当初Dennisはソロ・アルバムを作る予定はなかったらしく、常にStyxというグループの活動に入念していたかったと言われています。1983年にリリースされたStyxのスタジオ・アルバム、" Kilroy Was Here(邦題: ミスター・ロボット)"のツアーは、ロック・オペラにも通じるシアトリカルなステージでサウンドを立体的に具現化した大規模なもので、Dennis DeYoungのStyxに専心していたこともこのライブ模様を収録した" Caught in the Act(邦題: スティクス・ライヴ)"およびそのビデオ(DVD)からも確認できます。
結果的には"Desert Moon"とほぼ同時期にStyxの"Caught in the Act"もリリースされ、Dennis DeYoungはソロとグループとの同時並行で動いていました。しかし実際は、1984年1月にレコーディングされた同ライブアルバムからのファースト・シングル、"Music Time(邦題:ミュージック・タイム)"をめぐる一連の騒動(詳細は こちら )があり、同時期にメンバーの Tommy Shaw( トミー・ショウ。vo,gtr)がソロ・デビュー・アルバム" Girls with Guns(邦題: ガールズ・ウィズ・ガンズ)"の制作をはじめ、さらにはグループのもう一人のギタリスト、 James[ JY] Young( ジェームズ・ヤング。JY。vo,gtr)もプラハ出身のミュージシャン、 Jan Hammer(ヤン・ハマー)とコラボ・アルバム"City Slicker(邦題:シティ・スリッカー)"の制作準備に入ることから(1985年リリース)、1984年前半でStyxは活動が休止状態となっていたのです。Dennisの"Desret Moon"とStyxの"Caught in the Act”が1984年8月にリリース後、Tommyの"Girls with Guns"は同年10月、JYの"City Slicker"は翌1985年リリースであったものの、この年の秋には早くもTommyのセカンド・ソロ・アルバム、" What If(邦題: ホワット・イフ)"が登場しており、メンバーのソロ活動が目立ちはじめたことから、この当時はStyxが解散したのかと騒がれたこともありました。
ソロアルバム"Desret Moon"を制作するにあたり、Dennis DeYoungはStyxにはなかった音楽を生み出そうとしていたようで、Tom Dziallo(gtr,bass)、Tom Radtke(Drums)、Steve Eisen(conga, sax)、Dennis Johnson(bass)といった、Dennisの出身地であるシカゴのミュージシャンを集め、またStyxのアルバム制作に大きく関わった Gary Loizzo や、Dennisの妻 Suzanne DeYoungらもバック・ヴォーカルで参加しました。さらにはゲスト・ヴォーカリストとしてはロック・バンドTantrumのヴォーカリスト、Sandy Caulfieldや、日本では国内映画の主題歌を歌い有名になったRosemary Butler(ローズマリー・バトラー)などが顔をそろえ、Dennisのセルフ・プロデュースでレコーディングが行われました。そして良質のポップ・ロック・アルバム"Desert Moon"が完成、タイトル曲"Desert Moon"がシングル・ヴァージョンとしてリリースされました。
シングル"Desert Moon"は、過去にStyxで歌われたヒット・バラードに匹敵する強力なバラードですが、Styxらしさはあまり感じられず、Dennisのオリジナリティー溢れた爽やかなバラードです。プロモーション・ビデオもノスタルジックを感じさせる味わい深い仕上がりです(映像は こちら 。 youtube より)。
そのせいか、メインストリームロックチャート(当時はTop Rock Tracks)では縁が薄かったと言わざるを得ませんでした。陽の当たった9月8日に53位で初登場以後は、37位→36位→33位→31位→31位→35位→42位と、10月6日から2週続いた31位が最高位で、8週のチャートインに終わりました。ただ別の角度から見れば、ポップスとして受け止められても、ロック・チャートにも8週間ランクインされるほど人気があったとも言えます。
しかしBillboard HOT100シングルチャートでは1984年11月10日付で10位にランクし、Styxのメンバーとしては当時最大のソロ・ヒットとなりました。そしてヒット・ポップスの本場Adult Contemporaryチャートではやはり強く、同じく11月10日から2週続けて4位を記録、18週チャートインしています。
余談ですが、この曲は日本語カヴァー・ヴァージョンも存在しており、シンガーソングライターの 谷山浩子さんが歌っています。これはドラマの主題歌として使われました。
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