
や生活必需品とすら定義されても何ら違和感を覚えない携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方を合わせて。以下同)。その急速な性能の向上と普及率
の上昇ぶりは、多種多様な周辺環境、状況の変化を連鎖反応的に引き起こしている。ソーシャルメディアの普及、音楽や映像などマルチメディア系エンターテイ
ンメントの消費性向の変化、いわゆる「歩きスマホ」問題など、数え上げればきりがない。今回は社会にも大きな影響を与えるこの携帯電話の普及状況につい
て、先日総務省が発表した 【電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表 (平成27年度第4四半期(3月末))】 や、以前内閣府発表の 【消費動向調査】 における最新公開値を反映させた 【携帯電話の普及率現状をグラフ化してみる】 などを合わせ、携帯電話の普及率推移を複数の視点・調査結果から集約していくことにする。
TCA発表値ベースでは121.6%
まずは別記事で毎月、2014年4月からは四半期間隔で状況の変化について確認中の、電気通信事業者協会(TCA)の契約数推移を用いて普及率を算出する。この値を日本の総人口で除算すれば、単純な「契約数上の」普及率は算出できる。日本の人口は 【総務省統計局内の「人口推計」】 から該当する年月の確定値を取得し、計算したのが次の図。ちなみにこの場合、老若男女すべてが計算対象となる。

↑ 携帯電話・自動車電話契約数と契約数を元にした普及率(-2015年、毎年年末現在)
年次ベースでグラフ化したが、今世紀に入ってからはいくぶん伸び率が低下していた。もっとも今件は、一様に右肩上がりの状況にあることに違いは無い。自動
車電話も含み、さらに用いている値が「契約数」で「保有・利用数」ではないこと(一人、あるいは1グループ、企業単位で複数保有している場合なども想定さ
れる)も考えると、普及率としてはあまり正確とはいえない。参考値程度に考えた方が無難だろう。
また、2011年以降を良く見ると、上昇カーブの勾配が再びキツくなる、つまり伸び率が上昇している。これはひとえにスマートフォンの浸透によるもの。ス
マートフォンに買い替えをしても、従来型携帯電話と併用する人も少なくないため、契約数は単純利用人口以上になる。また各携帯電話会社がサービスとして提
供している「親子割」「家族割」の浸透、さらにはスマートフォンへの買い替えの際に古い従来型携帯電話の契約を家族に引き継がせるサービスなども多分に貢
献している。その上、TCAの契約数には携帯電話とは言い難い契約数(通信モジュールなど)も含まれるため、その値による底上げもある。
消費動向調査では単身83.3%・二人以上95.3%(世帯ベース)
続いて政府関連機関のデータをベースにしたグラフを生成し状況を確認する。まずは 【内閣府の消費動向調査】 の結果を用いたもの。2002年以降の年次(3月末)データではあるが、携帯電話の普及率が掲載されている(「主要耐久消費財等の長期時系列表(EXCEL形式で掲載)」から)。

↑ 携帯電話世帯普及率(-2016年)(消費動向調査)(単身/二人以上世帯)
縦軸の最下方が0%ではなく60%であることに注意。また「単身世帯」は2005年分からのデータ公開となっている。その上で確認すると、2004年から2005年にかけて(「二人以上世帯」では)3ポイントほどの減少が見られる。この減少の原因は不明。

可能性としては内閣府の消費動向調査では項目名が単純に「携帯電話」とのみ記されており、PHSの項目そのものが見当たらないことから、統計の上でPHS
が含まれている可能性がある。この減少時期は、PHSの主力メーカーであるアステルの支部が次々にサービスを停止した時期とちょうど一致するからだ。
最新のデータでは二人以上世帯が95.3%・単身世帯が83.3%。前年比では「単身世帯」は普及率上昇がわずかに留まる一方、「二人以上世帯」では0.9%ポイントもの上昇を示す形となった。
なお2013年から2014年にかけて減少が起きている。こちらも原因を特定することはできないが、このタイミングで調査方法にいくぶんの変更がなされ、
「携帯電話」の保有に関する設問が単なる携帯電話から「携帯電話-スマートフォン」「携帯電話-スマートフォン以外」に分割されている。そして統計の上で
は「携帯電話(双方合わせて)」「携帯電話(スマートフォン)」「携帯電話(スマートフォン以外)」の3種類のデータが算出・公開されている。
今件グラフは「携帯電話(双方合わせて)」を基にしたものだが、回答者が回答時に多少の戸惑いを覚え、それが値に表れてしまった可能性がある。翌年に当たる2015年では再び値が増加に転じており、単純に調査方法の変更に伴うぶれと見て問題はなさそうだ。
総務省「電気通信サービスの加入契約数等の状況」では123.1%
もう少し以前、具体的にはNTTドコモによる携帯電話市場の独占状態が崩れた1980年後半からのデータが欲しいところ。そこで総務省の「電気通信サービスの加入契約数等の状況」を基にしたグラフ……だが、これはすでに 【携帯・PHSなど合わせて154.0%の普及率…総務省、2016年3月末の状況を発表(2016年)(最新)】 で生成済みなので、そのまま引用する。こちらは老若男女すべてを対象とし、携帯電話「のみ(PHSなど含まず)」のものである。

↑ 携帯電話普及率(総務省調査・単身者含む)(「電気通信サービスの加入契約数等の状況」ベース)(PHSなど除く、-2016年3月)(再録)
1995年まではほぼゼロに等しい値だった普及率も、それ以降は急速な上昇カーブを示し、10年後の2005年には約20倍の68.1%にまで上昇。中で
も1999年前後以降の伸びが著しいが、この時期には「インターネット接続サービスの開始」「カメラ付携帯電話の登場」など、携帯電話の魅力的な機能が相
次いで導入されている。これらが大きな成長の支えとなったことは疑う余地がない。
そして最新データ(2016年3月末時点)では123.1%。これは乳幼児からお年寄りまで全部を計算に含めた値である。

携帯電話を利用する際の技術的なハードルは、テレビと比べれば高い。しかし普及率を見る限り「携帯電話保有者を対象にしているから、この結果は特異な事例
であり一般には当てはまらない」との主張は、そろそろ時代遅れとなりつつある。もっともシニア層の保有率がまだ低めなのは事実。この点は引き続き問題視し
ていく必要がある。
ただし、例えば市場調査において「携帯電話経由だから、シニア層のデータが反映されにくいので参考にならない」との主張は、筋が通らないものとなりつつあ
る。固定電話やテレビにおいては、若年層で似たような現象(世代間格差)が生じているのは否めないが、それらの弊害は個々世代の普及率などを元にウェイト
バックを行えば、ある程度解消される。それと同じ手法を用いれば良いまでの話でしかない。

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