お風呂 でした。
もちろん間取りも重要でしたが、それと同じぐらいお風呂を重要視しました。
ひとり暮らししたら、好きな入浴剤を入れて、時間を気にせずゆっくりお風呂に入りたい。それが、かなり上位に入る希望だったんですよ。
バストイレ別、追い焚きはできなくていいけどバランス釜はNG、ちゃんとリノベーションされていて清潔なこと……
実際に引っ越して今暮らしている部屋は、築年数は古いし、いろいろ不満はあったのですが、お風呂を見て即決したようなものです。お風呂に求めていた私の希望は全て叶えられていた物件でした。
そんなに広くはないし、追い焚きはできないけど、湯船も一人には十分な広さだし、なにより明るくてきれい。内見に来た時は「お風呂は新しくしてくれてるのね」と思ったほどです。実際に住んで使ってみると、隅の目地に少し汚れがあったりして「新しい」わけではありませんでしたが、パッと見には新しいように見えるぐらいきれいにしてあったんです。
で、私はそのお風呂に大満足で、 KNEIPPのバスソルト オレンジ・リンデンバウムの香り を入れて、毎日ゆっくり浸かっているわけですが、あったかいお湯に肩まで浸かっていると思い出すことがあります。
あれは私がまだ23〜4歳のころ、初めて勤めた会社で一緒に仕事をしていた年上の女性のことです。
彼女は、それまでは東京ではない地元で全然別の仕事をしていたのだけど、事情があってひとり上京してきて、前からやりたかった仕事ということで、私がいた会社に私よりも後に入社してきたのです。
10歳ぐらいも年上だったのだけど、仕事上は私のほうが少しですが先輩ということで、私は彼女に仕事を教えつつチームを組むことになりました。
私はその彼女が入社したあと数ヶ月でその会社を辞めてしまったので、一緒に仕事をしていたのは本当に短い間でしたが、10歳も年下の私から仕事を教わることに嫌な顔もせず、私がダメ出ししても素直に聞いてくれて、きちんと自分の意見も言う、とてもやりやすい、クレバーな人だったなあと思います。
その人が、ある時、誰かのお風呂の入り方のような雑誌記事か広告だったかを見て、 「こういう人はきっとひとりでも湯船にたっぷりお湯を入れて肩までお湯に浸かって入ってるのよね」 と言ったのです。多少憎々しげに。
それを聞いた私は、この人はひとり暮らしをするにあたって、いろいろ考えて節約しながら生活してるんだなあと思いました。なんと答えたかは忘れましたが、ちゃんとしててすごいなあと感心した覚えがあります。
だって、当時まだ20代前半だった私は、将来のことなんてまったく考えてなくて、彼女と同じひとり暮らしだったのに、お風呂のお湯の量のことなんて気にしたこともなく、ましてや「節約」なんて単語は脳内のどこを探しても存在していませんでした。どうせいずれは結婚するんだから今のひとり暮らしは仮の生活、と思っていたような気がします。
まー、そんなふうに安直に考えてその数年後にはやっぱり安直に結婚し、そしてその30年後には離婚せざるをえなくなり、今のこの状態なわけですけどね。
当時すでに30代だったその人は、どんな事情があって地元を離れて上京してきて、どんな思いでひとり暮らしをしていたんだろう、そして、あれからどんな年月を送ってきたんだろうか、60代になっている今は、肩まで浸かれるぐらいのたっぷりのお湯を張った湯船に入れているだろうか、どんな毎日を過ごしているだろうか……。
そんなことを今、お風呂に入っていると考えてしまいます。もう顔も思い出せない遠い昔にたった数ヶ月だけ一緒の職場にいた人だけど、ふと思い出しては、心の中で「私は今、こんなふうにひとりで生活しているよ」と話しかけています。
今も元気にしているでしょうか。
離婚してひとり暮らしを始めて、この先も生きていかなくちゃいけない私は、いろんな面で節約しないといけないと考えつつも、たっぷりのお湯に浸かるお風呂だけは譲れないと、ここだけは自分に贅沢を許して、毎日ゆっくり温まっています。特に最近は寒いですし、暖房を節約している分、お風呂でよーく温まらないと風邪ひきそうですしね。
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