知らないうちに、部下を潰してしまうマネジャー
・やはり成果主義が大切、成果を出せば報酬を上げると言えば、部下は頑張
・高い目標を与えることが大事、目標達成のために叱咤激励すれば、成果も上がる
・仲間と競争させれば、目の色が変わってくる、部下同士の競争をあおる
多くの企業のマネジャーの常識を覆したのが、心理学者エドワード・デシの人を伸ばす力
実は、報酬・高い目標設定・競争は、部下を潰すこともある
オットセイの曲芸、腹ペコのオットセイは飼育係が持つ魚を目当てに、前ビレで拍手したり観衆に手を振ったり、何でもやる
しかしオットセイはご褒美の魚がもらえないと、何もしなくなる
動機付け理論ではこれを外発的動機付けと呼ぶ
魚がなくなると外発的動機付けは消える
心理学者ハリー・ハーロウは、サルの檻にパズルを入れてみると何も報酬を与えないのに熱心に楽しそうにパズル解きに取り組んだ
ハーロウはこの現象に内発的動機付けと名付けた(要は自ら学び、やる意欲のこと)
A、Bの2つのグループに分け、
Aはパズルを解くと金銭報酬を与える条件
Bは報酬を与えない条件で
30分間パズル解きをさせる
両方とも熱心にパズルを解いたが、問題はその後の休憩時間の行動
無報酬チームは、パズルは面白いと思って休憩時間もパズル解きを続けた
報酬チームは、休憩中はお金がもらえないので、パズル解きをやめてしまった
(報酬があることで、逆にパズル解きの面白さを感じなくなったのである)
無給で熱心に新聞を手伝っていた人に報酬を支払った
お金が尽きて報酬が払えなくなると、その人は仕事に興味を失ってしまった
(人は誰からも指図されず自分で行動を選べるとき、生き生きと行動する)
・人は自律性を持ちたいと思っている
・自律性とは、自分の行動を自分で決めること
・外発的動機付けでは自律性が弱まる
(誰かに統制されている感覚になり、自分でこの行動を選んだという感覚が弱まるから内発的動機付けも弱まる)
金銭報酬でなくパズルが解けないと罰すると
脅し文句は効果があり、パズル解きは順調に進んだ
しかしパズルを楽しむ感覚は消えてしまった
(人に圧力をかけるという点で仕事の目標押しつけ・締め切り設定・監視も脅しの一種)
これらも内発的動機付けを低下させる
2人1組でタイムをより速くさせるグループと、相手と競争させるグループで比較
タイムをより速くさせたグループの内発的動機付けは変わらなかったが、相手と競争させたグループは内発的動機付けが弱まってしまった
(他人との競争も内発的動機付けを低下させてしまう)
・報酬・脅し・競争で、内発的動機付けは弱まったり、消滅
・人は自らが行動を選択することで、その行動に意味を感じて納得
・選択の機会が、内発的動機付けを高める
内発的動機付けに欠かせない「有能感」
一方で報酬が役立つ場面もある。
ルーティンワークは報酬で統制することで生産性が上がる
報酬があるときだけやるという態度が定着しサボる人も出る
報酬を使う場合の注意点2つ
1、報酬を使い始めたら、後戻りはできない
金銭的報酬を得るために行動するようになると、その行動は報酬が与えられる間しか続かない
例えば、子どもに1時間勉強したらお小遣いをあげると約束すると、お小遣いがなくなると勉強しなくなる
2、報酬に関心を持つと、人は報酬獲得のため最短で手っ取り早いやり方を選ぶようになる
1時間勉強したらお小遣いが貰える子どもは、簡単な問題だけを1時間やり、難しい問題には挑戦しない
成果に見合う報酬は、確かに人を動機付けるが、仕事そのものではなく報酬に関心が向き、手っ取り早い方法を選ぶ
実際には内発的動機付けにも、楽しさと達成感という報酬がある
ここで欠かせないのが自分はこの仕事をこなせる力があるという有能感
この有能感は、誰でもできる仕事では得られず、自分の能力を最大限に発揮し、達成したとき、初めて得られる
この有能感に、この行動は自分が選んだという自律性が伴えば、大きな満足が得られ、仕事の成果もあがる
自律性と有能感のいずれか片方だけでは、内発的動機付けは高まらず、自律性と有能感が両方ともない場合は最悪(抑うつなどの状態に陥ることもある)
もっと統制しなければの悪循環
常に好奇心と興味を持ち有能感と自律性を発揮できれば、人は成長し学び続けられる
逆に管理・統制されると、人は無気力になり、自ら学ぼうとしない
そして統制されないと何もできなくなってしまう
それを見てもっと統制しなければと考えるマネジャーがいる
このように悪循環を繰り返す
本当に必要なのは統制はやめ、人の自律性を支援することが必要
1人の人間として認めれば、人は自分が有能で自律的だと考えるようになり、内発的動機を維持できる
一人ひとりが自分自身で選択して行動していると心底感じられることが必要です
報酬を提供する場合も、その人の有能さを認め、自律性を損なわないように配慮することで、内発的動機付けが高まる
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