Spysのデビューは1982年ですが、実は、アメリカン・プログレッシブ・ロック・グループの Kansas(カンサス)を輩出したレコード・レーベル、Kirshner(カーシュナー)から、1980年に出た Spyとは別グループです。こちらのSpyは、カンサスに似た編成(ヴァイオリニストが在籍)で、カンサスの弟分的存在でしたが人気度はマイナーにとどまりました。
一方、1980年デビューのSpyは全くの名の知れぬメンバーで構成されましたが、今回ご紹介する1982年デビューのSpysは、1976年に結成されたスーパー・グループ、 Foreigner(フォリナー)のオリジナルメンバーでした
Al Greenwood( アル・グリーンウッド。keyboards)と Ed Gagliardi( エド・ガリアルディ。Bass)が結成したグループです。とはいっても当時のフォリナーでは Mick Jones(ミック・ジョーンズ)、 Ian McDonald(イアン・マクドナルド)、 Lou Gramm(ルー・グラム)といったメジャー級人気のメンバーがいたため、アルとエドはこれら人気メンバーの陰に隠れていたイメージがありましたが、しっかりとした音楽論を持っていて、これが、Foreignerのメンバー間で音楽的相違を生むこととなり、Foreignerの3作目" Head Games(邦題:ヘッド・ゲームス)"リリース前にエドが脱退し、4作目" 4(邦題:4)"リリース前にイアンと共にアルが脱退することになるのです。ちょうどフォリナーが"4"をリリースした頃に、アルとエドは"S.P.Y.S"をリリースすることになり、フォリナー・メンバーが同時期に別々にアルバムをリリースする運びとなったことで、Foreignerのファンはおそらく両方とも聴いたでしょうし、ある意味相乗効果が生まれたかもしれません。
Spysのメンバーは他に John Blanco(vo)、 Billy Milne(Drums)、 John DiGaudio(guitar)で、エドもヴォーカルを披露しており、"S.P.Y.S"の2曲目" She Can't Wait"でもJohn Blancoとの掛け合いが聴けます。
収録曲は全10曲、全体的にメロディアスなハード・ロックで、Foreigner程の硬派ではないものの、John Elefante(ジョン・エレファン手)在籍時代のカンサスやMickey Thomasが加入した1980年代前半のJefferson Starship(ジェファーソン・スターシップ)の様な、ポップ重視のアリーナ・ロックを展開しています。John Blancoのシャウトする歌声と煌びやかなアルのシンセ、決して派手ではないがしっかりした存在感を出すJohn DiGaudioのギター・プレイ、そして、アメリカのロック・グループ、Journey(ジャーニー)
にも通じる、伸びのある美しいコーラス....特に7曲目の" Don't Say Goodbye"のサビにおけるコーラスとギターソロは美しさこの上ないです。ミドル・テンポの9曲目、" Hold On(When You Feel You're Falling)"はシングルとしてリリースされていたなら、おそらくはシングルチャートを駆け上ったのではないでしょうか。
さて、先行シングルとしてカットされた1曲目収録の" Don't Run My Life"は陽の当たった1982年8月14日に88位エントリー後、次週は86位、そして8月28日から3週82位を記録し、5週チャートインしました。メインストリームロックチャート(当時は"Top Tracks")では、9月25日付で19位を最高位として10週チャート・インしています。アルバム"S.P.Y.S"のチャート・アクションは、陽の当たった8月14日に183位にエントリー後、171位→166位→154位→154位と来て、9月18日付で138位を記録、3週間この位にとどまり、その後は下降、10週間チャートインしました。そして、かつてのAORのアルバムチャートで人気のあったRadio and Records("R&R"。現在はBillboardに吸収)の1982年年間AORアルバムチャート("R&R"はこの時代、西暦の下二桁分のランクで形成)では全82位中81位と、年間チャートにも刻まれました。
Spysは1985年に2作目" Behind Enemy Lines"をリリースしましたが、"S.P.Y.S"ほどは振るいませんでした。結局Spysは2枚のアルバムでもって活動が終わりました。
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