John Wetton( ジョン・ウェットン。Bass)、 Geoff Downes( ジェフ・ダウンズ。Keyboards)、 Steve Howe( スティーヴ・ハウ。Guitars)、 Carl Palmer( カール・パーマー。Drums)のロック・カルテットは健在でした。すでに栄光を築いたミュージシャンばかりが集結し結成されたスーパー・グループは、デビュー作で成功すると消滅すると言われやすい中で、エイジアは2作目" Alpha(邦題: アルファ)"を1983年7月26日にリリースしました。その先行シングルが"Don't Cry"です。
これまでのキャリアにおける、特徴的なテクニックをやや抑えて、ポップ路線を前面に押し出して成功を収めたデビュー作" Asia(邦題: 詠時感・時へのロマン)"は1982年のBillboard200アルバムのYear-Endチャートで堂々のナンバー・ワンに輝き、これまでにないほどの成功を収めたのです(詳細は こちら )。CDがまだ到来していなかった当時はLP盤レコードが主流でしたが、同じくしてカセットテープによるミュージック・テープも合わせてリリースされていました。ミュージック・テープ版の"Alpha"にはLP未収録の" Daylight(邦題:デイライト)"がボーナス・トラックとして収録されていました(2014年にリリースされたplatinum SHM-CD盤の"Alpha"には収録されています)。今回リリースされたシングル盤"Don't Cry"のB面は、まさにその"Daylight"が収録されており、レコードで聴くには"Don't Cry"のシングルを買う必要がありました。
本作は主にジョン・ウェットンジェフ・ダウンズが中心となっており、スティーヴ・ハウの作品はリリース時点で収録されませんでした(platinum SHM-CD盤の"Alpha"にハウ作の" Lying to Yourself"がボーナス収録)。やはり個性のぶつかり合いが災いしたのか、本作ではハウのギターは前作ほど目立ってはいませんが、それでも聴けばすぐそれと分かるハウの音色には存在感はあります。アルバムA-2に収録されている The Smile Has Left Your Eyes(邦題: 偽りの微笑み)"においても、ハウの奏法が不必要なほどのポップなバラードの曲調ですが、やはり所々でしっかりと印象づけています。一方、キャッチーなロック・ナンバーの"Don't Cry"のイントロなどでは、通常のエレキでは出せないような高オクターブの音域が奏でられています。
"Don't Cry"は悲嘆に暮れている女性を慰めて元気づけるというような歌詞内容ですが、これとは全く正反対のプロモーション・ビデオでした。探検家(?)に扮したメンバーが危機に陥ったところに愛の女神ともいうべき女性が微笑みながら助けを差し伸べるふりして実は殺害していくという残酷なビデオで、火あぶり、転落、縛り付け、水責めなどあらゆる方法で探検家を殺していくのですが、タイトル的には"Don't Cry(ドント・クライ)"よりは"The Smile Has Left Your Eyes(偽りの微笑み)"っぽさがありました。
さて、50位にエントリーしたこの"Don't Cry"は2週目で35位にジャンプアップしてTop40入りを果たします。その後30位→23位→16位→13位→11位と来て、9月17日付で10位にランクイン、2週続けて10位を獲得し、その後は下降、13週チャートインしました(この年のYear-Endシングルチャートでは98位)。メインストリームロックチャート(当時はAlbum Rock Tracks)では同年8月23日付で堂々の1位を獲得しました。
しかしアルバム、シングルともにヒットはしたものの前作ほどの売れ行きは伸びず(アルバムは全米6位)、バンド活動は継続していきますが、メンバーチェンジも甚だしくなっていきました。"Don't Cry"は、Asiaが残した現時点での最後のTop10ヒット・ナンバーとなっています。
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