘れずに食らいつく」と松田が低めの変化球に踏み込んでコンパクトに振り抜いた。
昨年まで2年連続で優勝を逃し、王貞治球団会長は「若手を伸ばすことも(球団の)テーマだが、2014年は勝つことが第一」。オフに30億円超を投資して大型補強を図った。だが、活躍したのは李大浩ら新戦力だけではない。若手の柳田、生え抜きの選手会長・松田らが脇を固め、MVP候補も挙げられないほど多くの選手が満遍なく活躍した。
背景には昨年の反省がある。一発はあるが淡泊な打撃が目立ち、5年ぶりのBクラス。今年は粘り強くつないで得点を奪うことを目指してきた。リーグ戦終盤の1勝9敗の失速時には優勝への重圧から大振りが目立った。「らしさ」を取り戻してのサヨナラに秋山監督は「全員でそういう場面を作った」と満足そうにうなずいた。
ここ四半世紀のパ・リーグで最終戦勝利での優勝決定は初。終盤の苦境を乗り越え「10・2」のドラマが生まれた。
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