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いつまでも聞こえる風の音
海辺の小さな町に住む少年、海斗は、いつも波の音を聞きながら過ごしていた。
彼の家は、砂浜からほんの数歩のところにあり、窓を開ければ、
潮の香りが部屋いっぱいに広がった。
海斗は、波の音を聴くのが大好きだった。
それは、まるで母親の優しい子守唄のように、彼の心を穏やかにしてくれた。
波の音は、刻々と変化し、時には轟き、時にはささやき、時には静かに歌うように聞こえた。
海斗は、その変化に耳を傾け、それぞれの音に名前をつけていた。
ある日、海斗は、古い木箱を屋根裏で見つけた。
それは、彼の祖父の形見だという。箱の中には、革製のノートと、小さな貝殻が入っていた。
ノートには、祖父の美しい文字で、海に関する様々なことが書き込まれていた。
「海は、私たちにたくさんのことを教えてくれる。
波の音は、風の物語を奏でている。潮の香りは、海の生命を感じさせてくれる。
そして、砂は、時の流れを刻んでいる。」
ノートを読みながら、海斗は、祖父が海をどれほど愛していたのかを深く知った。
そして、海に対する自分の感情が、祖父と繋がっていることに気づいた。
それから、海斗は、毎日、ノートを読み、海を観察するようになった。
彼は、ノートに書かれたことを参考に、様々な種類の波を観察し、その特徴を記録した。
また、貝殻を耳に当て、波の音を想像したりもした。
ある冬の朝、海斗は、いつもと違う波の音に気づいた。
それは、まるで、誰かが彼の名前を呼んでいるような、優しい声だった。
海斗は、急いで浜辺に駆け出した。
浜辺には、一人の老人が立っていた。
老人は、海斗に向かって微笑み、こう言った。
「君も、海が好きなんだね。」
老人は、海斗の祖父の友人だった。
彼は、海斗に、祖父の話をたくさんしてくれた。
そして、海斗に、一つの貝殻を手渡した。
「これは、君にあげる。この貝殻には、海の記憶が詰まっている。
いつでも、この貝殻を耳に当ててごらん。きっと、海の香りがするだろう。」
海斗は、その貝殻を大切に胸にしまった。
それからというもの、海斗は、いつでもその貝殻を持ち歩くようになった。
成長した海斗は、海に関する研究者になった。
彼は、世界中の海を旅し、様々な海の音を記録した。
そして、祖父のノートに書き足していった。
海斗は、海の音を聴くたびに、祖父のことを思い出した。
そして、海が私たちに教えてくれることの大切さを、多くの人に伝えたいと思った。
海斗は、海の音を録音したCDを作り、世界中の人々に送った。
そして、人々が、海の音を聴きながら、心穏やかに過ごせるようにと願った。
いつまでも、海辺の小さな町には、海斗の優しい声が響いている。
それは、海の音と混ざり合い、永遠に続く風の物語を奏でている。
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