江戸時代の風習に、結婚すると「半元服」と称してお歯黒をし、子供が生まれると「本元服」として眉を剃るという、ひとつの通過儀礼がありました。お歯黒の黒は、他の色に染まらないという意味から、“貞女二夫にまみえず”の証として、既婚女性の象徴とされたのです。
初めてお歯黒をつけるときは「鉄漿付の式」というものを行いました。鉄漿親(かねおや)といって親類縁者の中でも福徳な女性が選ばれ、お歯黒の道具一式をもらってお歯黒をつけます。また、初めてお歯黒をつけることを初鉄漿(はつかね)といい、七ヶ所から鉄漿水をもらうという慣わしがありました。このように、お歯黒は江戸の女性たちにとって、とても大切な意味をもっていました。
また、お歯黒を施し、眉を剃った顔は何とも色っぽく見えるとされ、美しさの表現となっていきます。
一般女性のほか、京都、大阪では遊女や芸者が、また江戸では遊女がお歯黒をしていました。お歯黒で年齢、職業、未婚・既婚といった、いわばその女性のプロフィールまでも判別することができたのです。
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